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KDDIの24年度上期決算、売上高は2兆8557億円で前年+2.8%――ローソンとの提携やAIスマホの見方を髙橋社長が説明
2024年11月1日 21:19
KDDIは1日、2025年3月期第2四半期決算(4月~9月)を発表した。売上高は2兆8557億円(前年同期比+2.8%、通期予想進捗率49.5%)、営業利益は5731億円(同+2.3%、51.6%)となった。
営業利益では、前年同期からグループMVNO収入と楽天モバイルのローミング収入が減少したものの、通信ARPU収入や金融、エネルギー、DXなど主要事業が順調に推移した。
コンシューマー ARPUも増加
コンシューマー事業では、ユーザー1人あたりの料金「ARPU」が通信と付加価値の両方で順調に拡大している。ブランド別では、auで前年同期比+3%、UQ mobileで+7%。
また、UQからauへの移行数も前年同期比で2倍に増加している。スマートフォンの加入数も増加傾向かつ、auの解約率も四半期ごとに低下しており、「コアユーザーをしっかり維持できている」と代表取締役社長の髙橋誠氏は説明する。
今後、更なるARPUの最大化に向け、顧客基盤の拡大と付加価値創出を推進していく。その一環として、これまでの「優れたネットワーク体験」と「競争力のある料金プラン」に加え「ローソンとの提携」が本格的にスタート。
マルチブランド戦略と高品質なネットワークに加え、auの「マネ活プラン」、povoといった付加価値、新たな価値を提供し、多彩なニーズに応える体制を強化していく。
ネットワーク品質
サービスを支えるネットワーク品質について髙橋氏は「高速、高品質な5Gエリアを拡大し、体感品質ナンバーワンの実現を目指す」と説明。5Gネットワークを構成する「Sub6」(専用周波数)と4Gからの転用周波数(NR)を重ね、最適なエリア展開を進めている。今後は、近接したSub6周波数に対応するMassive-MIMOやキャリアアグリゲーションを活用し、さらなる快適、高速通信を提供していく。
また、低軌道衛星によるブロードバンド回線サービス「Starlink」とauスマートフォンが直接通信できる取り組みも進めている。実証実験はすでに成功しており、年内の提供開始を目指して進められている。
ローソンとの連携
ローソンについて髙橋氏は「リアル×テック・コンビニエンス」を掲げ、Ponta経済圏の拡大や社会課題の解決をローソンと共に進めていくと説明。データとAIを活用し、新しいコンビニ体験とDX化を進め、顧客拡大や店舗オペレーションの30%削減などを進めていく。
この連携を通じた取り組みとして、10月2日に「auスマートパスプレミアム」を「Pontaパス」にリニューアル、ローソンで利用できるクーポンを拡充した。開始から2週間でデイリーアクティブユーザー数は約1.5倍に増加しており、好調なスタートダッシュを切っている。髙橋氏によると、ローソン店頭での加入も飛躍的に増えているといい、新たな契約チャネルが加わったことで、加入者が増加、クーポンによりローソンでの購買も増加する好循環が始まったと説明する。
このほかも、ローソン店舗を活用した通信や付加価値サービスの提案機会を拡大させていき、KDDIの成長に寄与していくとしている。
地域課題解決の面では、10月に石川県と包括連携協定を締結、ローソン店舗が地域の防災拠点となるべくドローンポートやStarlinkを配置し、非常時に活用する取り組みを進めている。
法人事業はAI活用をメインに
法人事業では、IoTやデータセンターなど高利益率の事業が成長を支え、上期の売上高は6724億円で前年比+13.1%と順調に拡大している。
IoT事業の拡大基盤となる累計回線数は、9月期で4633万回線と大幅増加を達成、データセンターの売上高も前年比+12.1%の650億円で、生成AI事業への対応などさらに拡大させていく。
ビジネスプラットフォーム「ワコンクロス(WAKONX)」では、小売業のDXを推進。2025年度に移転する新本社に設置される「リアルテックローソン」第1号店では、AIによるスマホレジやAI商品補充、清掃などの店舗オペレーションを支援するロボティクスを導入。ユーザーに新しいコンビニ体験を提供すると共に、得られたノウハウを蓄積し、業界全体のDXを進める。
クラウド基盤では、大規模計算基盤に対応できるデータセンターを、シャープ亀山工場跡地に構築。新しいAIデータセンターとして設立するほか、八王子や小山のデータセンターを含む全国8拠点を活用し、効率的に構築を進める。
株式分割と自己株式取得
持続的成長に向けた資本政策として、株式分割と自己株式取得について髙橋氏は説明。
新たな個人投資家層の拡大を目的に、1株を2株に分割し、投資単位を引き下げる。
1000億円を上限とする市場買付による追加自己株式取得も実施され、2025年3月期の自己株式取得総額の上限は4000億円になる。
主な質疑
主な質疑を紹介する。回答者は、代表取締役社長の髙橋誠氏。
――11月からUQのコミコミプランでデータ容量が拡大されたが、ARPUが下がることはないか? auへの移行が減少することはないか?
髙橋氏
設計上は、料金をそのままにしているので、ARPUは上がってくれればいいと思っている。ただ、中容量帯の競争がホットになっているのは事実。セカンドSIMによる行き来も結構激しくなっているので、今回いち早く対応した。コミコミプランは、かなり競争力のあるプランであり、固定回線のセットを条件にしていないので、これらもプラスに効いてくるのではないか。
povoでも競争力あるプランを設定しており、この後の年末商戦をしっかり戦っていこうという思い。
――auマネ活プラン、導入から1年過ぎたが、そろそろ何か出てこないか?
髙橋氏
次の手は当然考えている。マネ活プランは非常に調子がいい。他社もやってきているので、次の手を考えている。
――堺のAIデータセンターの進捗は?
髙橋氏
おおむね順調。行政対応や電力契約などを今進めているところで順調に推移している。今のところクリティカルな問題は起こっていない。
――NTTとトヨタ自動車がモビリティAI基盤を共同で構築する発表があった。髙橋氏の受け止めは?
髙橋氏
実は事前にトヨタ自動車から聞いていた。
トヨタの車では、世界3000万台以上でKDDIのネットワークを使ってもらっており、街や家、人、車がネットワークでつながる社会を見据えた研究開発をトヨタとしており、モビリティAI基盤での取り組みでもKDDIとの研究成果を動かしてもらえると聞いている。KDDIも積極的に参加させて頂きたいと思う。
NTT側にも会う機会が最近あるので、KDDIも参画したいとお願いしたいところ。
(モビリティAI基盤については)日本全国に分散した計算基盤を構築するという話なので、KDDIのAIデータセンターを活用できるのではないか。オープンなプラットフォームを活用したアプリケーションの参画や、途切れない通信基盤の構築という話があったので、5Gや衛星などを使ったハイブリッドのネットワークにKDDIwも参画させてもらいたいと思っている。貢献の可能性は十分にある。
――端末出荷台数が増えているが要因は? オンデバイスAIが登場しているなか、総務省のガイドラインでミリ波対応端末の割引を増やそうという話が出ている。受け止めは?
髙橋氏
オンデバイスAIが使える端末を積極的に販売、機種変更してもらいたいと促進しているので、動き自体はいいこと。ガイドラインについては、他社や政府などの動きを見ながらしっかり対応していく、準備を進めているところ。
今回のガイドラインでは、ミリ波を搭載するとチップセットの値段が上がってしまうので、その分インセンティブを付けてもいいという理解でいる。一方で、開設計画に基づいたミリ波の整備をきっちりやっているが、正直言ってトラフィックがほとんど乗ってきてない状況。端末自体のラインアップが少ない、特にiPhoneに対応端末がないのが大きな課題。これが続くと、韓国のようにミリ波は使わない! ということになるので、ガイドラインの活用や端末メーカーへの働きかけをしっかりとやっていかないと広がらないと思う。
AIスマホについては、本当にやるべきだと思っている。昔から付加価値がある端末をユーザーに届きやすい仕組みを作るべきで、たくさん使ってもらうことでトラフィックも上がり、その対価が増え、それを新たな投資にする好循環ができていく。オンデバイス型のAIは、ある意味モバイルインターネットの次に来た新しいトレンドなので、しっかりと乗れるように頑張っていきたい。
――楽天モバイルが、コンシューマー向けのAIサービスを発表した。KDDIとしてコンシューマー向けのAIに対する考えは?
髙橋氏
楽天の取り組みは、見習うべきところがたくさんある。
これからの時代はユーザー接点をどうやって再構築していくかという競争にあると思っている。ソフトバンクならPayPayで、KDDIにもau PayやPontaパス、コミュニケーションツールとしてRCSがiPhone対応になるので、新たな展開になると思う。
そのなかで、どうやってAIを組み込んでいくかというのが次の勝負で、そのAIをオープンなものか、独自のものか、など戦略次第だと思う。積極的に取り組んで行く。
下期では、RCSが1つのポイントだと思っている。iPhoneに採用されること、衛星とスマートフォンとの直接通信や生成AIとも親和性がいいので、これらを組み合わせて面白いことができないかなと思っている。
――他社(ドコモ)の社長がエンタメ重視の人に代わったが、髙橋社長は思うところはあるか?
髙橋氏
エンターテインメントは非常に面白い分野。この領域においては、我々にとってもローソンチケットの「ローチケ」は非常に親和性の高い存在で、加えて先日エイベックスから「ライブポケット」という会社を譲り受けた。オンラインチケットの会社で、かなりの市場シェアを持っている。
ライブポケットは特にインディーズアーティストがチケッティングに頻繁に利用するオンラインチケットサービスで、インディーズではシェアが約50%を占めており、非常に強いポジション。
日本では電子チケットの普及が遅れているが、ライブポケットはその点でも先進的なサービスを提供しており、ライブポケットはQRチケットが普及する海外とのギャップを埋める可能性があると考えている。
――スマートフォンと衛星の直接通信、苦労した点は?
髙橋氏
既存の携帯電話が使っている周波数を活用するため、グローバルで整理しなければいけないところに時間を要した。総務省も非常に前向きに対応してもらい、なんとか年内のサービス開始ができるようになった。
現在最終調整中だが、全機種一斉に対応するのではなく順次入ってくる形になる。
衛星との直接通信は、米国フロリダで、Tモバイルが緊急的に活用し12万通以上のSMSがやりとりされ、社会的にも効果があったと聞いている。始めてみないとわからないが、全く電波がないところでもメッセージが送れるというのは、非常に可能性があると思う。