レビュー

いよいよ始まったKDDIのデュアルSIM「副回線サービス」って便利なの? その使い方とは

 KDDIと沖縄セルラーによるオプションサービスとして、「副回線サービス」の提供が始まった。auとUQ mobileの利用者を対象としており、災害や通信障害などが発生したときにソフトバンクの回線を副回線として利用できる。

 auもしくはUQ mobileを使っていればオプションを申し込むだけで済む、“ワンストップ”ならではの手軽さも大きな特長だ。

 個人向けは月額429円で利用可能な「副回線サービス」は、いったいどんなサービスなのか? 本稿ではサービス提供の背景に加え、概要・使い方やよくある疑問などをまとめた。

サービス提供の背景

 「副回線サービス」は、いまや生活インフラの一部と言えるモバイルネットワークについて、もしものときのために備えた副回線を提供するものとなっている。

 デュアルSIMとして2枚のSIMをスマートフォンに入れ、通信障害や災害時には利用者側で切り替えて通信を利用する。

 KDDIからは、副回線としてソフトバンク回線を利用するサービスが提供される。また、ソフトバンクも4月12日に「副回線サービス」を開始し、副回線としてKDDI回線を利用できるようになる。

 2022年7月のKDDIによる大規模障害を受け、事業者間ローミングなどの議論も進められるなか、KDDIとソフトバンクのキャリア間交渉によってサービスが実現した。

 KDDIの髙橋誠代表取締役社長とソフトバンクの宮川潤一代表取締役社長がそれぞれ、2月の決算会見の席上でサービス開始について言及していた。

概要

 後述する「よくある疑問」と重複する部分もあるが、まずはKDDIの「副回線サービス」の概要について簡単にご紹介したい。

 「副回線サービス」を申し込むと副回線用のSIMカード(eSIM/物理SIMカード)が発行され、主回線の電話番号とは別に、新たな電話番号が付与される。

 auやUQ mobileにおける音声通話対応プランの利用者のみが対象で、主回線の対象プラン1回線につき1回線まで副回線を使える。スマートフォンや携帯電話端末で利用でき、動作確認端末のリストがWebサイト上で公開されている。

 個人向けの利用料は月額429円で、データ通信容量は月々500MB。送受信速度は最大300kbpsで、500MBを超過すると月末まで128kbpsの速度制限がかかる。

 通話料金は30秒につき22円で、国内SMS送信は1通につき3.3円(全角70文字まで)。

注意点

 「副回線サービス」を申し込むと、1台のスマートフォンに2枚のSIMを入れることで、KDDI回線とソフトバンク回線の両方を利用できる状態になる。

 ただし、KDDIでは「主回線・副回線の両方を常にオンにしておくこと」は推奨していない。理由は、auやUQ mobileの電波状況が悪い場合にソフトバンクでの通信に切り替わり、データ容量を消費してしまったり、従量制の通話料金が適用されてしまったりするからだ。

「主回線」オフ、「副回線」オンの状態。副回線はデータ容量に限りがあることに加え、通話料金も従量制のため注意したい
副回線(ソフトバンク回線)

 そのため、普段は「主回線」をオン、「副回線」をオフの状態にしておく必要がある。主回線がつながらなくなった場合のみ、副回線をオンにすればOKだ。

「主回線」オン、「副回線」オフの状態
主回線(KDDI回線)
KDDI回線利用時の画面
ソフトバンク回線利用時の画面

よくある疑問

 ここからは、契約の流れや設定など、よくある疑問を一問一答形式でまとめた。なお、auでは「副回線サービス」のサービスサイトが開設されており、より詳しい情報をチェックできる。

契約するにはどうすればいい? オンライン? 店舗?

 「副回線サービス」を利用したい場合、Web上で申し込むか、「お客さまセンター」へ電話する必要がある。実店舗では現時点で申込みを受け付けていない。

 KDDIは、店舗での申込受付について「検討中、時期未定」としている。

対応機種は?

 「副回線サービス」のサービスサイトでは、動作確認端末の一覧を確認できる。

 なお、KDDIとソフトバンク両方の回線を利用するという特性上、端末にSIMロックがかかっている場合は解除する必要があるので注意したい。

初期設定は? 実際に使い始めるにはどう操作すればいい?

 「副回線サービス」を申し込んだあとの初期設定は、利用するスマートフォン端末によって異なる。サービスサイトにおいて、端末などの利用状況に関する設問に答えることで、設定手順が表示される。

 初期設定が完了し、実際に主回線・副回線を切り替えたい場合、たとえばiPhoneでは設定画面から「モバイル通信」に進み、「主回線」「副回線」のオン・オフを切り替えられる。

auのWebサイトより

普段の電話番号は使えるの?

 先述の手順で「主回線」をオンにしている場合は、普段使っている電話番号のまま利用できる。

 一方、何らかの理由で「副回線」をオンにし、切り替えて使う場合は、副回線として新たに発行される電話番号を使うことになる。

新しく発行される副回線の電話番号、自動的に友人や家族には伝わる?

 副回線として付与される電話番号は、自動的に友人や家族へ通知されない。

 「副回線サービス」を申し込んで付与された電話番号は、緊急連絡先として親しい人に伝えておいたほうがよさそうだ。

使える“ギガ”はどれくらい? 追加できる?

 「副回線サービス」における副回線は、ソフトバンクの通信設備への負荷を考慮した設計となっている。

 そのため、月々500MBのデータ通信容量(最大300kbps)を使い切ってしまうと128kbpsの速度制限がかかり、新たにデータ容量を追加することはできない。

使えるのは4G? 5G?

 副回線は4Gおよび3Gの通信となり、5G通信は利用できない。

普段と同じサービスが使えるの?

 通信障害などで主回線のネットワークに接続できなくなっても、副回線でネットワークを利用できる。たとえば決済サービス「au PAY」などを含めて、ネットワーク環境が必要なサービスは問題なく使える。

 ただし、主回線の電話番号認証が必要なサービスなどは利用できないため、注意が必要だ。また、「+メッセージ」など一部利用できないサービスもある。

副回線利用時のau/UQ mobileサービスの利用可否(auのWebサイトより)

「副回線サービス」のメリットは?

 「転ばぬ先の杖」として有用な「副回線サービス」だが、同サービスの提供が始まる前からデュアルSIMを導入し、冗長化を図っている人もいるかもしれない。自分で手続きができる場合は、MVNOのサービスを選んでいいだろう。

 一方、今回の「副回線サービス」の最も大きなメリットは、“ワンストップ”だ。auやUQ mobileの利用者であれば、オプションを申し込むだけで済む。つまり、本人確認や支払方法の登録などをふくめ、KDDI以外の通信事業者と回線契約をするための手続きは不要というわけだ。

 加えて、サービスの申込受付こそしていないものの、実店舗でフォローを受けられることも大きい。デュアルSIMに興味を持ちつつ、不安を抱えている人にとってはうってつけのサービスと言えそうだ。