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ファンとともに走る「au TOM'S」、KDDIがモータースポーツに取り組むワケ

 TGR TEAM au TOM'Sの36号車が決勝で勝利を飾った「2023 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJIMAKI GROUP FUJI GT450km RACE」。本誌は今回、TOM'Sとパートナーを組むKDDIのモータースポーツへの取り組みに迫った。

 KDDIが、主にトヨタ車向けのアフターマーケットパーツなどを手掛けるTOM'Sのレース活動へスポンサー活動を開始したのは2016年から。以来、TOM'Sの36号車はauのロゴをまとったマシンでSUPER GTへの参戦を続けている。

撮影:奥川浩彦

なぜKDDIがモータースポーツ?

 KDDI ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部の佐伯凌汰氏は、同社がスポーツ活動へ取り組む意義を語る。「スポーツを通してユーザーを接点を作ることは大事」と説明。CMや店頭では届かない部分もあるとして「TOM'Sのファンの力で接点を増やしていきたい」という。

KDDI 佐伯氏

 観客のなかには、ネイルをオレンジのauカラーにしたり、auから発売された高耐久スマートフォン「TORQUE」のユーザーがいたりと「店頭でもなかなか会えないような方々に応援していただけるのは、au TOM'Sとして一緒にやっているからかなと思う」とその実感を語る。

 携帯電話の会社というイメージの強いKDDIと自動車レースに結びつきを感じられる人は少ないかもしれない。さまざまなスポーツがあるなか、なぜKDDIはモータースポーツを選んだのか。そこには同社の源流が大きく関係している。

 KDDIは2000年、第二電電(DDI)とケイディディ(KDD)、日本移動通信(IDO)の3社が合併したことにより誕生する。このうち、KDDとIDOの株主にトヨタ自動車がいた。

 佐伯氏は「自動車電話など、自動車と携帯電話、通信は切っても切れない関係性がある」とも語る。現在もKDDIとトヨタの関係は深く、KDDIがモータースポーツでの活動をすすめるひとつの理由となっている。

独自の取り組みでファンを魅了

 au TOM'Sで行われているファンサービスはどんなものか。代表的なものには「ファンシート」がある。平たく言えば、au TOM'Sのファンが集って一緒に応援できる施策。

ファンシートで観客とサーキットクイーンが一緒に応援している様子
撮影:奥川浩彦
撮影:奥川浩彦

 au TOM'Sではサーキットクイーンがシートまで来て一緒に応援できるといった試みも行われている。もちろん、オリジナルの応援グッズも用意されている。

 一方で、サーキット以外でのファンコミュニケーションも。Webサイト「au × MOTORSPORT」ではレースの日程や結果掲載のほかドライバー・サーキットクイーン紹介などSUPER GTに関連するコンテンツを閲覧できる。

au TOM'Sのグッズ引き換えをするファン
au TOM'S サーキットクイーン 左=辻門アネラ、右=央川かこ

 さらにリアルイベントも実施。KDDIのコンセプトショップである「GINZA 456」では、ドライバーを交えたファンミーティングを実施した。

次なる一手は

 TOM'Sとしては、KDDIとのタッグにどう向き合っているのだろうか。TOM'S 代表取締役社長の谷本勲氏はこう語る。「KDDIは全国民に対して認知度が高い。ファンの方からの親しみやすさが格段に変わったと思う」。

TOM'S 谷本氏

 “ファンづくり”という観点でもauというブランドは大きい。ファンシートやファン感謝祭など、auと一緒につくりあげてきた活動を例示しながらKDDIを「ファンづくり活動を一緒にする良きスポンサー、良きパートナー」と語る。

 TOM'Sは今後、どんな展開を見せてくるのか。谷本氏は「リアルなイベントができるようになった。リアルイベント企画は今まで以上に積極的に(KDDIと)ご一緒したい」としたほか、KDDIのICT技術を活かし「コンテンツ作りでもご一緒できることが多いのでは」と見解を示す。続けて「eモータースポーツは、eスポーツのなかではリアルとデジタルの境目が少ない。デジタルのチャンピオンがリアルのトップカテゴリーにいけるという世界観も。そういう部分の連携を一緒にやっていければと思う」とした。

 KDDI 佐伯氏によれば、30代~の男性が主なファン層という。もともとのクルマ好き、ドライバーのファン、サーキットクイーンのファン、長年のauユーザーなど、au TOM'Sのファンになった経緯はさまざま。

 一方でまだ、KDDIの社員であってもau TOM'Sを知っているわけではないとも語る。佐伯氏は「さらに新しいファンを作りたい。モータースポーツの興味のない方や子どもたちに対してなにかできないか。策を打ち出したい」と今後の活動への熱意を示した。

 自動車の高価格化や経済停滞など、自動車を取り巻く環境は厳しく自動車やモータースポーツが好きという人は、かつてほど多くないかもしれない。一方で、取材当日の富士スピードウェイは、小さな子供を連れた家族連れから若年層の男女などで盛況を博していた。レース外でもグッズを買い求める人やマシンの展示などに集まるファンが溢れているあたり、自動車・モータースポーツもまだまだ夢のある世界を作り続けているようだ。KDDIのSUPER GTを通じた活動も、将来のクルマ好きを生み出すことにつながっていくかもしれない。

撮影:奥川浩彦