|
|
|
第2回:PHS(Personal Handy-phone System)とは
|
|
|
|
大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
|
■ PHS(Personal Handy-phone System)の特長
NTTドコモのパルディオ、アステルグループ全機種、それにH"を初めとするDDIポケットグループのPHS(Personal Handy-phone System)は、当初簡易型携帯電話と呼ばれていたように、仕組みを簡略化した携帯電話です。もともとは、屋内のコードレスホンを親機として、その子機を屋外でも利用できるようにしたシステムとして作られました(現在でもいくつか、PHSを子機にできるコードレスホンがありますね)。
携帯電話との大きな違いは、端末(電話機)や基地局(電話機からの電波を受けて、その信号を交換機などに中継する)の出す電波の出力がとても小さいことです。たとえば、現在の携帯電話では電話機からの電波の出力は0.2w~0.8w程度のものが主流ですが、PHSでは最大で80mW(1000mW=1W)・平均では10mWと携帯電話の10分の1以下でしかありません。また、電話機と同様に基地局側の出力も小さいので、電話機と電波を送受信するための基地局一台いち台も安く作ることができます。この「経済的」であるということもPHSの大きな特徴のひとつです。
■ 電波は届く範囲が狭いPHS
出力が小さい、ということは電波の届く範囲も小さいということでもあります。
PHSでは1つの基地局から通信できる距離は携帯電話より大幅に短く、100m~600m程度。このため、携帯電話では数キロ~数10キロ間隔で基地局が設置されているのに対し、PHSでは100m~500m程度と非常に短い間隔で配置されています。PHSの事業者は現在、NTTドコモ各社、DDIポケット、アステルグループの3グループですが、町中を歩いてよく見てみると、これら事業者の基地局が街のいたるところとも言えるくらいに、頻繁に見つけられることに気づくでしょう。
たとえば、NTTドコモの基地局は、NTTの持つ電信柱に箱型のものに高い2つのアンテナが立っていたり、駅前の電話ボックス上にちょこんと1本立っているものを見つけることができるはずです。DDIポケットの場合、よく駐車場の隅などやビルの屋上などに専用のポールを使って、4本棒のフォークをひっくりかえしたようなアンテナが立っています。アステルの場合、多くは東京電力の電信柱やJRの駅の構内などに、箱に2本の棒がぶらさがっていることが多くあります。
■ PHSは音がいい
PHSのメリットはまず、音質がいいこと。PHSは音声を32kbps ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)という方式を使って、デジタルデータに変換して電波に載せています。デジタル携帯電話(PDC)では音声を1秒当たり6.7kビットのデータを使って送っていたのですが、PHSの場合はおよそ4倍強の32kbpsのデータとして送っているわけですね。
音をデジタル信号に変化させるときに、大きなデータを使えるほうが、表現力が豊かになり、結果的に音質が良くなりますから、結果的にPHSは携帯電話と比較して、会話した場合音質が良く聞こるわけです。同様に、パソコンなどで通信した場合も、大量のデータを一度に送受信することができるので、結果として通信速度が速くなるわけです。
■ 周波数が有効に使える
1つの基地局の電波の届く範囲が狭い、ということは限られた電波を有効に使える、ということでもあります。ある基地局とある基地局の電波がバッティングしてしまうと電波は混信してしまいます。一定の面積の中であれば、基地局のカバーする範囲は小さいほうが、周波数を繰り返し使えますから、結果として周波数の有効利用、ということになります。
■ PHSの便利なLI(位置情報)機能
また、PHSでは位置情報(LI)を使えることも大きな特徴です。これは、PHSでは無線ゾーンが半径100m~数百mと狭いため、電話がどの基地局と通信しているかによって、だいたい数百m程度の精度でその電話の居る位置を知ることができるからです。この機能を使ったDDIポケットのPHS向けアプリケーションに、「駅すぱあと」があります。この「駅すぱあと」というソフトはもともとパソコンのソフトで、ある駅からある駅に行くにはどのように電車に乗るのが最短かを教えてくれるソフトです。
DDIポケットのPHSで、LI機能によって、今現在そのPHS端末が居る場所を割り出し、あなたの現在位置から最寄の駅を自動的にピックアップします。そして、最寄りの駅から目的地までルートも教えてくれるわけです。なお、これらの情報はPメールDXの機能を使ってやりとりするため、DDIポケットの端末でも、H"などのPメールDXが利用できる端末を使用することになります。
■ 通話エリアが小さくなりがち、途切れやすいという弱点も……
逆に、PHSには携帯電話と比較して、通話エリアの穴があったり、通話が途切れたりする場合がある、という弱点もあります。
PHSでは携帯電話と比較して、一つの基地局がカバーする範囲が狭いので、広い通話エリアを設定するには多くの基地局を設置しなければなりません。しかし、地方や山の中などあまり多く通話をみこめない地域にはどうしても基地局の配置が薄くなりがちで、場合によっては通話エリアが携帯電話と比較してかなり狭くなってしまう、ということもあります。携帯電話はひとつの基地局の通話エリアが大きいので、このような地域でも意図せずともそのような地域をカバーしていることも多いわけです。
また、PHSには、移動しているときに通話が途切れたり切れたりしやすいというデメリットもあります。最近ではDDIポケットの「H"」やNTTドコモやアステルの高速ハンドオーバー対応機など、高速移動中でも携帯電話のように会話が途切れずに使えるPHSも多くなりましたが、それでも場合によっては移動中の会話が途切れやすくなることもあります。というのも、いくつか原因はありますが、やはり「PHSの電波の届く範囲」に起因するものが多いように思います。
たとえば、電話機があるエリアの基地局から基地局へと接続を切り替える(ハンドオーバーする、と言います)際に、いくら高速にハンドオーバーしても、ハンドオーバーしようとした先の基地局の回線が全てふさがっていたりすると、そこに中継を切り替えることができずに、結局通話が途切れてしまうことになる、などのケースがありえるわけです(実際には、基地局のエリアはいくつか重なり合っていることが多いので、そうそう切断されてしまうわけではありませんが)。
■ 次回予告
本連載では、毎週ひとつずつ、移動体通信に関する用語を解説していきます。次週お送りする第3回では「cdmaOne」を解説します。
■ URL
DDIポケットのホームページ
http://www.ddipocket.co.jp/
NTTドコモのPHSサービスのインデックスページ
http://www.nttdocomo.co.jp/products/phs/home.html
アステルグループのホームページ
http://www.astel.ne.jp/
DDIポケットの位置情報サービス提供開始のニュースリリース
http://www.ddipocket.co.jp/news/h120111.html
東京電話アステルの位置情報サービスのページ
http://www.ttnet.co.jp/tokyodenwa_astel/location/index.html
NTTドコモの「いまどこサービス」情報
http://www.nttdocomo.co.jp/products/phs/service/ichi.html
NTTドコモ、高速ハンドオーバー対応のPHS発売のニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0425.html
東京電話アステルの高速ハンドオーバー機能搭載PHS発売のニュースリリース
http://www.ttnet.co.jp/news/news_h11/h111028.html
DDIポケット「H"」導入のニュースリリース
http://www.ddipocket.co.jp/news/h110712.html
(大和 哲)
2000/06/27 00:00
|
|
|
|
|