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ソフトバンク宮川氏、非常時ローミングやデュアルSIMに「早期実現を目指す」

 ソフトバンク代表取締役社長の宮川 潤一氏は、同社の2023年3月期第2四半期決算会見内で、大規模な通信障害時など非常時における対策について、自身の意見とソフトバンクの方針を説明した。

非常時のローミングについて

 記者から、現在総務省で検討されている非常時のローミングについての見解を問われた宮川氏。

 現在総務省で議論されている非常時のローミングは、通信障害などが発生しているキャリアと別のキャリアの基地局やネットワークを利用して、通話やデータ通信を利用できるようにするもの。大規模障害発生時には、非常に多くのユーザーから接続を受けることになるため、受け手側の処理能力が追いつかない問題や、緊急通報時に求められる呼び返し機能などの課題がある。

 宮川氏は、ローミング開始時期について「前向きに検討しており、開始時期も前倒ししたい」と実現に意欲を見せる。

 呼び返し機能については「最初からやるのがベストだが、それをやれる仕組み作りは、ちょっと時間のかかる議論だと思っている」とコメント。一方、「発番通知は4キャリアともできる構造になっている」とし、緊急通報を受ける側で番号を別に控えておけば一応呼び返しができると指摘。

 ただ、警察や消防などが求めるローミング時の呼び返し機能まで備えるシステムの構築には、相当時間がかかるとし、「できることを工夫して実現していきたいと個人的に思っている」とコメントした。

ローミングの対象

 ローミングについては、前述のとおり受け手側のキャリアに過大な負担がかかるため、緊急通報(緊急呼)のみに限定するのか、どこまでを適用範囲にするかの議論も進められている。

 宮川氏は、ローミングの対象について「緊急呼の通信は最低限として、当時の大規模障害(7月のKDDI)の状況を考えると、メールや決済、電車、チケットが買えないなど、今までのコミュニケーションサービス以外のサービスでもご迷惑をおかけすることになる」とし、「できれば、電話やデータも最低限の通信レベル(200~300Kbps)、音声のVoLTEやメール、LINE、PayPayの認証が通るくらいのものを中長期的に検討していきたい」とコメントした。

デュアルSIM端末の対応について

 ローミングと並行して、端末のデュアルSIM対応への議論も進んでいる。

 デュアルSIMは、1つの端末に違うキャリアのSIMを2回線利用できる機能で、iPhoneやSIMロックフリー(オープンマーケット)のAndroidスマートフォンの多くで導入済み。

 大手キャリア3社のAndroidスマートフォンの多くはデュアルSIM非対応だったが、KDDIの大規模通信障害以降、一方のキャリアで障害が発生しても、もう一方のキャリアで継続して通信できるようにする、といった論点が持ち上がっている。

 デュアルSIMの端末について宮川氏は「弊社(ソフトバンク)の提供を早くしていきたい。ソフトバンク以外の3キャリア含め、デュアルSIMの提供を、できるだけ単価を抑えながらやっていきたい」と、早期実現を検討している旨を明らかにした。

 デュアルSIM端末の提供については「KDDIの髙橋社長からも実はお声がけをいただいていた」とし、キャリア同士でも技術的な話し合いが始まっているという。

 一方、デュアルSIMは「あくまでユーザー側の保険」とし、通信障害時にユーザー全員が利用できる対策とは考えていない旨を示した。

 なお、ネットワークの強靱化については、ソフトバンクでも東日本大震災以降対策を強化しているとしたうえで「今後、4キャリア一緒になって技術的な理論を行い、ネットワークのクオリティを高めていきたい」とした。