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日本初の「スマホと衛星の直接通信」、auの「スターリンクダイレクト」の疑問をまとめてみた

 KDDIは、auの新サービス「au Starlink Direct(スターリンクダイレクト)」を発表した。提供も同日に開始され、スマートフォンが空の上にある衛星と直接つながるというものだ。

 空が開けている場所であれば、日本国内の海上や山の中といった圏外でもスマホが使える。また、大規模災害発生時で携帯電話基地局がつながらない場面でもメッセージをやり取りできるようになる。

 一方で、これまでにない新たなサービスだけに「これはどうなるの?」という疑問も多そうだ。本稿では、ひとまず現時点で多くの方が抱きそうな疑問点と、それに対する情報をまとめた。

対応機種は?

 KDDIが10日に発表した対応機種は、iPhoneとAndroid、あわせて50機種。

 iPhoneでは、iPhone 14シリーズ以降で利用できる。

 一方、AndroidはGalaxyシリーズ約20機種、AQUOS sense8/9、Xiaomi 13T/14Tなど幅広い。タフネススマホで、auだけで販売されている「TORQUE G06」も対応機種にラインアップされていることは、ユーザー層にマッチした形と言えそうだ。

ハイエンドモデルだけ?

 こうした最新機能は、いわゆるハイエンドスマートフォンから導入されることが多い。

 確かに、iPhoneは、廉価版のiPhone SEシリーズは対象機種に含まれていないものの、2022年発売と少し前のモデルである「iPhone 14」シリーズで利用可能。また、比較的手頃な価格帯となる「iPhone 16e」でも利用できる。

 また、GalaxyシリーズではGalaxy A54、シャープのAQUOS sense8/9、ソニーのXperia 10 V/VI、シャオミのRedmi Note 13 Pro 5G/Redmi 12 5Gといったミドルレンジ、あるいはエントリーモデルでも利用可能。Androidの衛星モードに対応していることが、条件のひとつだという。

 いずれも対応機種は、ひとまず動作確認がとれたもの。今後拡充される見込みだ。

SIMフリースマホは?

 対応機種の多くは、いわゆるオープンマーケット版(どの携帯電話会社でも使えるもの、かつてはSIMフリー版と呼ばれていた)がラインアップされている。

 しかし、au Starlink Directの対応機種はいずれもauから販売されているモデルが対象。

 今後の拡充についてはメーカーと連携していくという。

スマホを買い替える必要は?

 対応機種があれば、買い替える必要はない。

 衛星通信サービスでは、専用の携帯電話端末などを用いることもあるが、「au Starlink Direct」は普段使っているスマホで、そのまま繋がることが特徴のひとつと言える。

料金は当面無料

 今回の発表で、KDDIでは「当面無料」としている。これは、今後の選択肢として、有料化する可能性があることを示唆するもの、と受け止めたくなる。

 しかし、この4月にKDDIの新たな社長へ就任した松田浩路氏は「安心につながるサービスだと思う。まずはauのお客さまへ、広く使っていただきたいという思いを込め、当面無料としました。これ単品でサービス収支を取ろうと考えているわけではない。auのメインブランドの価値のひとつとして捉えてほしい」とコメント。

松田氏

 たとえば日本より先行してスターリンク衛星とスマホとの直接通信サービスを導入済みの米T-mobileでは「7月までベータ版として無料、7月以降は最上位の料金プランに追加料金なしで含まれる(それ以外のプランでは月額15ドルで追加可能)」としている。

 今回のKDDIでの国内初サービスも、松田新社長のコメントからは、auの特徴のひとつと位置づけていることがわかる。UQ mobileやpovoでの利用については「検討していく」(松田氏)とのことで、ひとまずはauユーザーだけのサービスとなる。

何に使える? どうやって使う?

 衛星経由で使えるのはテキストメッセージだけ。RCSと呼ばれるSMSの進化系のサービスとSMS、そしてiPhoneのiMessageだ。

 RCSは、Androidの場合、Googleメッセージというアプリで使う。「+メッセージ」というサービスもRCS対応だが、「au Starlink Direct」では使えない。

 iPhoneで使う場合、最新OSへバージョンアップし、「設定」→「モバイル通信」→「モバイルデータ通信のオプション」で衛星通信をオンにする。

 Androidでも最新OSへバージョンアップし、GoogleメッセージをSMSの標準(デフォルト)アプリに設定。Googleメッセージ右上のアイコン→「メッセージの設定」→「RCSチャット」をオンにする。その上で、データローミングもオンにしておく。

使える場所

 au Starlink Directは、基本的に「圏外」で使う。山間部、あるいは海上(日本の領海)で、屋内や地下ではなく、空が見えている屋外で利用できる。

 衛星が高速に動いており、衛星1基は、地上からは10分程度しか見えないという。ただ、その直接通信対応のスターリンク衛星が続々と日本上空を通り、既存のauの周波数を用いて、サービスエリアが形作られている。

 周波数はBand 1と呼ばれる2GHz帯を用いる。干渉について、詳細は明らかにされていないが、地上に影響しないよう設計されているとのこと。

GoogleメッセージでGeminiとチャットすることもできる

モバイルデータ通信をオフにしたら?

 では、たとえばスマートフォンの設定でモバイルデータ通信をオフにしたらどうなるのか――この疑問にKDDIは「サービスエリア内ではデータをオフにしても電話が使えるなら基地局からの電波が届いており、スターリンクとの通信はできない」と回答。

 これは、スマホがデータ通信できない状態でも、基地局からの信号は受け取っているため。逆に言えば、そうした信号のやり取りができなくなればスターリンク衛星と直接繋がる。もし、大規模災害などで停電が続いたり、倒壊したりして、基地局が使えないことになればスターリンクで繋がる、ということになる。

使えるのはメッセージだけ? MVNOは?

 今回の発表では、「auのサービス」とされており、同じKDDIのサービスでもUQ mobileやpovoでの利用は、先述したように今後、検討される。

 格安SIMなどとも呼ばれてきた、au回線を用いるMVNOについては今回の発表では触れられていない。KDDI広報によれば、現時点ではau回線のMVNOユーザーは使えないという。

 このほか、まずはテキストメッセージで始まった「au Starlink Direct」だが、10日の発表の最後に、「将来的にはデータ通信もできるように準備をすすめている」ことが明らかにされた。今夏以降に対応する予定で、それまではWebブラウジング、動画アプリ、SNSアプリなどは利用できない。