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IoT回線の冗長化を手軽に実現、NTT Comの「Active Multi-access SIM」説明会で語られたこと

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は28日、「Active Multi-access SIM」に関して報道陣向けの説明会を開催した。IoT向けのデータ通信SIMとして開発され、1枚のSIMで複数の通信キャリアを利用できる。また、障害の発生時に自律的に接続先を切り替えるしくみなどを備えている。6月にトライアル提供が始まる予定。

 説明会には同社 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 IoTサービス部門の部門長を務める吉宮秀幸氏や、担当課長の永作智史氏が登壇し、開発の背景などを語った。

 吉宮氏は「製造ラインの制御やモビリティ、金融などの業界でのIoTの活用が伸びていくと考えている。IoTが本格化するうえで、モバイル回線の可用性が重要になる」とコメント。IoT回線の冗長化を実現するサービスとして「Active Multi-access SIM」が開発された。

吉宮氏

 たとえばスマートフォンでデュアルSIMを用いて冗長化を図る場合、利用者側で通信キャリアを切り替える使い方になる。一方、工場などにおけるIoTデバイスは数が多く、場所も分散しているため「(通信キャリアを)自動的に切り替えるしくみが必要」(吉宮氏)。

 しかし、現時点で提供されている方法によるIoT回線の冗長化では、切替動作を追加するために端末を改修したり、特定の端末を用いたりしなければならないことが課題だった。

 「Active Multi-access SIM」は先述の課題を解決し、より手軽な冗長化を実現する。同サービスのセールスポイントとして永作氏が最初に挙げたのが、通信障害を自動で判定し、通信キャリアを切り替える機能だ。

永作氏

 SIMに内包されているプログラム(アプレット)が、インターネット上のホストに対して定期的に通信の確認を実施。メインの通信キャリアの通信障害を検知すると、予備の通信キャリアに自動で切り替わる。一定時間経過後には、メインの通信キャリアへの切り戻しも実施される。そのため、利用者は手動で通信キャリアを切り替える必要がない。

 また、1枚のSIMで2枚の通信キャリアをサポートすることも特長のひとつ。たとえば小型のIoTデバイスなど、デュアルSIMの採用が難しいケースでも、回線を冗長化できる。

 「Active Multi-access SIM」で利用可能な通信キャリアは、NTT ComのフルMVNO回線(NTTドコモ回線)と仏Transatelの回線(KDDI回線)。Transatelは、グローバルの通信事業者として、2019年からNTTグループに加わっていた。

 そのほか、2022年2月に発表された独自技術「アプレット領域分割技術」も「Active Multi-access SIM」で応用される。通信プロファイル領域とは別に、アプリケーションなどの情報を書き込むアプレット領域を設け、利用者が独自のプログラムなどを実装できるようにした。

 「Active Multi-access SIM」のトライアル提供は、6月の開始を目指して準備が進められている。無償で提供し、アンケートによってフィードバックを募る。その後、商用サービスの提供が2023年度内に始まる予定。

 商用サービスの価格について、永作氏は「現在検討中。トライアルのなかで意見をいただきながら最終的に決定したい。通常の通信(NTT Com)については現行のフルMVNOサービスに準ずるかたちにして、予備回線の通信料金は従量制ということを考えている」と語った。

 同氏は、スマートフォンでの利用可否について「モバイルの標準に沿って設計したので、基本的にはスマートフォンでも動作すると期待している。検証のなかで優先度を高めたのはIoT製品だが、スマートフォンでも何台か動作は確認した」とコメントした。

サービスの開発にあたって、さまざまなIoT機器で検証したという

 「Active Multi-access SIM」はデータ通信専用だが、永作氏は「技術的には、音声通話やSMSへの対応も可能。音声を含むサービス展開は検討していく」と語り、今後への意欲をのぞかせた。

説明会では実機デモも実施された