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ドコモの2023年度上期は増収増益、通信減益も法人・金融でカバー

 NTTドコモは、2023年度上期(2023年3月期第2四半期)の業績を発表した。営業収益は2兆8998億円。営業利益は5765億円で前年同期比で増収増益となった。

NTTドコモ 井伊基之氏

 セグメント別の営業利益は法人事業で171億円増。コンシューマー向け通信は237億円の減益。スマートライフ事業は72億円の増益だった。

中・大容量プランが人気

 個人向け通信事業では、5G契約数が1602万契約に達した。前年同期では694万契約でおよそ2.3倍に大きく伸び、スマートフォンユーザーのうちおよそ3割が5G契約に移行した。

 プランとしては、中大容量プランの「ギガホ」や「ahamo」の契約数が順調に伸びており、合わせて1000万契約を突破した。前年同期比から30%の伸長としている。「エコノミー」として、ドコモショップなどで提供される「OCN モバイル ONE」のプランについては、具体的な契約数への言及は避けつつも、こちらも好調であることが示された。NTTドコモ 代表取締役社長の井伊基之氏によれば、中容量・大容量プランはARPUを押し上げる原動力となっており「ARPUは今年度中に4000円程度を底に下げ止まるんじゃないかと。そういう予兆は出てきている」と語る。

 NTTの資料によると、23年3月期第2四半期のドコモのモバイルARPUは4060円。総合ARPUは4650円となっている。

 円安などの影響により高騰する端末については「いつでもカエドキプログラム」による分割払いや中古端末の提供で、端末を購入しやすい環境を整える。

 コンシューマー向けにさまざまなサービスを提供する「スマートライフ事業」では、金融・決済取扱高が前年同期の4兆円に対して今期は5兆1800億円とおよそ1.5倍に伸びた。井伊氏によれば「d払い」はアクティブユーザーが2倍になったという。

 さらに「dポイント会員基盤や加盟店ネットワークを活用し、エンドユーザーの動向が掴みづらいメーカー、小売・流通業界向けにマーケティング支援を強化する」とdポイントを活用したビジネスを積極的に展開する姿勢を示す。

 マーケティングソリューション収入でも前年同期比で20%伸びた。dポイントの外販や広告ビジネスが主で「パートナーのCRM強化につながり、エリアマーケティングの支援になる」とした。

 同社ではこのほか、個人向けローン「dスマホローン」を提供し、金融領域の拡大や「smartあんしん補償」で保証サービスを強化。10月1日にはXR系サービスなどを展開する「NTT QONOQ」を立ち上げるなどしている。

 環境保護への取り組みとして、リサイクル素材を活用したスマートフォンの販売や基地局の省電力化、従業員の環境意識を高める「グリーンプログラム for Employee」の導入が明らかにされた。

 加えて、来るWeb3時代に向けて「Web3 Enabler」とされる機能群を展開していく。これらの機能提供により、使いやすく安全な環境によりWeb3の促進につなげる。ASTAR、アクセンチュアといったパートナーと共同でさまざまな業界や業種からの参加・連携を募る。

法人事業も好調

法人事業では、音声収入は70億円の減だったが成長領域で241億円の増収となった。5GやIoT、アプリ、クラウド基盤などをセットで提供する「統合ソリューション」が伸長しており、3092億円の収益を獲得した。

 井伊氏は、統合ソリューションはユーザーからも好評として「法人事業の今後の成長ドライバー」と位置づけた。法人事業には、IoT回線向けに回線を冗長化したBCPやデバイス管理では他社通信を利用する端末も管理できる仕組みを用意する。

質疑応答では

原価高の影響

――通信事業において原価高の影響額や今後の見通しを教えて欲しい。原価高が通信料金にどう影響をもたらすか?

井伊氏
 端末だけでなく、材料や半導体などいろいろなものが値上がりして影響を受けている。端末は毎年刷新されて、そのときに価格が大きく変動する状況。端末価格は我々がコントロールできないので、なるべく割安に買っていただけるように分割払いの提供などが我々のできる努力。

 一方で通信機器のほうは、単体で見れば値段は上がるものの機能も同時に上がることが多く、すぐに値上がりにつながるわけではない。ネットワークの効率化、仮想化などで吸収できるように持っていきたい。ただ、どれくらい上がるか予断は許さないが、現時点で料金を上げるレベルには至っていない。

――電気料金高騰のドコモへの影響は?

井伊氏
 ドコモグループでは100億円くらい。通期でいうとその倍くらいになると思う。

――基地局のスリープ機能以外の対策はあるか?

井伊氏
 なかなか難しい。ひとつは「働き方改革」で進めている。オフィスを統合して席数も減らしていて、オフィスにかかる電力を下げるというのは順次、全国でやっている。NTT コミュニケーションズとNTT コムウェアと会社も統合して、それぞれのオフィスを寄せている。空調やエレベーターもばかにならない電気を使うのでそれも下げることもできる。

 なかなか下げられないのがデータセンター。ニーズが活況でむしろ建てていかないといけない。そうなると電気が必要。これはビジネスとして伸ばさないといけないところなので電気代は伸びていくと思う。

ギガホユーザー増の背景

――中容量・大容量プランが好調とのことだが、具体的な要因は? ahamo率が高いとARPU増につながらないのではないか?

井伊氏
 大容量(プラン)を使うということは、映像を見るニーズがすごく増えている。ぜひ、我々のコンテンツが売れているから、と言いたいところだが実際はYouTube。高齢層でもYouTubeを見るようになってきたし、そこを舞台にしていろいろな発表を企業がするようになっている。

 パケットの伸びを見ても、映像のトラフィックが相当伸びていて、トリガーはYouTubeの普及。本当は(ドコモの)有料コンテンツで伸ばしたいところだが世の中そう甘くはない。

 ahamoも大盛りが好評だが、「ギガホ」ユーザーがだいぶ増えていてそれが(成長を)引っ張っている。コントロールが難しい領域。キャンペーンもやるが、大容量のニーズがあれば必然的に容量は上がっていく。「ギガライト」でも1段上の容量になる人が多く、明らかに(大容量の)ニーズは増えている。

――モバイル通信収入がQ2で反転している。純増数も伸びており、値下げは純増やアップセル(ここではより高い料金への切り替え)でカバーできているということか?

井伊氏
 ユーザーを増やさないことには事業が成り立たない。ユーザーの取り込み競争偏重じゃないかとは意識しているが、20代の若いユーザーはこの20数年間(他社に)取られっぱなしの歴史だった。それに対してahamoがヒットして若い世代が戻ってきてくれた。

 低価格のものも(OCN モバイル ONE)も好評。パケットはそんなに使わないという人にもグループ内にとどまってもらえているのがプラス要因。しかし、人口が増えるわけでもないので取った、取られたの競争を繰り返してもしょうがない。ARPUを上げるのが大事な戦略。価格勝負よりは容量をたくさん使ってもらえるコンテンツ・アプリを増やすのが我々の使命。

――OCN モバイル ONEで提供の「ドコモのエコノミーMVNO」の契約者数などの状況は?

井伊氏
 具合的な数についてはご容赦いただきたい。実は「価格」ではなく「機能」で勝負するサービスも好評。サービスの中身もさることながら、ドコモショップで扱うということで、我々もユーザーにすすめやすくなるという販売チャネルの影響もある。

 今は価格だけじゃない、サービス・機能で重視して買い求める人もいる。「好調」ということをお話しさせていただければ。

1円スマホ、井伊社長「私は反対」

――「1円スマホ」の見直しや転売対策など、端末販売についての考えは?

井伊氏
 値引きは2万円までのため、ドコモが「1円スマホ」は売れない。iPhoneのような高価な端末は1円にはならない。ただ、2万円くらいの安価な端末は結構な割安な値段になる可能性はある。最終的にいくらで売るかについては、代理店がさらに値引きをかければ、その値段も下げられる。ドコモは独禁法上、コントロールできない。代理店に「利益を捨ててまで販売しないで」とは言えるが「いくらで売ってくれ」とはいえない。

 私自身は1円で売るのは反対。新品が中古より安く売られるのは信じられない。いくらユーザーを確保したいからと言っても健全な競争であるべき。残念ながら、やられたらやり返すのはこの業界のひとつの習慣になっていしまっていて、歯止めが効くやり方で価格を設定(すべき)。値段設定回線と端末はセットで売るのが我々の仕事だと思っている。端末だけ売るのはキャリアの仕事ではないと思う。与えられた周波数をいかに有効に使うかということで、その利便性を(最新の回線・サービス体験を享受できる)端末もセットで売るというふうに考えている。

 その中で合理性のある値引きの仕方にしたい。決して昔に戻りたいわけではない。一定のルールを決めて進めるべきと考えている。そういう考え方で公取委や総務省が検討を進めていると理解している。

楽天の影響

――楽天の0円プランはドコモにとってどんな影響があったのか? 他社は10月に駆け込み需要があったとのことだが

井伊氏
 あのときはマーケットの流動性があった。ドコモでは低容量のOCN モバイル ONEなどではなくahamoが伸びた。影響といえば、ユーザーが料金プランを見直したり、キャリアを見直したりというのが大きい。

 今は楽天さんの影響がでているようには見えない。

iDについて

――iDは今後どうなるのか?

井伊氏
 正直、お話できる展望がない。iDは続けていく派だが、それがどれほどの収益貢献になるかは難しい。選択肢の問題になると思うので、儲かる領域だけに寄せるという考え方は取りたくない。iDは現在もありニーズもあるので、今どうするという強い方針を打ち出せないのが正直なところ。