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PC向け新チップを発表したクアルコムはモバイルの垣根を超えて成長する――アモンCEOの基調講演
2021年12月3日 00:00
クアルコムは日本時間12月2日、同社のイベント「Snapdragon Tech Summit」においてパソコン用チップセット「Snapdragon 8cx Gen3」などの製品を発表した。
イベントでは、前日に続き同社CEOのクリスティアーノ・アモン氏が登壇。基調講演を行った。
最新のチップセット2機種発表
この日、発表されたノートパソコン向けのチップセットは「Snapdragon 8cx Gen 3」は、クアルコムの最新ハイエンド製品だ。クアルコム ミゲル・ヌネス氏によると、全世代の「Snapdragon 8cx Gen 2」に比べてマルチスレッド性能で85%の向上を見せている。
低いクロック数で動作させながらもインテル製の「Core i5」と同等の性能を実現しながら消費電力は半分以下という。
また、GPUパフォーマンスは前モデルから60%、競合製品と比べて32%高いという。加えてバッテリー駆動時のゲームプレイが最大で50%長くなるとしており、ビジネスのみならず、一般ユースにもアピールする。
カメラは最大で4台に対応し、起動速度も15%高速化されている。音声機能についてもエコーや背景のノイズをカット可能で、快適なビデオ会議を実現した。AI性能については29TOPSとなった。
これに加えて、エントリーモデルを担う「Snapdragon 7c+ gen 3」も発表された。エントリーモデルとして初の5Gをサポートしており、AI性能は6.5TOPSと同クラスではトップの性能を持つ。
両機種を搭載する製品は2022年前半にも出荷される見込み。
モバイル以外もカバー
アモン氏は、前日の30日に発表されたスマートフォン向けチップセット「Snapdragon 8 Gen1」についても触れ、「Snapdragonは、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、コネクテッド・インテリジェント・エッジを強化する」と語る。
モバイル機器の発展に貢献してきた同社。近年ではモバイルデバイスはさまざまな所に広がっており、クラウドの成長もまた大きく伸びている。アモン氏はこれまでのようにモバイル分野のイノベーションをリードしていくとしつつも、今後数年で数十億ものデバイスの中でSnapdragonが重要な役割を果たすと語る。
アモン氏はその現在の状況として、ウェアラブルデバイスを例に挙げる。やがてスマートフォンの体験の一部となるだろうと予測を示す。そうした将来の仮想空間やARなどの実現に向けて「Snapdragon XR」プラットフォームが登場しているほか、そうした取組みをモバイルゲームの革命、さらに自動車産業にも広げていくという。
現在、Snapdragonを搭載するパソコンはスマートフォンを超えて1600ほどもあるとアモン氏。プレゼンテーションの場にはレノボ CEOのヤン・ヤンチン氏がビデオ出演し、クアルコムとともにパートナーシップを組み、クラウド時代をリードしていくことを語った。
メタバースにも
アモン氏は、メタバースについても言及する。「どんなメタバースにも必ずデバイスが必要だ」という同氏は、クアルコムがメタバース産業にも足を踏み入れることを示す。「VRで見えるものは何か? それは我々が成し遂げようとしていることだ。メタバースがどのような発展を遂げるかに関わらず、クアルコムは(メタバースに向けた)デバイスを作る企業となる」と語った。
市販されているVRデバイスのうち50機種にSnapdragonが採用されており、大きな機会となっているという。「デジタルツイン」は多くの産業で起こっているとして、アモン氏はクルマを例に挙げる。
「コネクテッドカー」と呼ばれる先進デバイスを搭載したクルマでは、ドライバーの運転の状況やクルマで何が起こっているかの情報を収集し、それをクルマの中のデジタルツインに送信する。もし、クルマを修理に出した時には、メカニックがAR眼鏡をかけてクルマから送られてくる故障の情報を確認することができるようになる。
メタ(旧フェイスブック) CTOのアンドリュー・ボズワース氏がメタバース空間上で出演し、クアルコムとのコラボレーションを10年前、仮想空間なんか不可能だと言われたことを明かしつつ、「クアルコムと連携して数多くの作業をしてきた。メタバースが登場するずっと前のことだ。(クアルコムとの)非常に緊密なパートナーシップがなければ、実現できなかった。今はほんのはじまりに過ぎない。今後、ARやウェアラブルデバイスでも(連携して)展開していきたい」と語った。
ボズワース氏は、ビデオ会議が4G LTEの「キラーアプリ」になると思っていたが、本当にそうなるには、新型コロナウイルスのパンデミックが起きるまで待つ必要があったとコメント。遠隔地の人と実際に会うかのように会話ができる「テレプレゼンス」の必要性を人々が理解したと語る。
ゲーム向け製品を披露
アモン氏は、プレゼンの場でゲーミングデバイス向けのチップセット「Snapdragon G3x Gen1」も新たに発表。
モバイルゲームはすでに大きな市場になっているといい、スマートフォンだけでなくポータブルゲーム機はSnapdragonを活かせる場所と評価。Snapdragon G3xは、長いバッテリーライフやHDR、高速リフレッシュレートといった機能がサポートされており、ゲームに最適な性能を提供する。
加えて「Snapdragon GTXハンドヘルド開発キット」も合わせて発表。ゲーミングデバイスを手がけるRazerと共同で提供されるもの。クアルコムがゲーム業界により深いコミットメントしていくことをアピールした。
自動車向けプラットフォームへの取り組み
自動車業界について「もっとも大きな変化をもたらす」とアモン氏は予測を述べる。クルマにネットワークをもたらすことで、サービスやメディアゲームの配信拠点となり、自動車業界のビジネスが大きく変わるという。
アモン氏は近年、提唱されている「インテリジェント・トランスポーテーション」について「クアルコムのような構築を目的とした会社があるからこそ達成できる」と語る。
同社の「Snapdragon digital chassis」(スナップドラゴン デジタル シャシー)は、同社のエクスペリエンスを実現するものというアモン氏。テクノロジー企業へと変化する自動車メーカーを支えるとして、25の自動車ブランドと協力して開発に成功したとアピール。さまざまなテクノロジーのトレンドの変化に応えられると、その性能を語る。
クラウドへの接続以外にも、サービスのプラットフォームを提供しており、自動車メーカーがさまざまな機能を自動車メーカーが構築できる。また、センシングデバイスからのデータを処理して高い自律性を実現した。
Snapdragonを採用した米ゼネラルモーターズの電気自動車、キャデラック・リリックでは専用アプリで充電や航続距離を表示したり、ワイヤレスプラットフォームに対応したりしている。
マイクロソフトとのコラボ
新型コロナウイルスによってハイブリッドな働き方が定着した。そうしたオフィス外でも働くことが当たり前になる中で、懸念されることのひとつが情報セキュリティだ。
アモン氏は、そうした問題への解決策はクラウドと語る。ファイアウォールで守られるクラウド環境であればデータを安全に補完できるとして、実際に企業のクラウド利用が高まっていると説明する。
加えてコミュニケーションツールもテレワークには欠かせないもののひとつ。AIをパソコンに導入することでさまざまな機能やアプリケーションを備え、効率性が向上する。また、ビジネスのみならずゲームもクアルコムが注目するもののひとつ。ストリーミングゲームが一般化すれば、ゲーム市場の裾野も広がることが期待され、Snapdragonで取り組んでいることでもあると語る。
基調講演にビデオ出演した、マイクロソフト EVP兼チーフプロダクトオフィサーのパノス・パナイ氏は、5GがもたらすWindowsへの影響について「Windows 365を発表した。クラウドに直接接続するサービスで5Gの接続で実現されるものだ」とコメント。
加えてAIについても非常に多くの新しい機能をもたらしているとパナイ氏。Windows 365を含めてAIはマイクロソフトの製品にとって非常に重要な要素で、Windows 11にも貢献しているという。
さらにWindowsの法人ユーザーには、Arm製品を採用するケースが増加しており、ソフトウェアベンダーもArm対応の波が押し寄せている。今後も対応アプリを増やしていき、Androidとの互換性も近いうちに実現される見込みだという。
さらにパナイ氏は、「今後もSnapdragonとWindows 11は共に成長し続ける」とクアルコムとのコラボレーションを続けていくことを示した。