|
|
|
第126回:@FreeD とは
|
|
|
|
大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
|
ドコモPHSの定額データ通信「@FreeD」
|
P-in Free 1P
|
NTTドコモは、PHSを利用した定額制データ通信サービスの提供を2003年4月1日より開始すると発表しました。そのサービス名が「@FreeD(アットフリード)」です。
NTTドコモが担当するのは、無線部分、それから各インターネットサービスプロバイダー(ISP)までの接続となります。インターネット接続を利用するには、各プロバイダーとの契約が必要ですが、プロバイダーでの接続を使い放題のプランにすればインターネット接続にかかる費用は、毎月定額で済むようになります。
ちなみに、対応予定のプロバイダーは、@nifty・BIGLOBE・OCN・So-netなど17社で、@FreeDからの接続に対応した月額固定の料金プランや、@FreeD専用プランを用意しているプロバイダーもあります。
「@FreeD」に対応するCF型データ通信端末「P-in Free 1P」または「P-in Free 1S」を利用して、NTTドコモのPHSサービスエリア内で64kbpsまたは32kbpsでデータ通信を行なうことができます(64kbpsでの通信は64kbps対応エリアであることが必要)。「P-in Free 1S」の方はPHS音声通話や、PDC携帯電話のパケット通信であるDopaなどにも対応しています。
ただし、料金コースに「@FreeD」を選んだ場合、定額となる対象は「@FreeD」対応のアクセスポイント(電話番号)へのデータ通信に限ります。「@FreeD」対応のアクセスポイント以外でデータ通信を行なった場合、「@FreeD」は適用されず、ドコモのPHS向け料金コース「プラン270」と同額のデータ通信料となり、音声通信、Dopaに関してはどちらも音声通話の料金、Dopaのパケット料がかかります。
回線交換方式による定額サービス
@FreeDが注目されている理由は、料金定額で使い放題で比較安価となることや、その仕組み上、通信速度や安定性が従来の定額制のモバイル通信とは違うことになることが予想されている、ということがあるでしょう。
@FreeDの料金は「定額月払プラン(月額4,880円)」、または「定額年払プラン(年額48,000円一括前払い)の2コースが用意される予定となっています。NTTドコモから提供された資料によると、同社が現在提供しているデータ通信向け料金プランと比較した場合、「定額月払プラン」であれば、1カ月に6時間までの通信なら「パルディオデータプラス」、12.8時間までなら「パルディオ・データプラス+P-p@c10」、12.8時間以上であれば「@FreeD」プランを、それぞれユーザーに対して薦めています。
PHSでのモバイル通信の特徴は、比較的低速ながらも、整ったインフラを活かして広いエリアで、どこでも使用できるということになるでしょう。速度的には、無線LANを使った「ホットスポット」などがはるかに速いのですが、現在は、ホットスポットは喫茶店内など特定の店舗に限られていますが、PHSは電波さえ届けば、屋外のアンテナを利用して建物内などで利用できるため、サービスエリアが全く異なります。また、PHSは速度的には32kbps~128kbpsと携帯電話よりも速いため、モバイル通信の手段としてPHSを使った通信は非常に人気があります。
さて、この@FreeDは64kbps、32kbpsの回線交換方式による通信です。同様にPHSを使ったモバイルデータ通信における定額制サービスとしては、DDIポケットの「AirH"」や、同回線を利用している日本通信の「b-mobile」などがあり、通信速度も32kbpsと128kbpsのサービスが用意されています。
AirH"と@FreeDの仕組みの違い
|
P-in Free 1S
|
AirH"をはじめとした従来のPHSによる定額モバイルと、@FreeDとそれぞれの仕組みにおける大きな違いは、回線共有の方法です。
AirH"では、最高で128kbps(実効108kbps)という通信速度がアピールされていますが、実際の通信は、擬似パケット通信でユーザーに近い部分から回線を共有する可能性があります。
@FreeDは、64kbps、および32kbpsの回線交換方式です。回線交換では、データ通信中にユーザーがその回線を占有してしまうため、回線の逼迫が心配になりますが、@FreeeDでは、一定時間データの送受信が行なわれない場合は、インターネットなどに接続したままで回線のみを休止状態にする「ドーマント方式」を採用して、逼迫を防いでいます。
ドーマントとは、英語のDormant(休眠する、遊んでいる)のことで、実際にはデータをやりとりしていない状況のことです。
例えば、インターネットで閲覧したいページのダウンロードが終了して、そのページを閲覧している時など、接続中であってもデータが流れていない状態を「ドーマント状態」と言いますが、ドーマント方式を利用している通信機器の場合、「ドーマント状態」になった場合や、電波状況などで通信ができなくなった場合に接続側(この場合パソコン側の通信カード)が、いったん「ドーマント」になることを要求して、一時的に無線回線を休止し、他の回線でデータ通信が行なわれると回線を譲ることができるようにする、という仕組みを実現しているのです。
この休止を“層”に例えると、ダイアルアップ層よりも下、伝送手順制御よりも上の層で行なっていますので、パソコンからは接続が切れたことを感知して、リダイアルなどをする必要はありません。つまり、パソコンからは常にインターネットへの接続があるように見ることが可能なのです。ただし、休止した後に、再びデータの送受信を行なうまでに体感的に応答がにぶくなったり、繋ぎ直しているのが分かったりということはあります。
ちなみに、このドーマント方式はARIB(社団法人電波産業会)で策定されたPHS、およびISDNの効率的なデータ通信技術のひとつです。
回線交換方式とドーマント方式のメリット、さらに他社とはサービスエリアの広さも違いますので、実際の使い勝手がどれだけどのように異なってくるかは未知数といえるでしょう。実際にサービスが開始され、試用レビューなどが待たれているサービスであると言えるかもしれません。
・ @FreeD
http://www.at-freed.com/
・ NTTドコモ ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/03/whatnew0306.html
・ ドコモ、定額制PHSデータ通信サービス「@FreeD」
(大和 哲)
2003/03/18 19:03
|
|
|
|
|