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第127回:MIDIsign とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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■ MIDIsign とは
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funstyle対応端末「TK21」
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MIDIsignは、社団法人音楽電子事業協会(AMEI)が開発・推進している電子透かし技術です。ISMC(International Standard MIDI Code)に基づいた権利管理情報を、MIDI音楽データに埋め込みます。透かしデータが埋め込まれたMIDIデータも、従来のMIDIデータとほぼ同じ音、音質で再生されるので、ユーザーは耳にした時に気づくことはありません。
携帯電話では、ツーカーグループ(ツーカーセルラー東京、ツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西)が提供している音楽データ配信サービス「funstyle」で配信されているデータに導入されています。
「funstyle」では、配信する音楽データ内に電子透かしとして管理番号が埋め込まれています。これによって、たとえば不審なデータが発生した場合、埋め込まれている管理情報をAMEIが抽出し、解析することで違法性を判断することができるようになる、とされています。
現状の「funstyle」では、携帯電話向けのダウンロード配信しかしていないため、不正利用は技術的に難しいのですが、著作権者からの要望や、今後パソコンなどインターネット経由で、携帯機器に音楽データを配信するサービスを開始した際には、このような技術が必要になるだろう、ということで、このような技術を導入しているそうです。
■ MIDIsignの特徴
MIDIsignは、MIDI音楽データにISMCに基づいた権利管理情報を、ユーザーに分からないように埋め込むものです。ISMC番号からは、データの製作年、製作会社、第2層に使用している透かし技術、JASRAC楽曲作品コード(著作権に関する管理情報)などを知ることができます。
このMIDIsignは、さらに2重に透かしを埋め込むための“第2層目”の透かしを織り込むことが可能なことが特徴です。
透かしを2重に埋め込むことで、悪意のある解析者からの攻撃に耐久性が高まります。また第2層目の電子透かしには、各社の電子透かし技術を利用することができるので、コストや音質などの目的に合わせていろいろなタイプの電子透かしを埋め込むことが可能となります。
AMEIの発表資料によれば、MIDIsignのISMC番号に基づいたデジタル音楽データの管理・運営は同協会が行ない、違法使用者への警告なども権利者と連携して行なうことが想定されています。このISMC番号によって、一般ユーザーから海賊版業者に至るまで、違法なデータの使用抑制を強めることができる、としています。ちなみに、MIDIsignとISMCを利用した場合、JASRACに支払う著作権使用料は5%減額になります。
たとえば第2層の電子透かしデータには、日本ビクターの「MusicSign」のように、透かしを埋め込んだMIDIファイルを携帯電話の着信メロディへ変換しても透かし情報が残り、それをスタンダードMIDIに再変換した場合でも、電子透かしデータの読み出しが可能、というようなものが存在します。
■ 電子透かしとは
電子透かしとは、画像や音声などのデジタルデータに、そのデータを再生した際には存在が分からないように隠し情報を埋め込む技術です。
透かしの入っていないデータ、透かしの入っているデータ、どちらもユーザーには同じように見え(聞こえ)ますが、透かし抽出プログラムを利用すると、透かしの入っているデータからは、埋め込んだ「透かしデータ」を参照することができます。つまり、ユーザーに意識させることなく、特殊なデータをコンテンツの中に埋め込むことができるわけです。
データの埋め込み方には、直接埋め込みやデータの周波数成分に埋め込むなど、いくつかの方法がありますが、一般的には人間の目や耳では知覚し難いノイズという形で埋め込まれる手法がとられているようです。そのため、電子透かしが埋め込まれた楽曲などのデータは、通常、人間の目や耳では分からない程度に劣化します。
それぞれのタイプによって、デコードが簡単、あるいは加工に対して強い、といった特徴があります。先述した「MusicSign」におけるデータのコンバートや変更などに対する耐性というのは、まさしく電子透かしの特徴の1つであるといっていいでしょう。
電子透かしによって埋め込まれる「透かしデータ」の利用法としては、管理番号や著作権者に関する情報などを埋め込んでおくことが考えられます。AMEIの発表にあったように「これは海賊版ではないか」と疑われるようなデータが出回った際に、そのデータを透かし抽出プログラムにかけ、透かしデータとして管理番号や著作権者のデータが出てきたら、それを証拠に相手を訴える、といったことが可能になるわけです。
また、他の応用としては、秘密のデータの受け渡しやデータの改ざんチェックなどにも使うことが考えられています。
秘密データの受け渡しというのは、透かしデータとして何か秘密のメッセージなどを埋め込んで渡すというような使い方です。電子透かしでデータを埋め込めば、特定の透かし抽出プログラムがなければ、単純な画像ファイルにしか見えませんが、プログラムがあればメッセージが伝わる、ということになり、従来の暗号などの代わりに使うことが考えられているようです。
また、改ざんチェックは、画像ファイルなどで本来のデータから改ざんされた部分があるかどうかを電子透かしによってチェックするというものです。
たとえば、免許証やクレジットカードに添付した本人の証明写真一面に透かしデータを入れて置くとしましょう。もし、この写真の一部分が他人と入れ替わっていたら、その部分の透かしデータも変わってしまうので改ざんが判明する、というわけです。
■ URL
ニュースリリース
http://www.tu-ka.co.jp/news/release/030227.html
funstyle
http://www.funstyle.net/
社団法人音楽電子事業協会
http://www.amei.or.jp/index.html
MusicSign ニュースリリース(日本ビクター)
http://www.jvc-victor.co.jp/products/others/MUSICSIGN.html
■ 関連記事
・ ツーカー、音楽配信サイトにMIDI電子透かし技術「MIDIsign」を導入
(大和 哲)
2003/03/25 12:33
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