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「Rakuten Optimism」で三木谷氏は何を語った? 講演まとめ

 楽天グループの代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、オンラインイベント「Rakuten Optimism 2021」に登壇し、オープニングスピーチとして講演を行った。

 本記事では、主にその講演の内容をお届けする。

三木谷氏

「Rakuten Optimism 2021」について

 10月12日と13日の2日間にわたって開催される「Rakuten Optimism 2021」は、楽天グループ最大級のオンラインイベント。

 クアルコムの社長兼CEOであるクリスティアーノ・R・アモン氏や、アクセンチュアの会長兼CEOであるジュリー・スウィート氏らもスピーカーとして招かれている。

 三木谷氏のオープニングスピーチの前には、東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大選手やヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手ら、著名人からのビデオメッセージが配信された。

 クリスティアーノ・R・アモン氏からのビデオメッセージの途中でオンライン配信にトラブルが発生し、配信は30分程度中断。YouTubeでの配信に切り替えられ、10時30分ごろから三木谷氏のスピーチが始まった。

 スピーチの冒頭で三木谷氏は、配信トラブルに関して「予想を上回る方々に視聴していただき、テクニカルな問題が発生した」と謝罪した。

ポストコロナ時代

 三木谷氏はまず、2019年に発生した新型コロナウイルスに言及し、現在までのおよそ2年間で起きた変化を振り返った。

 同氏は新型コロナウイルスによって世界は大きな被害を受けたとしながらも、「デジタルの力でテレワークなどが可能になり、被害をある程度抑えることができた」と語る。また、各方面での変革も大きく進んだとして、世界は新しい時代へ向かっているとコメントした。

 新型コロナウイルスのワクチン接種率に関して、日本におけるワクチン接種率は徐々に高まっており、1回目の接種を終えた人の割合は70%以上。2回の接種が完了した人の割合も、欧米諸国に肩を並べる勢いだ。

 楽天グループでは大規模なワクチン接種を全国で展開し、10月11日時点での実績は計82.1万回となっている。

 「新型コロナによる影響から、世界経済は回復しつつある」と三木谷氏。

 同氏は「新型コロナに関しては、単純に皆さんがソーシャルディスタンスを我慢して守ってきたというだけでなく、デジタルトランスフォーメーションや社会的なスタイルの変革を一気に進めるという意味があった。そういった意味では、ポジティブなファクターがあったのではないかと思う」と語った。

楽天グループについて

 楽天グループは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というモットーを掲げる。

 来年には創業25周年を迎える同グループは、1997年の創業から成長を続け、2020年には約1.5兆円の売上高を記録した。

 インターネットの成長とともに楽天の売上高は伸び続け、ECやトラベル、銀行などの各領域で成長を続けている。三木谷氏は、「コロナ禍で業界全体が落ち込む中でも、我々の事業はきっちり成長した」と胸を張る。

インターネット領域

 続いて三木谷氏は、インターネット領域の事業に関して説明した。

 「楽天市場」をはじめとする国内ECの流通総額は、毎年2桁の成長率を維持してきており、2021年度の流通総額目標として5兆円という数字を掲げる。

 インターネット領域における大きな軸は「楽天ポイント」で、2021年8月末時点での累計発行ポイントは2.5兆ポイントを突破。これについて「足が震えるような数字」とコメントした三木谷氏は、「ポイント消化率は90%以上」と紹介した。

 「楽天市場」における新たな送料体系「送料込みライン」や、日本郵便とのジョイントベンチャーであるJP楽天ロジスティクスの設立などを通じて、さらなる成長を図る。

フィンテック領域

 フィンテック領域での事業に関して、三木谷氏は「我々は銀行や証券、生命保険や損保、カードやQRコード決済などのサービスを展開しており、それらが統合されてeコマースと有機的に結びついている。これは、世界でも楽天グループしかないことだと思う」と語る。

 フィンテック領域の中核を担う楽天カードは、「カード発行枚数3000万枚」「ショッピング取扱高30兆円」「取扱高シェア30%」の”トリプル3“の達成を目指す。

モバイル領域

 続いて三木谷氏はモバイル領域での事業について言及し、「通信事業だけでなく、3つの事業を軸に考える」と強調する。

 具体的には、1つ目に楽天モバイルを軸としたMNO事業、2つ目に楽天エコシステムとの連携、3つ目に楽天シンフォニーを通じたグローバル展開が挙げられた。

 三木谷氏は米アマゾンを引き合いに出し、「アマゾンがeコマース事業とAWSといったクラウド事業を軸にしているように、楽天モバイルもモバイル事業に加えてクラウドプラットフォームやソフトウェアを海外に打ち出していく」と語る。

 同氏がモバイル領域の目玉として挙げるのは「完全仮想化クラウドネイティブネットワーク」。

 これは、無線アクセスネットワーク(RAN)からコアネットワークまでが完全に仮想化され、ネットワークとサービスオペレーション双方がエンドツーエンドで自動化されたもの。セキュリティレベルの向上やコスト削減などのメリットが生まれる。

 三木谷氏は、5G通信のスピードに関するデータなどを披露し、「『完全仮想化クラウドネイティブネットワーク』によって実現する楽天モバイルの5Gネットワークは、世界のトップクラスという評価を受けている」とアピールする。

 楽天モバイルの契約数は2021年8月23日時点で500万回線。楽天回線エリア(4G)の人口カバー率に関して、2022年度第1四半期に96%超となる見込みであることが明らかにされた。

 楽天グループ全体としては、新たに設立した楽天シンフォニーを通じて、通信プラットフォーム事業に対してさらに注力していく。

「再定義される世界」

 三木谷氏はオープニングスピーチの締めくくりとして「再定義した世界」という言葉を出し、インターネット速度の向上によって大きく変化する世界について語った。

 楽天グループは5GやAI、ブロックチェーンなどの活用によって新たな価値の創造を目指す。

 三木谷氏は「5Gによってスマートフォンがネットワークインフラ化し、すべてのものがインターネットにつながる時代がもうそこまで来ている」とコメントした。

 また、ブロックチェーンなどの活用によって到来する「ゼロキャッシュ時代」では、民間・行政ともにペーパーレス化やキャッシュレス化が進むと語る。

 同氏は「こうした変革の中では多少の痛みがあるかもしれないが、その先には”楽天的な“良い未来が待っているのではないかと思う」とコメントし、スピーチを締めくくった。