インタビュー

HTC NIPPONの児島社長に聞く

「HTC U11」の魅力と日本市場でのこれから

 Androidスマートフォンのフラッグシップモデル「HTC U11」を発表したHTC。発表会にあわせて台湾を訪れていたHTC NIPPON 代表取締役社長の児島全克氏に、HTC U11の魅力や、日本市場での事業展開の方向性などについて伺った。

HTC J butterflyで日本市場の価値を再確認

HTC NIPPON 代表取締役社長の児島全克氏

――日本法人の社長になられたばかりですが、ご自身の経歴を少し教えてください。

児島氏
 元々、モトローラで仕事をしていました。MCA、JSMRといった広域の移動通信機のハードウェア、ソフトウェアを開発していました。当時、ハードとソフトで分かれていませんでしたが、それを使ってデータ通信を何とかしたいということで、自動販売機のデータ通信システムや宅配業者の位置情報管理などの通信の設計を行っていました。それがベースになっています。

 ベージャー(ポケベル)の日本向けのものを作ったりしていましたが、市場がセルラーに世代交代し、2Gから3Gに切り替わるタイミングで、モトローラの中で3Gの研究センターを作ろうとなりました。モトローラはCDMAをやっていたのですが、日本ではW-CDMAが絶対に必要ということで、その研究センターを日本に置きました。そこで無線通信の研究を行いました。その後、特許や発明を統括しているCTOオフィスがあるのですが、当時は米国にしかなく、それを日本にも作って、そのセンター長をしていました。GPSやユーザーインターフェイスなどの研究開発を行っていましたね。

 5年先の技術にずっと携わっていたのですが、ある時、今日・明日のビジネスをやってみたいと思い、ちょうどHTCが日本に来るタイミングと重なり、最初のメンバーとしてジョインしました。最初の頃はHTCも日本のキャリアさんのことが分からないので、市場開拓するところから始めました。Windows Mobileを作っていたのですが、誰も知らない。日本にもPHSのものはありましたが、3Gのものはありませんでした。パッションを持ってチャレンジしていましたね。

 途中、HTCを離れた時期もあったのですが、戻った頃にはWindowsがほぼ消えて、Androidが始まる頃でした。KDDIさん向けのスマートフォンを中心に作り始めたのですが、グローバルモデルをそのまま持ってきても日本ではウケないのです。FeliCa、防水、カラーなど日本向けのものを作らないといけないということで、KDDIさんのデザイナーやユーザーの要望に耳を傾けて日本独自のモデルを出していこうと考え、グローバルとは違うラインの商品を作りました。HTC JやHTC J butterflyなどがそうです。

 HTC J butterflyなどは、日本向けに作ったのものが高く評価され、世界に出て行ったのです。日本はやっぱりすごいぞ、ということで、そこに力を入れていかなければいけないということを再確認しました。その体験が、日本でどういうものが求められているかが非常に重要になるとHTCが考えるようになったきっかけです。

握って使う「Edge Sense」はこれからも進化する

HTC U11

――今回発表されたHTC U11には新しい機能がいくつも搭載されていますが、日本ではどの機能がウケると見ていますか?

児島氏
 カメラがDxOMarkで一番のスコアを取ったとか、音がいいとか、いろいろ特長はあるのですが、音やデザイン、カメラといったところは他社もみんな取り組んでいるところで、好みもあります。我々としてイチオシなのはスクイーズ、Edge Senseです。誰もやっていない機能なので、これをプッシュしていきたいですね。新しい使い方は最初はなかなか受け入れられないのかもしれませんが、我々は今回搭載したもの以外にもいろんな機能を開発しています。今回はまず誰にでも受け入れられるような機能を実装しました。今後はソフトウェアの更新を通じて新しい機能を追加し、さらに利便性を高めていきます。ユーザーの声に耳を傾けながら、反映させていくつもりです。

――日本ではキャリア向け、オープンマーケットのどちらに軸足を置いていくのでしょうか。

児島氏
 世界的にもそうですが、日本はとくにキャリアさんをお客様にしたビジネスが中心になります。その中でもハイエンド。我々はイノベーションを大事にしています。いろんな新しいものを一番に出していくというのが我々のキャラクターです。そうなると、製品は必然的にハイエンドになります。それをキャリアさん経由でお届けします。

 現在のMVNO向けのオープンマーケットは少し安いものが中心です。どれを買っても普通に使え、値段が安くなり、SIMフリーの市場が大きくなってきているという状況です。我々はそこに入れないのではなく、やはり新しい技術を持って入っていきたいのです。オープンマーケットにおいても、そういった製品を求める声が大きくなり、環境が整えば、製品を出していくつもりです。

――HTC 10では、防水、おサイフケータイといった日本でのニーズが大きい機能が省略されていました。HTC U11ではそれらがサポートされていますが、日本側からのリクエストの結果なのでしょうか?

児島氏
 完全に日本からのリクエストです。FeliCaをどうするか、防水をどうするか、日本からのリクエストがなければ、そうはなりませんでした。それがグローバルモデルになっていったのです。

――HTC U11は幅広いユーザーをターゲットにしている端末だと思いますが、敢えてこんなユーザーに、こんな風に使ってほしいという願いはありますか。

児島氏
 今まで日本でのHTCのユーザーは男性の比率が高かったのですが、HTC U11はデザイン的にもカラー的にも女性にオシャレに使ってもらいたいと考えています。今回、インカメラを強化し、セルフィーにも力を入れていますから。

――ありがとうございました。