ニュース

楽天モバイルの矢澤社長「数年以内にNo.1キャリアを目指す」、楽天イベントでの講演まとめ

 楽天グループは、28日と29日に、オンラインビジネスカンファレンス「Rakuten Optimism 2022」を開催した。

 「Rakuten Optimism 2022」の締めくくりとして、「No.1キャリアに向けての現在と今後の取り組み」と題し、楽天モバイル代表取締役社長の矢澤俊介氏による講演などが実施された。

 本稿では、講演の内容を中心にお届けする。なお、「プラチナバンドの再割り当て」に関する発言はなかった。

矢澤氏

 矢澤氏は冒頭で、楽天モバイルのこれまでの歩みについて振り返った。楽天モバイルが携帯電話サービスを本格的に始めたのは、2020年4月のこと。

 同氏によれば、楽天モバイルが参入する前のモバイル業界は、「一般的に見れば、既存の3社さんで非常に固まってしまっていた」。

 「携帯市場の民主化」を掲げて携帯電話事業に参入した楽天モバイルは、参入当時、月々3278円というワンプライスの料金プラン「Rakuten UN-LIMIT 2.0」を発表。矢澤氏は、「ほかのキャリアさんに比べると、非常に魅力的な料金設定だったと思っている」と胸を張った。

 その後、料金を据え置きで5G通信も利用できるサービスや、契約にかかる手数料などをすべて無料にする「ZERO(ゼロ)宣言」などを経て、現在は、「Rakuten UN-LIMIT VII」を提供している。

 矢澤氏は総務省のデータとして、2018年における日本の携帯電話料金と、2021年の料金のデータを披露。「東京における携帯料金は安価になった」とコメントした。

 続いて同氏が披露したのは、楽天モバイルの参入に関する一般消費者へのアンケート結果。楽天モバイルの依頼を受け、第三者機関が調査したという。

 「約7000人へのアンケートの結果、約8割の方が、楽天モバイルが参入した事自体は良かったと答えてくださった」と矢澤氏。「より安価なサービスを提供するプライスリーダーとして、業界をリードするという期待をいただいているのが今の楽天モバイル」とコメントした。

 楽天モバイルの契約回線数(MNOとMVNOの合算)は、2022年6月末で546万。今後の「No.1キャリア」という目標に向け、矢澤氏は「鍵を握るのはテクノロジー」とコメントし、技術面での説明に移った。

 楽天モバイルのコアテクノロジーは、「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」。矢澤氏は「従来の基知局にあったベースバンドユニット(BBU)が、楽天の基地局にはない。それ以外も非常にシンプルなデザインになっていて、コストを削減できる」と説明した。

 完全仮想化によるコストダウンの具体的な数字として、設備投資費が4割、運用費が3割削減できるという。「このシステムがあるからこそ、我々は低料金でサービスを提供できる。ほかの企業さんがこの料金体系を実現するのは難しいと思っていて、これが差別化になる」と矢澤氏は語り、自信を見せた。

 「そうは言っても、『(通信が)つながるのかどうかが一番大事』という声もあると思う」と矢澤氏。同氏は続いて、基地局数やカバー率について説明した。

 楽天モバイルの4G基地局数は、2022年9月13日に5万局を突破。人口カバー率は、2022年8月時点で97.8%となっている。投影されたスライドでは、2023年度中の予定として、人口カバー率99%以上を目指す、ということも示された。

 矢澤氏は、「5Gも含めてエリア拡大を急速に進めていく」と意気込んだ。

 続いて同氏が紹介したのが、衛星を活用してエリアカバー100%を目指す「スペースモバイルプロジェクト」。

 2022年9月10日には、1号機のロケットとして、ASTスペースモバイルによる「BlueWalker 3」の打ち上げに成功。矢澤氏は「打ち上げの様子は、みんなで、YouTubeで固唾を飲んで見守った」と、そのときの様子を振り返った。

 「実際のサービスは、2024年か25年ぐらいをめどに商用化したい」と矢澤氏。「楽天モバイルは日本全国どこでも電波が入る、という世界観を実現したい」とした。

 続いて同氏は、楽天モバイルにおける各種手続きの簡素化をアピール。同社は、eKYCやeSIMなどを活用し、自宅からでも簡単にサービスを契約できるような環境づくりを進めている。

 矢澤氏は、「(楽天グループが)楽天カードを始めたときは、『誰がオンラインで申し込むんだろう』と言われていたが、今やクレジットカードは、オンラインが当たり前。携帯の乗り換えも、間違いなくオンラインが当たり前という世界がやってくる」と語り、「No.1キャリアを数年以内に目指したい」と意欲を見せた。

 続いて、楽天モバイルのCTOを務めるシャラッド・スリオアストーア(Sharad Sriwastawa)氏が登壇。矢澤氏を含めて、セッションが実施された。

スリオアストーア氏

 2018年に初めて来日したというスリオアストーア氏。長年にわたって世界各国でモバイル関連の仕事に従事した経験を持ち、「すべての大陸で仕事をしたことがある」と語った。

 スリオアストーア氏は楽天モバイルの強みについて、「“英語公用化”により、世界中から優秀なエンジニアが集結する」とコメント。続けて、ドローンの活用などによるスピーディーな基地局設置や、高品質な5Gネットワークの提供に向けた研究開発の内容など、楽天モバイルの取り組みを紹介した。

 セッションの締めくくりとして、矢澤氏は、楽天モバイルがNo.1キャリアを目指す理由について、あらためて説明した。

 矢澤氏は、「日本の国力の衰退」というタイトルとともに、「国際競争力」「生産年齢人口の変化」に関する2つのデータを披露。続けて、「国際競争力が34位に落ちてしまっているというデータがある。この34位が正しいかはわからないが、誰の目から見ても、日本の国際競争力は下がってきている。人口減少もこのまま行くと止まらないという状況で、ITを使ってもう一度元気な日本を取り戻したい」と語った。

 同氏は「ネットワークの世界市場への展開」についても言及し、「全世界で楽天モバイルだけが、Open RANテクノロジーを商用化している。これは国際的にも注目されていて、このプラットフォームを輸出していこうと考えている。日本発のプラットフォームが世界基準になることで、日本の国際競争力を上げることにつながる」と、意欲を見せる。

 矢澤氏は最後に、「さまざまな関係者と協力しながら、一緒に日本を強くしていきたいと考えている。No.1キャリアというのは、サービスが安いとかつながりやすいということもあると思うが、日本に貢献していて、日本を代表する会社だと思ってもらえるような会社が、我々が考えるNo.1キャリア。これからも頑張っていきたい」とコメントした。