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KDDI、スマホとStarlink衛星の直接通信の実証に成功 衛星経由でSMSを送受信

 KDDIが、スマートフォンとStarlinkの端末を直接結ぶ実証実験に成功した。同種の実証は日本初。スマートフォンと衛星と直接通信サービスを実現する第一歩となる。

衛星経由でSMSをやり取り

 実証は、沖縄県の久米島町で行われた。一般的なスマートフォンとStarlinkの低軌道衛星を直接結ぶ。現在、KDDIでStarlinkの通信は、au基地局とその先のインターネット網やコアネットワークなどを結ぶバックホールとして使われている。離島での通信環境整備や災害で被災した基地局の迅速な復旧が可能などのメリットがある。

 この場合、Starlinkは基地局とその先の設備を結ぶために使われており、スマートフォンがつながる先は通常の地上にある基地局だった。今回、実証が行われた直接通信(Direct to Cell、D2C)は地上のStarlink端末が不要で、Starlink衛星とスマートフォンが直接つながる。衛星にはauやStarlinkのコアネットワークがつながっており、地上に基地局のない僻地でも空が開けていればスマートフォンを利用できるようになる。KDDI 松田浩路取締役執行役員常務CDOは「Starlink衛星一つひとつが基地局になる」と話す。

 23日に行われた実証では、通常の地上局と通信できない状態のスマートフォンを用意。端末には「通信サービスはありません」と表示されている。Starlink衛星が通過するタイミングで「SpaceX-au」と表示が変わった。SMSアプリでは、普段の利用と変わりないやり取りができることが示された。

 通常のStarlink衛星は高度550km程度を飛行しているが、直接通信用の衛星は340kmほどと、より低い高度で周回している。衛星の数は2024年1月に最初の6機が打ち上げられ、9月時点では200機。12月には300機を超える計画。

通過するStarlink衛星を可視化

2GHz帯サポートの端末で利用可

 Starlinkの衛星とスマートフォンを結ぶのは、2GHz帯(B1)の電波。大半のスマートフォンがサポートするバンドで、運用する側からも1.7GHz帯よりも使いやすいとして選定された。多数の端末がサポートするため、多くのユーザーがサービスを享受できるメリットがある。

 当初は、衛星通信を識別できるAndroid 15の「サテライトモード」が必要という。現段階では、対応する衛星の数が少ないことから衛星通信時にサポートするアプリはSNSのみとなるが、技術的にはデータ通信も可能という。過去に発売された端末にもサテライトモードを広げる検討がグーグルとともに進められている。具体的なサービスイメージは現在、検討段階だが「より多くの人が標準的に使える」かたちを模索していると松田氏は話した。

 仕組み上は日本全国をカバーできるが、地上局があるところではメリットが薄く基地局整備の難しい山間部や島嶼などを中心に展開するとみられる。Starlinkは激甚化する自然災害で復旧支援などで実績があり、米国ではハリケーンの被災地でD2CでのSMS送受信が特別に許可されるなどの例がある。

 制度面では、WRC-23(世界無線通信会議、2023年)で衛星との直接通信のための周波数共用の制度化に向けた動きが始まり、2024年に入ってからKDDIが国内でも携帯電話とそのほかの無線システムとの共用に向けた検討結果を提示するなどしており、年内にも省令改正などサービス化実現に向けた動きが広まる見込み。