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KDDI、25年度は実力値で6%増益 新中計やauFHの上場検討、ガバナンス強化を発表

 KDDIは、2025年度の通期業績を発表した。売上高は6兆719億1500万円(前年同期比4.1%増)、営業利益は1兆991億2500万円(同1.1%増)、最終利益は7071億1200万円(同7.9%増)となった。直近の第3四半期に下方修正された通期予想(営業利益1兆900億円)をやや上回る水準で着地した。

KDDIの松田浩路社長

 一方で、過去の短期解約者による契約コストの減損(482億円)や子会社の不正取引に伴う資金流出(171億円)といった一時的なマイナス要因を除いた「実力値」で見ると、営業利益は1兆1643億円(同6.0%増)となり、当期利益は7567億円(同13.6%増)にのぼる。これにより、実力値ベースで前中期経営計画の目標の2019年3月期比で「EPS(1株当たり利益)の1.5倍」を達成した。

モバイルの構造変革順調、来期は前年比5%の増益目指す

 コンシューマー事業におけるモバイル収入は2兆54億円で前年同期比326億円増。アクセスチャージの影響を除くと約500億円増となった。KDDIの松田浩路社長は「この1年、モバイルの構造変革に特に注力してきた。LTVの重視や価値創出の変革が奏功した」とモバイル事業伸長の背景について説明する。

 au Starlink Directの接続数は400万人を突破。5G SAのサービス「au 5G Fast Lane」も累計250万人が利用した。ユーザー1人あたりから得られる売上を示すARPUは前年同期比100円増の4440円。スマートフォン稼働数は前年同期比36万契約増の3323万契約となった。

 金融・エネルギー事業はローソン持分法の利益を合わせて174億円増、DX関連はプラス286億円と特に下期に伸びた。 また、こうした金融事業の成長などを背景に、同社傘下で金融事業を手がけるauフィナンシャルホールディングスの株式上場の検討を開始したことも明らかにした。

 あわせて発表された2027年3月期の連結業績予想では、売上高が6兆4100億円(前年比5.6%増)、調整後営業利益が1兆2100億円(同5.0%増)を見込む。また、トヨタ自動車および京セラからの株式売却意向を受け、株主還元の強化を目的に上限3000億円(上限1億4600万株)の自己株式の取得と、消却前発行済株式総数の4.31%に相当する自己株式の消却を実施することも発表した。

子会社の不正会計でグループガバナンス強化へ

 仕組みの面では、全子会社を対象としたガバナンスの総点検を実施しており、抽出した課題の改善とルール化を6月末までに完了させる。また、AIによる財務データのアラート機能や与信チェック機能などを導入し、ガバナンス強化と業務効率化を両立させる方針。

 さらに、組織体制の見直しとして6月1日付で組織再編を実施する。これまでコーポレート部門内で分散していた子会社管理機能を集約し、全社・グループ横断でガバナンスを推進する「ガバナンス推進本部」を新設する。同本部のトップは最勝寺奈苗CFOが兼任し、財務やリスクに関する情報を一元管理する。あわせて、事業部門側にも出資先を管理する部門を新たに設置し、役割を明確化して推進力を高めるとしている。

 風土づくりとしては、経営トップを集めた対話セッションや、KDDI社長による主要子会社への直接訪問などを通じてコミュニケーションの質と量を高め、心理的安全性の向上と自律的な不正抑止力の醸成に努めるという。松田社長は実際にBIGLOBEとジー・プランを訪問し、従業員らと直接やりとりを交わしたことを明らかにした。

新中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」

 今後3年間を対象とした新中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」が発表された。同社は今後到来する「AI前提社会」において、AI自体は急速に同質化していくと指摘している。その上で、通信インフラや全国の顧客接点、人材といったAIに代替されにくい「フィジカルなアセット」を磨き上げ、異分野を掛け合わせる「フュージョン」によって新たな価値を創造していく方針を掲げた。

 具体的には3つの「フュージョン」を推進する。1つ目の「インフラフュージョン」では、通信網とAI基盤を融合させる「デジタルベルト構想」を掲げ、AIデータセンターや海底ケーブルの構築などに3年間で1兆2000億円を投資する。2つ目の「HRフュージョン」では、グループ会社を中心にAIやセキュリティなどの専門スキルを持つエンジニアを数千名規模で育成・輩出する。そして3つ目の「リアルテックフュージョン」として、同社が持つ膨大なデータやリアルな接点とテクノロジーを融合させ、企業向けの「AI労働力」や生活を豊かにするAIサービスの社会実装を目指す。

 事業・財務目標としては、事業管理のために新たに3つのセグメントを設定した。事業の中核となる「テレコムコア」で安定的な利益成長を維持しつつ、成長を牽引する「パーソナルグロース」「ビジネスグロース」の両領域において年平均(CAGR)2桁成長を実現し、全社の営業利益でCAGR5%の成長を目指す。同時に、資本効率を意識した経営を進め、3年間で1兆円規模の成長投資を積極的に検討していくとしている。

質疑

――ソフトバンクが発表した新料金プランが「auのコピーに近い」との指摘があるが、受け止めは。

松田氏
 2025年から価値競争の土俵にしていきたいと言い続けてきた結果、ある意味でトレンドセットができたのだと思います。他社のことなのでコメントは控えますが、一般的に模倣されるということは最大限の賛辞だと受け止めています。

――5Gネットワーク(ミリ波)の構築の進捗と今年度の取り組みは?

松田氏
 ミリ波については引き続き推進していきます。京セラと共同開発した中継器を東京駅のホームに設置しており、新幹線に乗る前にサクッとダウンロードするといった日本ならではのユースケースを作り、それを海外へも輸出していきたいと思います。

――モバイルARPU上昇の要因は新料金か。また再値上げの検討は?

松田氏
 ARPUのプラス100円は、通信と付加価値のそれぞれが伸びて積み上がった結果です。値上げありきではなく、お客様のニーズに合った価値づくりが大前提で、「au 5G Fast Lane」の受容性などを勉強しながら、新しい価値づくりに取り組んでいきます。

――人口減少で携帯市場の伸び代が小さくなる中、どうモバイル事業を成長させていくのか。

松田氏
 人口が減る中でも、通信というコア事業により多くの価値を付加してお届けしていきます。それに加えて、新たなデバイスや「AI生活力」によるサービスを作り出し、1人あたりのARPUを高めていくことに尽きるでしょう。

――ベトナムでの「povo」展開の狙いと、新興国展開を再び行う背景は?

松田氏
 プリペイドからポストペイドへの転換は各国の通信事業者の課題であり、povoの「トッピング」はプリペイドの良さも活かせるため、若い世代向けに日本の成功モデルが合うと判断しました。新興国展開というより、povoのモデルをソリューションとして「コト輸出」やコンサルティングしていきたいと考えており、ベトナムの環境がそれに適していると判断しました。

――コンシューマー向けのAI戦略について、他社にどう対抗していくのか。

松田氏
 試行錯誤を続けていますが、コンテンツを持つパートナーとお客様を、GoogleのGeminiを使ってつないでいきたいと考えています。自分の関心がある分野を深掘りし、正しい情報をお届けするサービスとして、来月あたりに詳細を発表できるよう準備を進めています。

――暗号資産ウォレットの提供に関して、コインチェックグループと提携する理由は?

勝木氏(KDDI常務、勝木朋彦氏)
 これまでのオンライン金融の基盤の上で、次世代の金融領域(Web3金融)を探索していくタイミングに来ています。こうした法整備や市場拡大への期待がある中、国内市場の黎明期から先行して取り組み、口座数やアセットの基盤としてトップを走るコインチェック社との提携を進めることにしました。

――auフィナンシャルホールディングスの株式上場を目指す狙いは?

勝木氏
 2008年のauじぶん銀行の開業以来、モバイル金融サービスを発展させてきました。現在では総資産が9兆3000億円に拡大し、KDDIの通信のバランスシートに迫る規模になっています。金融事業のさらなる成長と公益性を考えたうえで、責任ある上場企業を目指すことが、持続的成長や企業価値の最大化を促進するうえで最良の方法ではないかと考えたためです。

――AIデータセンターなどの投資額が他社より抑えられている印象がある。対NTT、対ソフトバンクでKDDIの強みはどこか。

松田氏
 単に電力のあるところにデータセンターを建てるのではなく、細やかな通信ネットワークを張り巡らせ、いかに遅延をなくすかという点でネットワークを生かします。インフラを作るという「プロダクトアウト」ではなく、お客様の社会実装をお手伝いするという「マーケットイン」の思いを強く持っています。