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「電気通信事業法」改正がもたらす“完全分離プラン”とは
2019年3月15日 17:19
3月5日、電気通信事業法の改正案が閣議決定された。携帯電話関連では、「通信料金と端末代金の完全分離」がうたわれる内容だ。
元NTTドコモで、昨秋まで総務大臣政務官を務めてきた小林史明議員(自民党)によれば、「端末は端末で販売していただく。ただし端末の値引きはできる。その一方で端末によって通信料金が異なるのはNGになる」という。
現在の課題
総務省での有識者会合での議論を経て、現在は「ユーザーが自由かつ適切にサービスを選ぶことが阻害されている」という課題が挙がった。
これは、機種によって通信料が異なるケースや、プランがわかりづらいこと、高額な解約金付きの2年縛りや自動更新、4年縛りで、ユーザーの囲い込みが行き過ぎていることが要因とされている。
これに改正案では「通信料金と端末代金の完全分離」「行き過ぎた囲い込みの禁止」を盛り込んだ。あわせて盛り込まれた販売代理店の届出制は、完全分離プランを実効力をもって実現するためという位置づけだ。
完全分離プランで目指す「料金の低廉化」
法改正で実現を目指す「完全分離」とは、端末購入を条件として、通信料の割引やキャッシュバックを禁止することを意味する。これで、通信料金だけで比較しやすくし、携帯電話会社の競争を進めようという目論見だ。
一方、小林議員が説明するように、端末価格への割引そのものはセーフ。たとえば新規契約のユーザーに対して、より多くの端末代金の割引を適用するといった形は問題ない。また、携帯各社が注力するポイントでの還元といった特典もOKという。
ただ、一部機種だけ「3GB多く使える」という特典は、通信料の割引と見なされる。また“10万円のキャッシュバック”といった施策はこれまでもNGとされており、小林議員も「引き続きやめてもらう」と語る。
「9500円は高い」
解約金(改正案の概要資料では違約金と表現)について、小林議員は「一般的に9500円は高い。たとえば2年契約で、その当初はその価格ならわかるが、期間が経つことにあわせて、徐々に目減りする形でもいいのではないか。いつでも9500円は高い、というのが世の中(での感覚)的なものではないか」と指摘する。
現状でも、期間拘束のないプラン自体は提供されているが「9500円かからないプランと、2年契約のプランを見比べると、2年利用時の差額が9500円以上になっておりアンフェア。その差額は適切なのか」と問題視している。
課題は「通信規格の世代交代」
その一方で、携帯電話サービスは、およそ10年に一度、新たな世代の通信規格が導入されてきた。現在の日本国内では、主に3G(第3世代の携帯電話向け通信システム)と4G LTEの端末が多く、まもなく5Gも導入される。
これに小林議員も「5Gへのマイグレーション(乗り換え)については総務省は悩ましいと思っている」とコメント。法改正で大枠での取り組みを進めつつ、省令改正で個別のケースへ対応していく考えを示す。
本当に安くなる? 10月適用目指す
今回の改正の目的は、完全分離プランの実現による競争の促進だ。小林議員は「(利用中のキャリアから他社へ)横移動しやすくなる。無理に止めていたものをやめてねとしてもらう作業。消費者が賢く見定めて、MVNOを選ぶといった行動を採らなければ、急には(通信料は)安くならない」と指摘する。
それでも、楽天参入や、値下げを予告するNTTドコモの取り組みとの相乗効果で競争が促進されることでの値下げが期待できる。携帯電話料金を政治の力で値下げするというよりも、選択肢が用意され、選びやすいフェアな環境を政治・行政が整えることで、ユーザーの動きを刺激し、競争を生み出していくという形だ。
改正案が施行される時期はまだ未定だが、小林議員は、楽天が参入する10月には適用される状況にしたいと説明。2019年度以降、携帯電話料金や端末販売で、大きな変化がもたらされそうだ。