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あらゆる角度からクルマを見られる、KDDIが「ラリージャパン 2023」で提案する新たな観戦体験
2023年11月17日 20:39
デジタルツインでラリーを再現
KDDIがWellpine Motorsportと協力して取り組んでいるのは、XRや高精度位置情報を用いた新しいラリー観戦の形の実現。車両にcm単位での精度で位置情報測位が可能なデバイスを取り付け、車両の姿勢など走行データを取得。同じデバイスを2つ取り付けることで、車両が向いている方向も再現可能という。
走行データは、デジタルツイン技術で再現されたコースを走行する、3DモデリングされたWellpine Motorsportの「GRヤリス」に反映される。KDDIが出展するスマートフォンなどの充電&フリーWi-Fiブースでは実際に車両から取得したデータをもとにして3DのGRヤリスが走る様子が公開されていた。
通常、モータースポーツはカメラで捉えた画角でしか見られない。しかしこの技術を使えば好きな角度から競技の様子を見られるというメリットが生まれる。また、サーキットでのレースと異なり、1台の車両をじっくりと見られる機会が少ないラリーと親和性が高いともいえる。展望としては観戦体験の拡張にのみ留まらず、走行ラインの確認などドライバーの練習走行にも活用できる仕組みを目指す。同社では今後、サービス化も視野に入れる。
Wellpine Motorsportとともに新たな楽しみを模索
今回の取り組みに協力しているWellpine Motorsportを運営するウェルパインメディア 代表取締役の松井悠氏は、自身がラリーに取り組むなかでの課題感を「認知度」にあると語る。
日本では、SUPER GTが名実ともに圧倒的な人気度・知名度を誇る一方で、欧州で人気を博すラリーは幾分かマイナーな存在。知名度が低ければ結果的に資金集めも難航する。近年の自動車は電子化、先進安全装備の装着義務化などが進み、競技に向けた改造が難しくなりつつあり、市販車ベースの現状からより高価な競技専用車を導入する必要性も考えられ、人気の獲得・資金問題は喫緊の課題だ。
そうしたなかで、デジタル技術でなにか取り組みをしたいということで、それを載せるための車両を探していたKDDIと利害が一致したことから、協力体制を構築した。
今回の取り組みでは、あわせて無料のNFTの特典も提供される。KDDI 事業創造本部 XR推進部の山田もなみ氏は、大会が終わっても持ち帰れる特典を用意したかったとその意義を説明。このほか、Wellpine MotorsportのGRヤリスをスマホの画面上で操れるARラジコン、同チームでコ・ドライバーを務める梅本まどか選手のARコンテンツも楽しめる。
梅本選手は、AR上の自身と対面した感想について「ラリーチャレンジやWRCなんかはお客さんが多い。だけど全日本(ラリー)なんかはお客さんが少ない。でも、こういうアプリなど、もっと(今回のARコンテンツのような)テクノロジーが増えていくことで、いろいろなところで楽しめるようになったら、実際に見てみよう、会ってみようというような気持ちのフックになる時代になっていくのかなと」と期待感を示した。梅本選手のARコンテンツは会場を訪れると楽しめる。
面白いところを見せたい
KDDIは、2023年からラリージャパンのスポンサードを始めた。KDDI ビジネスデザイン本部 副本部長の荒井克彦氏はその意義を語った。
WRCの関係者が、会場での通信インフラ整備に悩んでいたところ、Starlinkを持つKDDIと出会ったところから話が始まり、日本でのラリー開催を応援したい考えやStarlinkの訴求にもつながるということでスポンサードに踏み切った。
自身もラリードライバーとしてステアリングを握るという荒井氏。ラリーは特性上、目の前をマシンがすぐに過ぎ去ってしまうことなどもあり「ラリーは走る方は面白いが、見てるほうがつまらない。面白いところを見せたい」とも語り、今後のラリーでは、SS(タイムアタック区間)でStarlinkとカメラを設置して競技中の様子を中継したいとの展望を示した。