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第229回:バイオプラスチック とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ 生物由来物質で作られたプラスチック
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植物原料プラスチックを採用したSO506iCベースの試作機
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「バイオプラスチック」とは、バイオマス由来の原料を使って作られるプラスチックのことです。バイオマスとは、生物物質資源のことで、簡単に言えば、木や草などをベースに高分子化合物を合成したものが、バイオプラスチックということになります。ポリ乳酸やバイオポリエステルなどがその代表とされています。
プラスチックは、「重合」という化学反応で生成される大きな分子量を持たせた分子、つまり高分子化合物です。
プラスチック類に属する人工的な高分子化合物には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリカーボネート、メラミン、エポキシ……と非常に多くの種類がありますが、これらのほとんどが石油など化石資源から作られています。たとえば、ポリエチレンの場合であれば、石油から取り出せるナフサを分解して生成されるエチレンなどから作り出されるのが一般的です。
しかし、バイオプラスチックを製造するには、原料に化石資源を必要としないため、環境への負荷を減らしつつプラスチックが生産することが可能となります。たとえば、代表的なバイオプラスチックであるポリ乳酸の場合、乳酸はさつまいも、とうもろこしといった植物のでんぷんから、酵素と菌を使って作り出すことができます。そして、この乳酸を、重合させることでポリ乳酸のポリマー(高分子)を作り出すことができるのです。
■ 生分解で環境負荷低下に貢献
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premini-IISの右側面にあるマクロ切り替えスイッチは植物原料プラスチック
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バイオプラスチックの特長としては、「生分解性プラスチックである」ことが挙げられます。生分解性とは、水や土の中にいる微生物によって、高分子化合物の分子構造が分解され、無機物に変えられることを指します。微生物にとって分解が容易であるものを、生分解度が高い物質、などと言います。
一般的なプラスチックは、そのままでは分解することはありません。これは、材料としては非常に便利な特性である反面、処分や再利用についてはいくつかの問題を抱える特性でもあります。しかし、バイオプラスチックであるポリ乳酸の場合、自然に存在する微生物によって、分解することができ、最終的には水と二酸化炭素にまで分解させることができます。
バイオプラスチックは、一般的なプラスチックと違って、リサイクルすることはできませんが、燃焼してもダイオキシン類が発生することもないため、廃棄物として処理が容易です。
ただし、バイオプラスチックはこのような便利な特長をもつ反面、現在のところ、いくつかの弱点も抱えています。
弱点とされているのは、強度や精度です。プラスチックの中には、ポリカーボネート、ポリアミドなど機械や電子機器などの部品を構成するために使われる「エンジニアリングプラスチック」と呼ばれるプラスチック類がありますが、これらに替わってバイオプラスチックを使おうとするならば、既存素材と同じレベルの強度や精度が必要となります。また、製造コストの問題もあります。これらを克服する技術の研究が進められ実用をめざしている、というのがバイオプラスチックの置かれている状況です。
携帯電話の場合、NTTドコモが、2005年4月にムーバ端末「SO506iC」をベースに、ボディ材料に植物原料プラスチックを採用した携帯電話端末を試作しました。さらに同社は6月に植物原料のケナフ繊維が入ったバイオプラスチックを利用したFOMA端末を試作しています。このほか、ソニー・エリクソン製の「premini-IIS」では、マクロ切り替えスイッチに植物原料プラスチックを採用しています。
このような筐体にバイオプラスチックを利用するには、落としたときの耐衝撃性などで充分なレベルに達するには困難な場合が多いのですが、6月に試作されたバイオプラスチック筐体では、ケナフ繊維をバイオプラスチックの補強剤として利用することで、耐熱性や強度が改善させることができたとされています。
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(大和 哲)
2005/06/15 11:45
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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