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総務省、26GHz帯・40GHz帯の5G利用ニーズ調査結果を公表 ミリ波の活用に期待と課題
2025年7月16日 17:40
総務省は、26GHz帯および40GHz帯における第5世代移動通信システム(5G)の利用ニーズに関する調査を実施し、その結果を公表した。調査期間は5月19日~6月18日で、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイル、Sharing Design、ソニーワイヤレスコミュニケーションズ、阪神電気鉄道、日本ケーブルテレビ連盟、A社(社名非公開)の計9者が回答を提出した。
26GHz帯における5G利用の意向と課題
調査結果によると、26GHz帯に対して多くの事業者が強い関心を示している。ドコモ、KDDI/沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイル、A社は、主に都市部やスタジアム、大規模イベント会場といった高トラフィックエリアでの通信容量確保や将来的なトラフィック増加への備えを想定している。
Sharing Designは、放送伝送や交通システム、業界別の5G通信基盤の整備に加え、携帯電話事業者向けの設備・周波数のシェアリング提供も検討中。ソニーワイヤレスコミュニケーションズは、ローカル5Gを活用した集合住宅向けインターネットサービスを展開しており、市区町村レベルでの柔軟なエリア構築を可能とする専用周波数の割り当てを要望している。
阪神電気鉄道は、地域BWAエリアのトラフィック対策を想定し、現状の「自己土地原則」に縛られない「地域割り当て」制度の整備に期待を寄せている。
周波数の割り当て時期については、複数の事業者が、新たな価額競争制度に関する十分な検討期間の必要性を指摘。楽天モバイルは、28GHz帯の利用実態を踏まえ、「喫緊の割り当てが必要な状況ではない」としつつ、既存免許人の移行措置によるブロック構成の統一化や、端末普及状況を考慮した慎重な制度設計を求めた。
一免許人あたりの周波数幅については、ドコモ、KDDI/沖縄セルラー、ソフトバンク、Sharing Designが、ミリ波の特性を踏まえ、諸外国の事例にならい400MHz幅での割り当てが望ましいと回答。楽天モバイルは200MHz以上を希望した。
地域区分では、KDDI/沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルが全国割り当てを希望する一方で、阪神電気鉄道は地域ブロック単位、日本ケーブルテレビ連盟は市区町村単位での割り当てを要望。地域特性に応じた価格設定の必要性もあわせて訴えた。
免許人の要件としては、サービス展開に必要な財務基盤、技術力、具体的な事業計画、災害時を含む保守体制の整備が共通して挙げられた。
また、周波数割り当ての実施方法については、「過度な価格高騰の抑止」「特定事業者への集中回避」が共通の課題とされ、ブロック数の確保や最低入札額の引き下げ、ラウンド制限の導入などが提案された。
公正な競争の観点からは、楽天モバイルや阪神電気鉄道などが、後発・中小規模事業者への配慮策(周波数枠の取置き、入札クレジット、専用ラウンドの設定など)の導入を求めた。また、ドコモは、ミリ波帯の特性上、面的なエリア展開には適しておらず、基地局数や人口・面積カバー率といったエリア展開要件は設けるべきでないと意見した。
そのほか、KDDI/沖縄セルラーは、新制度では入札額が重視されることから、エリア展開の進め方を落札者が柔軟に計画・実行できる仕組みを希望。Sharing Designとソニーワイヤレスコミュニケーションズは、通信モジュールや無線装置に対する開発支援や実証支援など、行政によるサポートの強化を要望した。
また、ソニーワイヤレスコミュニケーションズは、26GHz帯は依然として技術的なハードルが高く、ユースケースの検証や技術課題の整理が必要だと指摘。阪神電気鉄道は、ローカル5Gの広域活用が進まない現状を踏まえ、「まちづくり」に適した制度見直しを求めている。日本ケーブルテレビ連盟は、オークション制度に賛成する一方、ミリ波帯の需要の不透明さや、機器調達の困難さ、全国キャリアによる入札独占の懸念など、中小・地域事業者にとっての負担の大きさも指摘した。
40GHz帯における5G利用の意向と課題
一方、40GHz帯については、26GHz帯に比べて利用意向が限定的だった。
ドコモは「技術仕様や市場ニーズを見極めたい」とし、検討を継続。ソフトバンクは、26GHz帯と同様に産業用途やトラフィック対策を視野に入れつつも、製品対応が進んでいない点を踏まえ、26GHz帯の割り当て後に改めて検討する方針を示した。楽天モバイルは現時点では割り当てを希望していない。
周波数幅については、ソフトバンクが1GHz以上の全国割り当てを希望しており、26GHz帯と同様に「価格高騰の抑止」や「イノベーション阻害の防止」を求めている。日本ケーブルテレビ連盟も、26GHz帯と同様に地域事業者向けの帯域枠や市区町村単位での割り当てを要望した。
そのほか、KDDI/沖縄セルラーは、国際的な割り当ての進捗や端末対応の遅れを理由に、40GHz帯よりも26GHz帯の優先的な検討を提言。Sharing Designとソニーワイヤレスコミュニケーションズも、40GHz帯は事業者・ベンダー双方において対策の優先度が低く、技術課題の解決や研究開発が必要と指摘した。
阪神電気鉄道と日本ケーブルテレビ連盟も、26GHz帯と同様の課題(市場の不透明さ、対応機器の不足、地域事業者の負担など)を挙げ、現時点での積極的な活用には慎重な姿勢を示している。
