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ゲーマーからレーサーを育てる、KDDIがモータースポーツ分野で取り組み

 KDDIは、アイロック、VIE STYLE、レーシングヒーローと共同でゲーマーからレーサーを生み出すための実証実験を実施した。

実証に用いられた「トヨタ・ヤリス Cup Car」

ブレインテック×スポーツ

 実証は脳科学とICT技術を組み合わせる「ブレインテック」と呼ばれるものを用いた取り組み。脳の認知力を高めてレースゲームの大会「eモータースポーツ」のドライバーのドライビングテクニック向上を目指した。

実証中、実車で走行する様子(静岡県・富士スピードウェイ)

 プロスポーツの世界では、ゲームを活用したトレーニングが増えているが、モータースポーツにおいては実車で感じられるGの変化がないなど、トレーニングにはならないという指摘もあるという。

 一方で、脳科学分野ではプロスポーツ選手のスキルと脳の認知機能には関連があるとされていて、プロドライバーの反応速度は一般人よりも速いという報告がある。このことから、リアルタイムにセンスの脳波を可視化、目的の脳活動に近づけるという「ニューロフィードバック」により、ゲーマーからプロドライバーを育てられる可能性が高まっている。

今後は実車を用いた検証も

 実証中では、プロドライバーとeモータースポーツの選手を基準にトレーニング対象になる認知能力を特定。その後、実証対象の選手に脳のスキル向上のためのニューロフィードバックを活用したトレーニングを実施した。

左=佐々木唯人選手 右=宮園拓真選手
左=GO/NO-GO検査の結果、右=ストループ効果の検査の結果

 認知機能のテストはウェアラブル脳波計「VIE ZONE」などを活用したもの。反応・判断力を確認する「GO/NO-GO検査」やポジティブなことを想起している脳の状態を作り出せるようにするニューロフィードバックトレーニング、色と文字などの意味が一致しない場合に反応時間が遅くなる「ストループ効果」を減弱させるトレーニングを実施した。

 結果、トレーニングを受けた選手は、トレーニングを受けていない選手が目立った変化が見られないのに対して、筑波サーキットのラップタイムが0.6秒ほど向上したという。トレーニング結果の確認には、IROCのシミュレーター「T3R Simulator」とレーシングシミュレーションゲームの「iRacing」を使用。車両はマツダ・ロードスターだった。

 現段階では、シミュレーターでの結果にとどまっているものの今後、実証に参加する4社では実車を用いてラップタイム向上の取り組みを実施していく予定となっている。