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モータースポーツにもDX化、KDDIが取り組む「クルマ×動画」のチャレンジ

 クルマを趣味とする人ならば、誰しも自分の愛車がかっこよく走っているところが気になるものである。特にサーキット走行などを趣味としているならばなおさらだ。

 KDDIが、4DREPLAYと協力して取り組む「モータースポーツ×デジタル技術」の施策はそんなクルマ好きの願いを叶えてくれるサービスになるのかもしれない。

4DREPLAYとは?

 4DREPLAYは、KDDIがKOIF(KDDI Open Innovation Fund)を通じて出資する映像テクノロジーの企業。

 同社が開発する映像ソリューション「4DREPLAY」は、数十台のカメラを配置して撮影。すると、視聴者は任意の再生時間やアングルで映像を楽しめるというもの。撮影から編集など、従来型のテレビ局でのライブに比べて非常に短時間で済むというメリットがある。

作業中の様子
これらが実際にコースに設置されるカメラ

 これまでもすでにさまざまなスポーツ試合において、同社の技術が活用されており、徐々に実績を積み重ねている。

 4DREPLAY Japan COOの申大湜(Shin Daisik)氏によると、従来に比べて必要なコンピューターもコンパクト化されており、より柔軟な場所で展開できるようになったという。カメラの配置も本来、高低差がないように一列に並べるのが通常の運用だが、バスケットボースの試合などで、あえて高低差をつけて並べることでダンクシュートを追いかけるようなアングルでの映像を撮影するといった試みも取り入れられているそうだ。

4DREPLAY 申氏

 同社にとっても、モータースポーツでの取り組みはまだ始まったばかりという申氏。「KDDIとの縁があったので(取り組みを始めた)。日本を始め米国の方でも注目している。ぜひ今後も広げていきたいと思う」と語った。

4DREPLAYに必要な機材。過去に取り上げた「アイスクロス」での配信時からさらにコンパクト化されていることが伺える

ドリフト走行をいろいろな角度で

 今回、KDDIとの取り組みの舞台となったのは静岡県の富士スピードウェイ。

 スーパーGTなどの大規模なレースの会場ともなる日本有数のサーキットだが、今回はその一角「マルチパーパスドライビングコース」に4DREPLAY用のカメラを設置。ドリフト走行を楽しむ参加者たちのマシンを撮影した。

 KDDIでは、DX化が進むモータースポーツ界隈において、同社の技術を用いた取り組みを行っており今回もその一環となる。一般的に、サーキット走行時の映像は、コース脇から撮影することがほとんどで、間近で迫力ある映像を撮るというのはなかなかに難しい。

 一方で、今回はコース内の一角であるコーナーの外側にカメラを設置した。写真のようにズラッと60台のカメラが並んでおり、コーナーをクリアしていく車両を至近距離で捉えられる。

 ちなみに実際に撮影された映像は以下のような感じだ。

映像提供:KDDI

 普通のスマートフォンやビデオカメラで撮影されたサーキット走行の動画を見たことがあるという方は少ないだろうが、カメラが近くにある分こちらのほうが圧倒的に迫力がある様子が伝わって来ると思う。

「インタラクティブ」という機能で好みのアングルにしてじっくり観察する、ということも

 音声がついていないが、実際にサービスとして楽しむ際にはBGMを流すかたちになることが想定される。

 ちなみに、実証の場ではソニーもスマートフォンを用いた映像配信の仕組みのテストを実施していた。市販されるスマートフォンで撮影・視聴できるもの。配信は5G回線を用いており、高価な専用機器を導入することなく手軽にライブ配信が可能になる。

Xperia 1 IIIを通じたライブ配信の様子。これはあくまで実証のUIだ

 実験では、コース内に「Xperia 1 III」を設置して撮影。仕組み上は走行会の参加者が持ち寄ったスマートフォンから配信することもできるという。

モータースポーツ×動画

 KDDI サービス統括本部 5G・XRサービス企画開発部 サービス・プロダクト企画2G グループリーダーの伊藤悟氏は、今回の取り組みについてはあくまでユーザーの受容性の確認としつつ、想定する用途としてはSNSにアップロードしてドライバー同士で楽しむといったビジョンを紹介する。

KDDI 伊藤氏

 近年、若年層の間では「TikTok」などを筆頭に短尺動画が広がりを見せている。4DREPLAYの場合、単純に動画というだけではなく任意のアングルでの視聴にも対応できる。モータースポーツなら「追走のドリフトをこのアングルで見たい」だとか「自分の走りのこの瞬間をよく見たい」といった需要にも応えられそうだ。

 加えて、ドライバーが自身の走行をチェックし振り返ることで、テクニック向上に役立てることやドライビングレッスンにおける活用などもイメージとして挙げられているという。

 サービス化などについてはまだ未定で、今後どのようなかたちになるかはまだわからない。しかし、これまでにはなかった新しい「クルマ×テクノロジー」のチャレンジ。ぜひなんらかのかたちで世に出てくることを期待したい。