石川温の「スマホ業界 Watch」
“日本の活性化”につながるカギ、スマホの料金プランは値上げできるのか
2025年4月4日 12:12
固定電話・通信に値上げの波
KDDIは7月1日から、auひかり電話の月額料金を改定する。これまで月額550円で提供されていたが、月額770円に「値上げ」となるのだ。さらにNTTドコモも7月1日より、5Gや4Gネットワークで使える家庭向けルーターサービスである「home 5G プラン」を月額4950円から月額5280円に改定する。
ドコモは「サービスを安定的にご提供するために必要な運用コストが高騰しており、今後のサービス品質維持のために、料金改定が必要と判断し実施」と説明している。KDDIの場合、auひかり電話の料金を値上げする一方、月額770円で提供していた「迷惑電話撃退」オプションを無料にすると同時に発表している。一部のオプション料金を無料にするというガス抜きを行うことで、批判の声をかわしたかったのだろう。
ただ実際、どれだけの効果があるのか、いまいち見えにくい「迷惑電話撃退」オプションを使っているユーザーは限定的なのではないか。無料にしても収入に影響の少ないオプションと引き換えに、auひかり電話の月額料金という本丸を値上げした感が強い。
ドコモの値上げを受けて、MVNO関係者は「まさかドコモから値上げをしてくるとは思わなかった」と驚きを隠さない。ただ、今回、業界最大手のドコモが値上げという英断を行ったことで、他社も追随する可能性は充分にあるだろう。
コスト上昇もスマホの料金プランは据え置き
KDDIの髙橋誠会長は、MWCでのグループインタビューで「総務省から販売代理店や通信関連の建設企業にヒアリングをしなさいと言われている。それぞれ支払いを上げる必要はないのかと聞いてくれと。政府としては物価の上昇はある程度、ポジティブな話なので、コストが上がっているのであれば支払いに転嫁すべきという話」と話した。
続けて「実際、KDDIとしても電気代が上昇している。だが、日本の通信料はアメリカの半額以下になっている」と収入が伸び悩む一方で、電気代の負担が上がっている点を嘆く。
ソフトバンクの宮川潤一社長も、AIデータセンターへの電気代を心配しつつ「一番心配なのは取引先でベースアップできているかどうか。好循環になるように正常化しなくてはいけない」と危機感を募らせる。
ただ、光回線にセットしている電話の基本料金や、ホームルーターの通信料金は値上げできても、メインであるスマホの料金プランを値上げできるかと言えば、かなり微妙だ。髙橋社長は「単純な値上げはない。工夫は絶対に必要。我々はかつて『さよならau』を言われたこともあった。ユーザーのほうを見ずに進めると絶対問題になる」と語る。宮川社長も「いまは動く気は無い」と値上げには慎重な姿勢を示した。
利益と投資の好循環で日本の産業活性化に期待
4月2日、米国のドナルド・トランプ大統領が「相互関税」を発表した。日本に対しては24%となり、アメリカのへの輸出が多い自動車産業に大きなダメージを与えると予想される。
そんななかだが、日本の通信業界はこうした相互関税の影響はほとんどないと思われる。本来であれば、もっと日本の通信業界が、日本で設備投資を行い、ネットワークによる新サービスを提供し、日本のさまざまな産業を活性化させるべきだ。
髙橋社長は「衛星との直接通信や5G SAなどをもとに新サービス、新しい価値を提案していきたい。その価値を理解していただき、価値に見合った料金を設定できるのが一番ハッピー。我々は利益が出た分、どんどん投資に回していく。かつて、契約者数や通信量の上昇に合わせて通信会社の収益がドンと増えた。でも、その利益を投資に回したことで、世界で圧倒的な通信品質を実現できた」と振り返る。
宮川社長は「5Gへの投資を『こんなものか』と言われることが悲しくて仕方ない。日本はだた安いだけの国になってしまった。開発力が本当に落ちた」と嘆く。
競争環境が激しい中、各キャリアは主力のスマホで料金値上げを実現できるか。通信料収入を増やし、社員や取引先の給与を増やし、設備投資による新サービスの拡充で日本のあらゆる産業を元気にさせられるか。各キャリア社長の手腕に期待がかかっている。




