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第1回:PDC(デジタル携帯電話)とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


デジタル携帯電話(PDC)の特長

 現在、日本では携帯電話の方式がいくつかあるのですが、まず、現在一般的に「携帯電話」と呼ばれ、使われている電話の台数のうち、その大多数を占めているのが、PDC(Personal Digital Cellular system:デジタル携帯電話)という方式を使った携帯電話です。DDI-セルラー/IDOのcdmaOne方式(および一部に残っているTACS方式)の携帯電話を除くと、現在の日本の携帯電話はすべてPDC方式を採用しています。

 このPDC方式を採用している携帯電話の一番の大きな特徴は「デジタル方式である」ということでしょう。PDC方式デジタル携帯電話には、アナログ携帯電話と比較して以下のようなメリットがあります。

・通話ノイズが少ない

・建造物などに跳ね返った電波でもある程度までは使うことができる

・通話を傍受されにくい

・ひとつの周波数で多くの端末(電話機)が使える

・電池の持ちがいい

 PDC方式によるデジタル携帯電話のサービスは1993年3月から始まりましたが、これ以前、日本では携帯電話・自動車電話といえばNTTハイキャップ方式やモトローラ(日本ではDDIによるサービス)TACS方式などのアナログ式のものしかありませんでした。


アナログ携帯電話の仕組みと欠点

 アナログ携帯電話で音声を電波に乗せる方法は、簡単に言うとFM(周波数変調)方式で、そのまま電波に音声の信号を流す方式です。仕組みが単純で、当時の携帯電話実現方法としてはリーズナブルだったのですが、この方式には大きな欠点がありました。

 それは、ある周波数で電波を使っている(つまり通話している)電話があると他の電話機がその周波数を使えない、ということでした。ラジオやテレビを思い浮かべてもらえばわかると思いますが、1つの周波数には1つの放送局しかありませんよね。もし、同じ周波数、あるいは近い周波数で2つの局の電波が届くとラジオは混信してしまうからです。

 ラジオと同じように電話でも、割り当てられた電波の周波数には幅があるので、ひとつの地域にいくつかの電話機を使うのは不可能ではないのですが、電話はラジオ局と違って、台数はどんどん増えていくもの。ラジオと同じような方式を使っていると、いずれ携帯電話用に割り当てられた電波を使い切ってしまうのは目に見えていました。


アナログの欠点を克服したデジタル携帯電話(PDC)

 さて、そこで登場したのが、デジタル携帯電話です。デジタル携帯電話ではアナログ方式と違って、音声をそのまま電波に乗せてしまうのではなく、まず、音声の取り込み(サンプリング)という作業を行ないます。これは1秒間を適当な間隔、PDC方式デジタル携帯電話では1秒間を8000回に分けて、1回1回の音量や周波数を数値データにします。

 そして、さらにこのデータの符号化(エンコーディング)という作業を行ないます。これは、簡単にいうと、デジタルデータの大きさを縮めたり、あるいはもしデータの途中が欠けてしまったりしても修復しやすいように、データをいろいろ加工することです。これによって、PDC方式の電話の場合、もともと1秒当り64kビットあるデジタルデータを6.7kビットまで縮めてしまいます(他に4.5kビット誤り訂正用の符号を載せるので、実際には11.2kビットのデータが電波には乗せられます)。

 ちなみにPDC(フルレート機)ではこの符号化方式にはモトローラの開発したVSELP方式というベクトル和励振線形予測という、簡単に言うと「人の声が使いやすい音程に重点を絞ってデータを作り、音声再生の計算が簡単で、伝送誤りにも強い」方式が使われています。

 データを小さくできる、ということはつまり、1秒の音声を1秒より少ない時間で相手に送ることができる、ということでもあります。そこで、PDC方式デジタル携帯電話ではTDMA(時分割多元接続)という方法を使って、1つの周波数を、3分の1の時間だけを使うことにしました。つまり、こうして、1つの周波数を複数の電話で譲り合うことによって、同じ周波数の電波を使って、アナログ電話の3倍の台数が同時にかけられるようになります。さらに、通話時間の3分の1の時間だけ電波を出すことで、アナログ携帯電話よりはるかに電池の持ちのいい電話を作ることができるようになったのです。

 また、デジタルデータにエンコーディングする際に、毎回スクランブルをかけているので、盗聴されにくくなっています。また、ある程度データにノイズが乗っても、デジタルデータならそれを訂正しやすくもなり、結果的に移動中でもノイズなどがアナログ方式と比較するととても少なくなりました。




周波数を有効に使う「ハイパートーク」

 ちなみに、これで解決できるかに見えた周波数不足問題ですが、ご存知のようにデジタル携帯電話となってから携帯電話が爆発的に普及してしまったため、せっかく増やした回線もさらに足りない、という事態となりました。

 そのため、電波に乗せる音声データの大きさを半分にして、1つの周波数で同時に6台の携帯電話が使えるようにしたデジタル携帯電話も後に登場します。この方式がNTTドコモなどが採用している、いわゆるハーフレートPDCです。ただ、データのエンコードの際にデータを圧縮しすぎるため、デコード(エンコードの逆で符号化したデータを元の信号に戻すこと)した音声の再現性が悪くなり、電話の声がモゴモゴと言うような、聞き取りづらいものになってしまいました。

 最近では、回線が足りないときにはハーフレートで、開いているときにはフルレートで通話するようにし、さらにフルレート時のコーデック(エンコード方法、デコード方法をまとめてこのようにいいます)アルゴリズムを「CS-ACELP」という方式に改良してできるだけよい音質で通話できるようにしたNTTドコモの「ハイパートーク」のようなものも出てきています。


PDCは日本のオリジナル方式

 さて、このデジタル携帯電話PDCですが、もともとNTTの開発した日本オリジナル方式であるため、基本的には日本でしか使われていません。世界的には、特にヨーロッパで、北欧のエリクソンやノキアといった企業が開発したデジタル電話方式「GSM」がもっともよく使われています。また、アメリカではクアルコムが開発したCDMA方式もある一方で、いまだにアナログ携帯電話が多く使われています。

 そのため、日本で使われているPDC方式の携帯電話は海外に持っていっても使うことができません。NTTドコモなどでは国際ローミングサービスを行なっていますが、そのために用意されている電話機は日本以外で使われている規格であるGSMや、cdmaOne方式を使用したものが使われています(なお最近、DDI-セルラー/IDOから、香港・韓国でも使えるcdmaOne方式の携帯電話が1機種発売されましたが、cdmaOneも海外で使えるのは現在この1機種のみです)。


次回予告

 本連載では、毎週ひとつずつ、移動体通信に関する用語を解説していきます。次週お送りする第2回では「PHS」を解説します。



(大和 哲)
2000/06/20 00:00

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