スピーカーは、電気信号を空気の振動、つまり音に変えるための装置です。たとえば、コイルと永久磁石を組み合わせることで、電気信号から動きを作り出せます。コイルに電気を流すと磁場が発生し、それに応じて永久磁石に力がかかりますから、その力や動きから振動板を使って空気を振動させてやれば、音を出すことができます。
フラットパネルスピーカーは、薄い平面の振動板を使い、これを振動させることで音を出す方式のスピーカーです。平面型スピーカーとも呼ばれます。
現在、スピーカーでは主流となっているのは、コーン型と呼ばれるタイプのスピーカーです。このタイプのスピーカーでは、平面型スピーカーとは異なり、円錐状(皿型)に加工された振動板(コーン紙)が使われています。また、他には、ドーム形の振動板を使ったドーム型スピーカーなども一般的です。
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フラットパネルスピーカーとコーン型スピーカーの構造の違い。どちらも振動板をコイルと磁石で振動させて音を作り出すが、フラットパネルスピーカーでは、振動板は平面になっている
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■ フラットパネルスピーカーの仕組みとメリット
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フラットパネルスピーカーの特徴としては、どこで聴いても音のよさが変わらないことが挙げられる。コーン型スピーカーでは、スイートスポットとそれ以外では音のよさが違ってしまう
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フラットパネルスピーカーでは、平面状に磁石が配置され、その面に対し、コイルを含む振動板が平行して配置されています。音のデータを含む電気信号がコイルに流されると振動して、空気を震わせて音として放出されます。
フラットパネルスピーカーは、ドームやコーンを持たないという構造であるため、従来のスピーカーとは大きく違う特徴があります。
まず、フラットパネルスピーカーは、平面的な板を振動させるので、スピーカー周辺のどこにいても同じように音が聞こえる、つまり無指向性のスピーカーという点が挙げられます。コーン型スピーカーの場合は、音が最もよい地点(スイートスポット)があり、そこからスプレー状に広がっていくことになります。
構造的な面から言えば、スピーカー自体を薄くできるので、スピーカー自体の存在を利用者から隠しやすいということも挙げられます。
また、フラットパネルスピーカーは、振動させて音が出る平らな素材であれば、なんでも利用できるというメリットがあります。ですから、菓子箱や、窓ガラス、鏡といったものにフラットパネルスピーカーの駆動部分を付ければ、箱なのに音が出る、窓ガラスなのに音が出る、というようなものを作ることも可能です。
■ 携帯電話では「耳をどこに当てても聞こえる電話」が
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フラットパネルスピーカーを搭載したN506iS
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最近、よく使われているのは、「液晶ディスプレイをフラットパネルスピーカーにする」というケースです。
たとえば、NECのパソコン「VALUESTAR」シリーズには、液晶ディスプレイを覆うアクリルの保護板がフラットパネルスピーカーになっているという機種が発売されています。このパソコンでは、フラットパネルスピーカーによって360度サラウンドの音響が可能となり、DVDの視聴をした場合などはパソコンと思えないほど高品位なサウンドを楽しめます。
また、携帯電話では、近日発売と見られるNTTドコモの「N506iS」にディスプレイ全体を振動板として使うフラットパネルスピーカーを搭載されています。
携帯電話の液晶パネル全体から音が発生するので、通話時に耳を当てる場所がディスプレイ近くのどこであっても、気にせず通話できるというのがこの機種のメリットです。また、パソコンと同様に、高品位なサウンドが楽しめるのもアドバンテージと言えるでしょう。特に携帯電話では、構造上、小サイズのスピーカーしか内蔵できませんでしたので、これは大きなメリットになり得るのです。
■ URL
NTTドコモ 「N506iS」 ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/05/whatnew0107a.html
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(大和 哲)
2005/01/18 11:57
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