クアルコム、パソコン用チップセット「Snapdragon 8cx Gen 3」と「Snapdragon 7c+ Gen 3」を発表

性能は8割以上向上

　Snapdragon 8cx Gen 3は、同社のパソコン用チップセットのハイエンドクラスを担う。Windowsパソコン用としては初の5nmアーキテクチャーで製造される製品。前モデルの「Snapdragon 8cx Gen 2」と比較して同等の消費電力に抑えながら、性能を大きく向上させたという。

　CPU性能は、前モデルと比較して最大で85％向上。競合であるx86系のCPUと比較して1W当たりの性能は最大で60％上回り、1回の充電で25時間～最長数日間使用可能と、バッテリーライフの長さもアピールする。

　GPUについても前モデルから65％の性能向上を果たしたとしており、Webブラウジングや動画・写真編集、ビデオ会議などでも高いパフォーマンスを発揮する。最大120FPS・FHDのゲームをサポート。競合製品よりも最大で50％ほど長い時間ゲームをプレイできるという。

AIやセキュリティ性能を強化

　29TOPS超の性能を持つAIエンジンを搭載。アプリケーションの処理などにおいて、競合製品の3倍の性能を実現した。

　新たなセキュリティ技術により、クラウドから端末までデータを悪意のあるソフトウェアなどから保護するという。チップセットレベルでのセキュアブートやモバイルネットワーク接続時のセキュリティに加えて「Microsoft Secured-core PC」で高いレベルでのユーザー保護を実現した。

　企業や教育機関向けには「Qualcomm Secure Processing Unit」にWindows 11用の「Microsoft Pluton Security Solution」を備えており、認証情報や個人情報、暗号キーをチップセット内に保存できる。

　また、Windows Helloをサポートすることに加え、ユーザーがデバイスから離れる際に自動的にロックされる専用のプロセッサーを備える。ランタイムメモリーの暗号化に加えてゼロトラストフレームワークではより多くのセンサーと接続状態のモニタリングで企業のリソースへのアクセスをリアルタイムに認証できるとしている。

　常時接続（Always Connected）もサポート。5Gに加えて4G LTEに対応し、Wi-Fi 6/6Eも利用可能。同社のモデム「X65 5G Modem-RF」の場合、最大で10Gbpsの高速通信が可能となっている。

　大容量のファイルのダウンロードやアップロード、クラウドでの大容量のファイル編集などのほか、クラウドゲーミングサービスなどの普及身も据えて最先端の通信技術を備えた。

最大4つのカメラに対応

　ビデオ会議などが一般に広く用いられるようになったことなどを踏まえて、Spectra ISPのカメラ起動時間を高速化。15％ほど早くビデオ会議を始められるようになったという。

　4K HDR撮影が可能なほか、新しい使用例を想定して最大で4つのカメラに対応できる。

　また、オートフォーカス、オートホワイトバランス、自動露光も性能を向上させ、「Microsoft Teams」や「Zoom」ではユーザーの動きや照明の変化に合わせて自動的に画が調整される。

　「Qualcomm Voice Suit」のノイズ・エコーキャンセリングにより、さまざまな環境においてもオーディオがよりクリアに聴こえるよう改善が図られている。AI処理により、犬の鳴き声や隣人の物音など不要な環境音をカットできる。

エントリー向けにも新製品

　Snapdragon 7c+ Gen 3は、エントリークラスのパソコンを想定したチップセット。Windowsパソコン以外にもChromebookへの搭載も想定する。

　6nmアーキテクチャーで製造されており、前モデルである「Snapdragon 7c Gen 2」と比較して、CPU性能は最大で60％、GPU性能は最大で70％向上しているという。

　AIエンジンは6.5 TOPSでエントリークラスのチップセットとしてはトップの性能としている。

　さらにエントリークラスとしては初の5G対応を果たしており、モデムとしては「X53 5G Modem-RF system」を搭載。下り最大3.7Gbpsの速度を実現している。このほか、Wi-Fi 6/6Eにも対応しており、最大速度は2.9Gbps。