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第11回:FM音源とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 最近は、着信音にメロディを付けるだけでなく、「ピアノの音」「パーカッションの音」と言った音色を付けることができる機械が出てきました。たとえばNTTドコモのN502itという機種ではオリジナルメロディとしてピアノ・ギターなど16種類の音色を使ってメロディを作成することができますし、J-フォンのJ-SH03という機種では着信メロディの1旋律ごとに128種の音色から好きな音色をから選択することができます。これらの携帯電話には内部に「FM音源チップ」というLSIが搭載されています。このLSIによって、これらの携帯電話はさまざまな美しい音色を出すことができるようになっているのです。


「FM音源」はシンセサイザーだ

 この「FM音源」とは、FM理論という原理を使ってさまざまな合成した音色を出すことができる音源です。その機能を持ったLSIがFM音源LSIなのです。FM音源と言えば、たとえば1980年代に一世を風靡した、ヤマハ製のシンセサイザーは多くがFM音源方式でした。プロのミュージシャンにも使われた有名な「DX7」シリーズなどがそうですね。このシンセも、現在携帯電話に搭載されているFM音源LSIも同じFM方式で音色を作っています。

 今までの携帯電話に搭載されている音源とFM音源を搭載した電話の着信メロディの違いは、まさにオルガンとシンセサイザーの違いと同じと言ってもいいでしょう。たとえば、携帯電話の音源には「矩形波出力」ができるものが多くあります。これは簡単にいうと矩形、つまり音の波の形が串のような形をした物を出す音源なのですが、串の歯の大きさを変えて音の高さや大きさを変えることはできても、波形を串の歯の形から変えることはできません。つまり音色自体を変えることはできないのです。FM音源では、理論上はこの音の波の形をどのような形にも変えることができます。つまり、たとえばピアノの音でも、ギターの音でも、はたまたセミの声でも、どんな音色でも出すことができるのです。



FM音源の仕組み

FM音源を搭載したヤマハの音源LSI『YMU757』
 このFM音源の音色を作る「FM理論」とはもともと、スタンフォード大学のジョン・チョウニング博士が発明したもので、それを日本の楽器メーカーであるヤマハが実用化しました。FMとはFrequency Modulationの略で、簡単にいうと、この理論はいくつもの音の波を掛け合わせることで「周波数を変調する」と、無限の種類の音色を作ることができる、と言っています。

 自然界の音というのは空気の振動で、その動きは複雑ですが波のようにある一定の規則で動いています。FM音源では基本となるある簡単な形の波に、他発信機から出す波の影響を及ぼさせることで、自然の音に近い複雑な形をした音の波、様々な音色を作り出しています。

 FM音源シンセサイザの中にはいくつか(最低2つ)の「オペレータ」と言う簡単な形の波を出す装置があります。そのうちのひとつは「キャリア」と呼ばれていて、基本となる波をだす装置です。キャリアのほかには「モジュレータ」と呼ばれるオペレータがあり、ここで「周波数変調」と言って、モジュレータの自分の出す波の高さをオペレータの出す波を作る式のパラメータにした波を出力します。おおざっぱ言うと、波を複雑に噛み合わさせて新しい波を作って出している、と思えばいいでしょう。実際に音を作るときには、FM音源シンセサイザーは最低2つ以上のこれらのキャリア、モジュレータを組み合わせ、さまざまに波をかみ合わせて複雑な形の音の波を作り出しています。

 また、実際のFM音源シンセサイザではこのほかにも、思い通りの音色を作るために、これらの信号を「フィードバック」と言ってキャリアとモジュレータの出す波をさらにもう一度入力信号として戻して使うようにオペレータを接続する、などという操作を行なうこともあります。



 FM音源は掛け合わせる波の「大きさ」や「長さ」、「個数」、「サイン波の角度」、「アルゴリズム」などいくつかのパラメータを憶えておけば音を作ることができるので、小さな機械でメモリ容量に限りのある携帯電話などには有利な音源です。反面、音色の作り方は大変微妙で、それぞれの波の作り方や影響のさせかたを変えるだけで、たとえば、オペレータのキャリアの波を出すタイミングに少しのずれをつけたり、あるいはオペレータの接続順序(アルゴリズム)をひとつ変えるだけでも、出される音のニュアンスが全く違うものになることも往々にしてあります。

 FM音源ではさまざまな音色を作ることはできるのですが、たとえばある実在する楽器の音色にできるだけ近い音を出したいなどと言う用途に関してはFM音源よりもウエーブテーブル音源などのほうが有利です。ウエーブテーブル音源ではサイン波のような人工の波を使って一から音色を作り出すのではなく、自然の音波をメモリに取り込んでおいて、音色を作り出すときはこのテーブルを参考にして作り出しています。そのため、FM音源に比べて生の楽器音に近いリアルな音色を手軽に利用できるのです(反面、音の内容をテーブルと言う形で蓄えておかなくてはならないので、メモリ容量などの面で不利になってしまうわけですが)。


実際に携帯電話では……

 さて、このFM音源ですが、たとえば先に述べたNTTドコモのN502itのほかに、N502i、N209i、J-PHONEのJ-SH03、J-K03などの携帯電話に搭載されています。

 このFM音源を利用した携帯電話用のLSIはヤマハからメーカーに提供されています。ヤマハのwebサイトにはそのニュースリリースが掲載されていますので、携帯電話に使われているFM音源LSIがどんなものかさらに知りたい人はこちらを見てみるといいでしょう。



URL
  ヤマハ音源LSI「YMU757」ニュースリリース
  http://www.yamaha.co.jp/news/99090701.html


(大和 哲)
2000/09/12 00:00

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