ニュース

KDDIが増収増益の決算発表、通信収入が増収に反転――マネ活プランが好調

 KDDIは、2024年3月期第2四半期の決算結果を発表した。売上高は2兆7790億円、営業利益は5603億円と前年同期比で増収増益となった。

KDDI 髙橋氏

増収増益の第2四半期

 通信ARPU収入とDX領域がそれぞれ8億円と54億円増だったほかエネルギー事業が95億円増などで、楽天モバイルからのローミング収入減少をカバーした。

 通信ARPU収入は第1四半期の29億円減から37億円増に転じたほか、注力領域であるDXが堅実な成長を見せた。ID数は3094万と前年同期比で28万増、前期比でも4万増と増加基調を見せる。

使い放題プランが伸びる

 KDDI 髙橋誠社長によれば、9月にスタートした「auマネ活プラン」は使い放題MAXプランユーザーの3人に1人が加入しており「好調な滑り出し」といい、ネット配信サービスの需要の高まりを使い放題プランで受け止めると語る。

 料金プランを改定したUQ mobileは中~大容量プランを選ぶユーザーが増えた。7割ほどがコミコミプランとトクトクプランを選択しており髙橋氏は「非常に良いかたちで推移していると考えている」と評価した。

 5Gネットワークは10月末時点で鉄道47路線、商業地域384エリアに拡大。山手線の全駅で5Gが利用可能で通信速度は上り/下りともに1位とする。基地局トラフィックの監視・分散自動化のほか、SNSでのユーザーからの声なども含めてデータを活用した品質向上の取り組みを続ける考えが示されたほか、2024年内にはStarlinkとスマートフォの直接通信サービスでメッセージ送受信開始を目指す。

 au PAYカード会員数は10月に900万会員を突破。au PAY会員数も3373万と各種サービスは順調に成長しているという。付加価値ARPUの収入増に大きく貢献しているのが金融サービスでその規模も順調な拡大を示した。

 マネ活プランとの相乗効果で、au PAYカードの店頭加入率が1.2倍になるなど、通信と金融の組み合わせが効果をもたらした。「通信と金融の好循環にある。auマネ活プランなどでauの魅力化を推進し、通信ARPU増加と解約率の低減を目指す」としたほか金融事業の加速にも力を入れるとした。

IoT事業が伸長、コネクテッドカーで新会社設立へ

 ビジネス領域では、上期は想定通りの進捗と評価。IoT事業が増益の要因となった。燃料費の高騰などマイナス要因があったが、下期では解消される見通し。

 通期ではNEXTコアを中心とした事業成長やアルティウスリンクなどの効果で前年同期比2桁成長を目指す。特にIoTでは、ソラコムが好調を記録。IoT事業の牽引役であるコネクテッドカーでは、海外メーカーの拡大を見据え、新会社も設立する。

 髙橋氏は、海外の自動車メーカーとの契約時には英語で交渉が進むことや動きやすい体制をつくるためなど、海外拠点の必要性を示す。当初、米国に拠点を設けてグローバルで広げたいと狙いを明かした。メタバースを展開する「αU」は法人向け需要が好調。Web3サービスも拡充する。

NTT法見直しについて訴え

 髙橋氏は、自民党内で議論が進むNTT法見直しについての意見をあらためて主張した。

 KDDIらが廃止の反対を訴える背景には、公益性の高い仕組みを持ったままでのNTT法廃止(=完全民営化)は、公正な競争環境が阻害されるなどの危険性や現在は同法で認められていない、不採算地域での電話サービスの撤退が可能になるなどの懸念がある。

 髙橋氏は、当初NTT法見直し議論が防衛財源捻出の一環から始まったことに触れ「言い方が悪いが、話がすり替わっているような気がする」と違和感を明らかにした。当初の防衛財源の話が聞かれなくなっており「この話(防衛財源)がないならこの話(NTT法見直し)はなくていいんじゃないかと、本当は思う」と心中を吐露する。

 NTTが主張する研究開発の開示義務は、条文に「成果の普及」としか書いていないと指摘。開示義務とするのは無理やりとも語り、廃止ではなく法改正で十分対応できると見解を述べた。

 このほか、NTTによるNTTドコモの完全子会社化について、2001年にNTTによるドコモの出資比率を低下させていくという閣議決定の方向性を無視したもので、NTT法による抑止がなくなれば、ふたたびグループ再統合の流れへの回帰が止まらなくなるのではと危機感を示した。髙橋氏はNTT法廃止の議論をするのであれば、残すべき規定をどう法律で担保していくのかをしっかり議論していく必要があるとも語った。

 10月19日はKDDIやソフトバンク、楽天モバイルのほか全国180の自治体やCATV事業者などがNTT法廃止の反対を訴える要望書を自民党と総務大臣に提出している。

質疑応答

――ドコモがマネックス証券を子会社化したが、脅威になるか?

髙橋氏
 正直言って驚きました。証券を強化されたわけですが、そのほかにも銀行だとかいろいろな領域は必要だろうと思いますので、これからまだまだ強化されるということは、我々としては非常に警戒しなくてはいけない。

 金融にこれほど力を入れている通信事業者がある国はあまりありません。通信事業者が金融との連携でサービスを伝えるということが4社で進んできました。ユーザーにとっても非常に良いことだと思いますし経済圏の拡大という課題もあります。この領域で4社で競い合い、よりよいサービスを提供するのが重要と思いますので、私としては歓迎かなと思っています。

――下半期のARPUの動きはどう見ているか?

髙橋氏
 上半期には7381億円まで来ました。前年比でやっと8億円のプラスになってきました。もうちょっといってもいいかなと本当は思っているんですが、反転方向にキたのは非常に良いことだなと思います。

 第2四半期で比較すれば、37億円程度のプラスです。そのときの状況で若干ブレるかもしれませんが、第3四半期も第4四半期もその傾向に持っていきたいと思います。テレビで見られたスポーツが今は全部通信で見られる世の中になりました。甲子園も予選からやるとスマホだけで見られる。高校バレーやサッカーも予選から配信しようとしてますが、それだけでトラフィックが上がります。

 トラフィックが上がるのもそうですが、ユーザーニーズに沿ったかたちで使い放題MAXプランやデータをたくさん使っていただけていると思うので、この傾向を続けて右肩上がりの数字をつくっていければと思います。

――楽天モバイルがプラチナバンドを取ったが受け止めは?

髙橋氏
 楽天モバイルがプラチナバンドを取ったのは、ある意味既定路線。我々の既存周波数が楽天モバイルのものに置き換えられるわけではなく、新たな3MHz幅というところにプラチナバンドの議論が集結してくるということは非常に良いかなと思います。

 開設計画をみましたが、すごい遅いペースだなと。もう少し早くやられると思ってましたが。楽天モバイルの(アンテナなどを取り付ける)鉄塔を見ると結構ギリギリで作っているので、あそこに700MHz帯のアンテナを取り付けるのは結構苦しいのでは。たぶん700MHz様の鉄塔を新たに建てなくてはいけないエリアも増えてくると思うので、投資・建設にはちょっと時間がかかるのかなと感じました。

――楽天モバイルからのローミング収入はどうなるのか?

髙橋氏
 600億円ぐらいの減収を予定していました。ローミング契約を若干変えましたので、200億円程度改善されるので、今期の減収額は400億円くらいかと思います。

 ただし、プラチナバンド(獲得)などをある程度見込んで契約の内容を詰めました。プラチナバンド獲得によるローミング収入減の影響はないように設計したので、大きな影響はないと思っていただいて大丈夫です。

――ドコモやソフトバンクが生成AIについて発表している。KDDI自身での取り組みは?

髙橋氏
 生成AIについては、社内でも議論していて、まとまったら話したい。諸外国でも国内でもいろいろな戦略に振れているのであまり拙速にことを決めてはいけないなとは思っています。

 イベントのなかで生成AIをやっているメンバーや総合研究所のメンバーも集めながら10月に生成AIの新組織を作りました。社内ではChatGPT 4.0ベースのものを使えるように環境も整備してあり、6割以上の人が毎日使っています。社内での活用はこれから進んでくるものと思います。

 いかにLLM(大規模言語モデル)をファインチューニングしていくかが大事になりそうです。そのためのセンターを作らなくてはいけないなということで、検討しているところです。

――端末値引き一律4万円規制に反対した理由は?

髙橋氏
 ガイドラインが変更されますが、主目的は「転売ヤー」の締め出し。一律2万円から端末価格に応じて2~4万円の値引きということになり、転売屋が活動しづらくなるのでこれはこれで良いかなと。

 一方で流動性を上げるにはもう少しの工夫があってもいいんじゃないかと我々は提案したんですが、決まったことなのでこのなかで運用していきます。ちょっと懸念しているのは本当にこれで端末の流動性が保てるかということです。状況を見ながら対応していきたいと思います。

――ソラコムの上場申請を一度取り下げたが、現在の状況は?

髙橋氏
 今日の段階でコメントできることはありません。ただひとつ言えるのは、ソラコム回線は600万以上で米国と欧州に拠点を作り順調な拡大をしていることは間違いありません。そのなかでIPO(新規上場)という可能性があれば当然検討します。

 理想としては、ソラコムがグローバルで挑戦できるような土俵をつくりたい。そのひとつの方法論がIPOだとすればそれも含めて検討したいと思います。

――端末販売数の受け止めは? iPhoneとPixelの手応えについても聞きたい

髙橋氏
 第2四半期は2022年で154万台のところが、2023年は136万台と弱含みになっているなと思います。5Gの浸透率はやっと60%を超えてきたので、もう少し流動性を上げていきたいと思います。それに伴いガイドラインがどう影響するか、若干懸念を持っているんですが端末に応じた2万円~4万円(の値引き)をうまく適用してこの活性化を進めたいです。

 個人的には、スマートフォンのかたちがAIによりちょっと変化があるような気がします。AIはクラウドベースのものがすごくいわれますが、ユーザーからするとスマートフォンのなかでAI機能によって何ができるかというのが結構興味があるところだと思います。

 ここの機能(AI)は久しぶりにスマートフォンに対してはプラスの機能だなと思っているので、とくにAndroidもPixelでは非常に鮮明になってきましたし、こういうものを皮切りに来年変わってくればいいかなと。

 iPhoneは今年(売れ行きが)結構良かったですよ。予約も前年比でだいぶ上回る数字を販売できていると思いますので、そういう意味では比較的好調に推移できています。

――マネ活プランを提供したが、その特典の規模感はどうか? ARPUにどう貢献するかを教えてほしい。

髙橋氏
 マネ活プランの金融への影響は銀行口座開設数は4.8倍、クレジットカードで1.2倍、ゴールドカードで1.5倍と金融への影響が大きいです。auへは(使い放題)MAX率の向上と解約率の抑止につながればいいなと思っています。

 個別に開示していないが、au解約率がどんどん下がってきています。MAX比率が上がりau解約率が下がるのは非常に良い傾向で、このあたりに金融関係がすごく寄与しているなと思っています。

 金融の事業の捉え方が各社で違います。我々はスマートフォンプランにバンドルしたものをやっていきたいと思っていますが、ソフトバンクさんはPayPayで誰でも使えて上場も狙っていると。楽天さんのポイント(変更)を見ているとどうもオープンより通信との連携に走り出しだなという感じがします。

 そういう意味では我々のとった戦略は間違いじゃなかったかなと今思っているところです。このあたりは2022年~2023年の注目ポイントかなと見ています。

――楽天がポイント付与で変更があった。一部ユーザーではポイント減となるがそこでの取り込み施策は?

髙橋氏
 他社サービスなのであまり言えませんが……ネットを見ているとあまりポジティブな反応ではなかった感じがします。さきほどのとおり、楽天モバイルとの連携を強めていくということだと思います。ここは正直言ってチャンスにしていかなきゃいけないなと思っています。

――オンライン限定販売というAndroid端末があるが、売れるのか?

髙橋氏
 店頭でのラインアップを増やすとコストがそれなりにかかってきます。ラインアップを減らすのももったいないので、オンラインだけでも販売することで、ラインアップをキープしていると捉えてもらえれば。

 実はオンラインだけでもしっかりと売れていて、そこが非常に良いとなってくればまたショップでも扱うことになるので、バリエーションのひとつと捉えてもらえればいいかと思います。