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第6回:W-CDMAとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 NTTドコモ、J-フォングループが次世代移動通信システム(IMT-2000)の無線アクセス方式として採用することにしたのが、このW-CDMA(DS-CDMA・日欧)方式です。日本のNTTドコモ、欧州のエリクソン、ノキアなどが協力して作られた移動体通信の方式無線部分、つまり基地局から携帯電話機までの仕様を決めた規格です。

 このW-CDMAはIMT-2000規格の一つですので、IMT-2000の目標である以下の項目をクリアすることを主眼として策定されました。

・グローバルローミング・一つの端末が、世界中のどこでも使うことができる

・高品質・有線のISDNに近い高音質の会話ができる

・マルチメディアに対応した高速データ通信・最大移動時で384kbps、静止時で2Mbpsの伝送速度の通信が可能

 日本と欧州で使われるW-CDMA端末の規格は完全に同じではありませんが、多くの部分でほぼ共通になります。ですから、たとえば日本で買った電話機をヨーロッパやアジアに行っても使えるグローバルローミング機の発売はもちろん、日本のメーカーが欧州に共通の電話機を出したり、あるいは今まで私たちの使っていなかったような欧州メーカーの端末を日本で手軽に入手できるようになる、ということが可能になるかもしれません。


W-CDMAもCDMA

 このW-CDMAは周波数帯は2GHz帯を使用しますが、名前からもわかるようにこのW-CDMAも、基本原理は、DDIセルラー/IDOがすでに導入しているcdmaOneと同じCDMA方式を使っています。ですので、このW-CDMAもcdmaOneと同じようなCDMA方式のメリットをそのまま受け継いでいます。

 たとえば、マルチパスに強い、というのも特長のひとつです。

 マルチパスとは、基地局から発信された電波が直接携帯端末に届くだけではなく、色々な建物などの建造物に跳ね返ったりして、いくつもの経路から携帯端末に届いてしまう、という現象で、たとえば都会のビルの谷間などにいるとこの現象に出くわします。電波はとても速いスピードで飛んでいますが、経路によって微妙に飛んでくるときの長さが異なるために、携帯端末に届くまでにかかる時間がずれてしまいます。ですので、ビルの谷間にいると、音声が何重にもこだまのように聞こえたり、実際には基地局から電波が届いているにもかかわらず電波を認識できずに電話が圏外にいるようにふるまってしまうことがあるのです。

 CDMA方式の携帯端末では「スペクトラム拡散通信」という原理に基づいていて、このマルチパスでばらばらに入ってきた電波を同期させてより強い電波とみなして使うことが出来るのですが、その特性上、使う帯域を広くすれば広くするほどマルチパスの影響を受けにくくすることができます。つまり、W-CDMA方式を使うと現在市販されているcdmaOne携帯電話よりも、さらにマルチパスに強い電話機を作ることが可能になるわけです。

CDMA方式 CDMA方式では、同時に複数の基地局と信号を多元的にやりとりできる。このため、ハンドオーバー時でも音の途切れなどがない


 さらに、cdmaOneには「ソフトハンドオーバー」と言って、ハンドオーバーがスムーズで切れないという特徴がありましたが、これもW-CDMAにも言える特徴です。「ダイバシティーハンドオーバー」と言って、W-CDMA方式では2つ以上の基地局から電波を同じに受けつつ、レーキ(RAKE=『くまで』の意)受信によってそれをひとつの信号と見なしながら受信することができますし、また、基地局側もいくつもの基地局に届いた電波をひとつにまとめてから回線に流せるので、移動している携帯電話で話している人にとっても、また、その携帯電話を使っている人と話している人にとっても、途切れることなく会話を行なうことができるわけです。


大量のデータを扱えるワイドバンド

 W-CDMAのcdmaOneと違う点は、その使用する周波数帯が広いことです。

 このW-CDMAは「ダブルシーディーエムエー」または「ワイドバンドシーディーエムエー」を発音されます。つまり、W-CDMAのWはWide band、日本語では「広帯域」を意味しているわけです。同じCDMA方式でも、cdmaOneでは1チャネルあたり1.25MHzに決められていましたが、W-CDMAではその帯域幅を広げて1.25MHz、5MHz、10MHz、20MHzの4種類の帯域幅を用意しています。そして、転送したいデータをこの広い一続きの周波数帯の中に基地局から端末、端末から基地局へのデータの通り道を決めて、この道の中をまんべんなくデジタル信号をばらまくようにしてデータを送るわけです。

 データと帯域の関係は、たとえば、水と送るホースの太さの関係に例えることができます。ホースが太ければ太いほど水をたくさん送ることができるように、デジタルデータを信号に載せる際には帯域が広く取れるほうが、たくさんのデータを載せることができるわけですね。



 ちなみに、W-CDMAで使われる5MHzという帯域は、cdmaのおよそ3倍の大きさがあるわけですが、これを利用して1秒あたり最大で2Mビットという大量のデータを送ることができるようになる予定です。これがどのくらいのデータ転送スピードかというと、たとえば、現在動画データのコーデックに「MPEG-4」という方式がありますが、これなどでは384kビット/秒データを送ることができることになっていますので、「ある程度の動画でも余裕で転送することができるスピード」であると考えれば大体間違いないでしょう(なお、NTT ドコモでは来年5月のサービスイン開始時には上り64kbps、下り384kbpsでスタートする予定で準備が進めているとしています)。

 また、W-CDMA対応携帯端末では、携帯機での音声や低レートのモデムデータ伝送では、1.25MHzの比較的狭い帯域幅を使用し、2Mbpsの高速信号伝送では5MHzの広い帯域幅を使い、状況に応じてダイナミックにデータの転送レートを変えることができます。W-CDMA対応携帯端末ではGSM-AMR(GSM-Adaptive multi rate:適応マルチレート)という方式で音声信号がデジタル化されるのですが、この方式はPDCフルレートのコーデックであるCELPと同じように、人の声の特長に合わせて信号をデジタル化、データ圧縮しながら、「適応マルチレート」という名前の通り、使える帯域に合わせてデータの大きさを加減して送ることができる方式です。

 つまり大きく帯域を取れる状況であればあるほど奇麗な音声で会話することができるようになることでしょう。


実用化間近いW-CDMA

 このW-CDMAはNTTドコモを中心にさまざまな実験がすでに行なわれ、実用化間近のところまできています。世界での共通規格であるIMT-2000ですが、世界に先駆けて、日本ではNTTドコモがW-CDMAを使用した次世代携帯電話サービスを2001年5月末頃を目途に、東京23区、横浜市、川崎市で開始する予定です。


次回予告

 本連載では、毎週ひとつずつ、移動体通信に関する用語を解説していきます。次週お送りする第8回では「cdma2000(MC-CDMA・米国方式)」を解説します。




URL
  NTTドコモのW-CDMAサービスイメージ
  http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/w-cdma/home.html


(大和 哲)
2000/07/25 00:00

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