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第262回:液体レンズ とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 液体で光の焦点を合わせるレンズ
携帯電話のカメラも含め、カメラでの写真撮影には「ピントが合っているかどうか」という点はユーザーにとって、とても大事なことでしょう。せっかく撮影した画像のピントが合っていなければ、画像がぼやけてしまい、何が写っているかわからなくなってしまいます。
ピントを合わせるには、レンズを通ってきた光を、感光部分、たとえばデジタルカメラであればCMOSイメージセンサーや、CCDといった撮像素子、銀塩カメラの場合にはフィルムに焦点を合わせなければなりません。
これを人間の手を使わないで行なうためには、いくつかの方法があります。
よく使われている解決方法は、レンズの絞りをしぼる、という方法です。簡単に言うと、レンズの光の通る部分を小さくするとピントの合う距離の範囲(被写界深度)を広くすることができます。この原理を利用して、ピント合わせの必要がないカメラを作るわけです。
レンズ付きフイルムカメラや、携帯電話のカメラなどではよくこの方法が使われます。ただし、このタイプのカメラには、光量が少ない場合などは撮影が難しい、という弱点があります。穴を小さくすることでピントの問題を解決しているので、入り込む光の量が少なすぎるのです。
また、カメラの焦点を合わせる方法として、「オートフォーカス」という方法が採られることもあります。レンズと撮像素子や、複数のレンズではレンズ同士の距離を変えれば焦点の合う部分があるので、そこまでレンズをモーターを使って動かす方法です。
撮影中や撮影終了後に、携帯電話に内蔵されたアクチュエーター(モーターなどレンズを動かす仕組み)が唸る音を聞いたことがあるかもしれません。しかし、この方法は、小型、低電圧が必須である携帯電話には、モーターの重さ、大きさ、電力消費との兼ね合いが悩みの種となります。
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Variopticの液体レンズ
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液体レンズは、このオートフォーカスを実現する仕組みでありながら、モーターの重さや、大きさの問題を解決するレンズです。
液体レンズには、流す電気の電圧によって、光の屈折率を変えることができる、という特長があります。しかも、プラスチックと液体、それに電極から構成されているので、プラスチックやガラスのレンズとモーターの組み合わせで作られている従来の機械式オートフォーカスと比べ、非常に軽量で、静か、電力消費も少ないオートフォーカスの機構を作ることができるのです。また液体レンズであれば、機械部分のない光学ズームなどを作ることも可能になるでしょう。
現在、携帯電話のカメラに液体レンズを搭載した製品はありませんが、フランスのVariopticという会社が液体レンズの開発に成功しており、携帯電話向け製品を端末メーカー向けにサンプル出荷しています。また、蘭フィリップスなども同様の製品を開発中であると発表しています。
■ 液体で焦点を合わせる方法
Variopticが発表している資料などによると、水溶液と油という2種類の液体によって液体レンズを実現しています。
基本的な構造は次の通りです。まず、レンズには、まざらない2種類の液体が封入されており、隅に電極があります。電極に電圧が加わらないときには、水と油はお互いに半分ずつレンズ内に存在するだけです。
電極に電圧が加わると、特殊な水溶液は電極に引っ張られ近づこうとします。そこで、油が押し出されレンズの中心方向に集まろうとします。これによって、屈折率の違う2つの液体の接する曲面のカーブの度合いがきつくなっていきます。これで、光の集め方、発散させ方を変えることができるのです。
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液体レンズの仕組み。液体レンズには水溶液、油の2種類の液体と電極が封入されている。電極に電圧を加えることで、水溶液が電極に集まろうとし、押し出される油との接する面の形が変わり、屈折率を自在に変えることができるという技術だ
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・ 仏Varioptic、携帯向け液体レンズを出荷開始
(大和 哲)
2006/02/15 18:51
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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