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電波法改正案、電波利用料を大幅見直し

 政府は、電波法の改正案を2月12日に閣議決定した。今後、3~4月の国会の総務委員会に提出される予定になっている。

 電波法の改正案では、電波利用料の大幅な見直し、5Gを含めた周波数の割当制度の変更、技適関連の一部要件緩和という3つがポイントになっている。

 本稿では電波利用料の大幅な見直しについて、改正案の概要をお伝えする。また改正案やその背景については、元総務大臣政務官で小林史明衆議院議員(自民党)から解説された内容も含めている。

小林史明衆議院議員

電波利用料、値上げの背景

 電波利用料は、今後の5GやIoTの普及拡大を見据え、総額で約750億円が必要と推定されているが、現在は約620億円規模で、下記の理由から減少させてきた傾向にある。

 電波利用料は民間から徴収しているものだが、エリア整備や調査といった使途からまず総額を決め、それを事業者など免許人が頭割りで負担する仕組み。

 一方、民主党政権時代の変更により、毎年自動的に1割の圧縮が求められる各省の予算の上限枠(シーリング)の中に、電波利用料も含まれる形になっており、電波利用料の総額を下げないと、総務省のほかの予算を削らなければいけない状況になっている。

 ただ、5G時代やIoT時代などを見据え、その使途から、電波利用料を拡大させる方針を固め、約750億円と、130億円増加させる。その使途についても5GやIoT時代を見据えた、監視や研究開発、放送局の耐災害性を強化・支援といった使途を加える。電波利用料をシーリングから外すことも財務当局を調整を進める方針。

特性係数や区分を見直し

 電波利用料の徴収は、重要なものほど割引されるという仕組みで、放送の電波利用料が最も割引されている。たとえば放送には「生命等の保護」(1/2、5割引)と「電波利用の普及の責務」(1/2)という2つの特性係数が適用され、大きく軽減されている。

 今回の電波法の改正では、新たに携帯電話の電波についても現行の「生命等の保護」に加えて「電波利用の普及の責務」を適用し、特性係数は放送と同等にする。この結果、総額を頭割りするという仕組み上、放送の電波利用料は増える形になる。なお、放送では地方局の負担額を減らす仕組みも盛り込まれる見込み。

 また、上記の特性係数のほかに、周波数帯で分けた電波利用料の料金区分も見直される。現行では3GHz帯を境に、低い周波数帯を「移動・放送系」、高い周波数帯を「固定・衛星系」と2つに分けているが、電波法の改正により、使用実態に鑑みて、0~470MHz(負担小)、470MHz~3.6GHz(大)、3.6~6GHz(小)といったように区分が見直される。これにより“使いやすい”帯域は、これまでよりも負担額が大きくなる見込み。

 電波利用料の総額の引き上げと、これら特性係数の見直し、料金の区分の見直しにより、携帯電話の電波利用料は従来から2割増、放送は3割増になると推定されている。