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第157回:USIMカード とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ USIMカードとは
USIMカードは、15×25×0.8mm(幅×奥行×厚)という小さなICカードです。その内部には、4KB~64KB程度のEEPROMメモリや、32bitマイクロコンピュータなどが組み込まれています。日本では、NTTドコモのFOMAで「FOMAカード」と、ボーダフォンのVodafone Global Standard(VGS)で「Vodafone Global Standardカード(USIMカード)」という名前で利用されています。
USIMという名前は「Universal Subscriber Identity Module(汎用加入者識別モジュール)」の略で、その名の通り、カード内にはユーザーの電話番号や契約している携帯電話事業者の情報などが記録されています。USIMカードを携帯電話端末に装着することで、その端末をカード内に記録されている電話番号で利用できます。
これまで日本で使われてきた携帯電話では、電話番号を替えるにはショップで変更の手続きをしなければなりませんでした。しかしFOMAやVGSでは、対応端末を購入すれば利用者がカードを入れ替えるだけで、同じ番号をほかの端末で使ったり、あるいは逆に同じ端末ををほかの番号で使ったりするというようなことが簡単に行なえるのです。
たとえばVGSカード1枚を持って、端末を2台持っていれば、テレビ電話を使いたいときには、テレビ電話機能を持った携帯電話にUSIMカードを入れて利用しますが、パソコンでモバイル通信をしたいときには通信専用のカード端末にUSIMカードを差し替えて使うというようなことができるわけです。この場合、利用料の請求も1つの電話番号に対して行なわれることになります。
また、USIMカードには、自分の電話番号だけでなく、電話帳などのデータも記録できますから、電話機を変えた場合でも他の電話機で使っていた電話帳をそのまま使うことができます。
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3Gケータイで利用されているUSIMカードには契約者の電話番号などが記録されている。複数の携帯電話で同じ番号を使うといったGSM方式では可能だった便利な使い方ができるようになる
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■ 日本も「プラスチックローミング」が可能に
日本や韓国以外のアジア、あるいはヨーロッパなどで普及しているGSM方式ではSIM(Subscriber Identity Module、加入者識別モジュール)カードが以前から使われており、手軽に端末を替えることができました。
またGSM方式では、各国の携帯電話事業者がいわゆるローミングサービス、つまり自社の契約者が他国でも携帯電話を利用できるようなサービスが一般的に行なわれています。
たとえば、SIMカードだけを持っていったイギリスの利用者が、中国で携帯電話をレンタルしてSIMカードを入れて使います。そうすると、利用者はレンタルした電話であっても、イギリスで使っているものと同じ電話番号で電話の発着信やSMS(ショートメッセージ)の送受信ができるわけです。プラスチックの小さなカード1枚を持ってローミングを利用するので、このような使い方を、俗に「プラスチックローミング」などといいます。
USIMカードの規格は、国際的なICカードの標準規格である「ISO781x」をベースにGSM方式のSIMカードをグレードアップしたものになっています。カードの大きさやコネクタの規格などはSIMカードと同じで互換性を持たせた上で、その上位規格としてSIMカードではできなかったさまざまな用途に使えるようになっています。理論上は、日本のユーザーがUSIMカードを海外に持って行き、そのまま海外のGSM端末を使うと、日本で利用している電話番号で電話の発着信ができるのです。
これを大々的にウリにしているのがVodafoneのVodafone Global Standardです。J-フォンから社名変更したボーダフォンの本体は、海外でも有数の携帯電話事業者で、世界中に携帯電話ネットワークを持っています。12月に発売される「V801SA」であれば、そのまま海外で利用できますが、日本で使っているVodafone Global Standardカード(USIM)カードを持っていき、現地で携帯電話を利用するとイギリス、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドなどのVodafoneや、中国ではチャイナモバイルなどVodafoneとローミング契約をしている携帯電話事業者を経由して、世界中どこでも自分の電話番号で携帯電話を利用できるのです。
なお、ハードウエアの規格としては、USIMカード対応の携帯電話は、USIMカードとGSM方式のフェーズ2およびフェーズ2+に対応のSIMカードが利用可能です。なお、SIMカードに対応したGSM端末は、USIMカードのSIM互換の機能に関しては、利用できるとされています。ちなみにGSMフェーズ2とは、異なる周波数間でのローミングに対応するなど機能拡張されたGSM方式で1996年から利用されています。フェーズ2+はGPRSなどに対応したさらに新しい規格です。現在のGSM端末、およびそのSIMカードはほぼこれに対応しています。
規格としては、USIMカード1つでGSM端末やFOMA端末、VGS端末に対応できることになっていても、実際の携帯電話では必ずしもこのように利用できるとは限らないことに注意してください。実際には携帯電話事業者が利用できることを確認できないために「使えません」としている場合や、実際に使えないようなプロテクトを端末に施していることがあるためです。
たとえば、外国のGSM携帯電話には、特定の事業者の回線を使うことを前提にして携帯電話を安価に販売している場合があります。このような携帯電話では他の事業者のSIMカードは使えないように端末に設定がされており、日本から持っていったUSIMカードも利用することができません。
逆に外国で契約したSIMカードを持ってきた場合でも、たとえば日本のボーダフォンでは「ボーダフォングローバルスタンダード対応携帯電話は、USIMカード以外はご利用いただけませんので、あらかじめご了承ください。」と説明されていますので、同様に注意が必要でしょう。
■ 電話番号だけのICカードではない
USIMカードも、GSM方式のSIMカードも同じように、電話番号や電話帳データを記録可能で、またユーザーのPINコード(暗証番号)を使ってユーザー認証を行なうといった機能を持ったICカードです。しかし先述の通り、USIMカードは、さまざまな機能拡張が行なわれています。
特徴的な機能としては、ICカードを利用したクレジットカードと同様のセキュリティ機能を持っていることや簡単なプログラム(アプレット)を使えることなどが挙げられます。
そこで、音楽などのデータを購入する際に必要なデジタル著作権管理に使われたりあるいはUSIMカード内にクレジットカードや銀行口座などのセキュリティ情報を格納して、Java搭載の携帯電話をクレジットカードやモバイルウォレット(電子財布)として使ったりする利用法が考えられています。
また、USIMカードは接触・非接触両対応のICカードとして作ることができます。そこで、USIMカード対応の3Gケータイを、現在非接触ICカードが使われているICカードタイプのチケット代わりに使うという用途も考えられているようです。
■ URL
FOMAカードの概要
http://foma.nttdocomo.co.jp/fun/fun_12.html
Vodafone Global Standard カード(USIMカード)の概要
http://www.vodafone.jp/japanese/service/vgs/usim/
(大和 哲)
2003/11/18 18:17
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