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電波法改正案、周波数割当はオークションを含む総合入札型に

 政府は、電波法の改正案を2月12日に閣議決定した。今後、3~4月の国会の総務委員会に提出される予定になっている。

 電波法の改正案では、電波利用料の大幅な見直し、5Gを含めた周波数の割当制度の変更、技適関連の一部要件緩和という3つがポイントになっている。

 本稿では、5Gを含めた周波数の割当制度の変更について、改正案の概要をお伝えする。また改正案やその背景については、元総務大臣政務官の小林史明衆議院議員(自民党)から解説された内容も含めている。

元総務大臣政務官の小林史明衆議院議員(自民党)

 電波法改正案では、通信分野における周波数割当制度について、「既存周波数の利用促進」「周波数の経済的価値を踏まえた割当手続」の大きく2つで、規定が整備される。

既存周波数の活用も審査、非効率なら“取り上げ”も規定

 「既存周波数の利用促進」では、5Gなどの新サービスの迅速な展開には、既存(割当済み)の周波数を有効活用することが必要とし、5Gの周波数の割当にあたっては、4G基地局の整備計画などの既存周波数を活用する計画も含めて審査を行う。楽天など新規参入で4Gが途上のキャリアも、すでに認定されている開設計画を基に、5Gでも活用するという計画が審査の対象になる。

 さらに、既存周波数が有効利用されていない場合は、5Gの周波数割当(開設計画の認定)を取り消せる規定も追加する方針。

電波オークションを一部に導入

 「周波数の経済的価値を踏まえた割当手続」では、いわゆる“電波オークション”と呼ばれている仕組みが部分的に導入される。これまでの審査項目も継承され、オークションだけで決まるわけではないため、総合入札型ということになる。

 具体的には、5Gなどの周波数割当にあたり、自社の計画に沿って、申請する周波数の経済的価値を「評価額」として提出、この評価額を審査の一項目にする。評価額に上限はなく、金額が高ければより評価される形になる。認定を受けた場合、申請者は評価額を国庫に納付する。

 たとえばこれまでは「周波数の逼迫度」「カバー率」「MVNO促進施策」「安全・信頼性確保」「不感地域対策」といった項目について、各社が申請する開設計画の内容が比較・審査されていたが、電波法改正案では、5Gなどの割当において、前述の「既存基地局の周波数の活用計画」と、「周波数の経済的価値を踏まえた評価額」が審査項目に加わる形になる。

 それぞれの項目に点数が付けられ、合計点を競う形になるが、その点数の配分などは、従来同様に募集開始前に開示される見込み。総合入札型という形にしたことから、オークションの金額だけで、ほかの審査項目の加点をひっくり返してしまうような配分にはならないことが予想される。

 認定を受けた事業者は、申し出ていた評価額を特定基地局開設料として国庫に納付する。また、特定基地局開設料は、認定の期間中は毎年度、一定額を納付する。

 この特定基地局開設料の収入の使途は法で定められる予定で、電波を使用する高度情報通信ネットワークの整備促進といった、総務省が進める「Society5.0」の実現に向けた取り組みに充てられる見込み。

 現在、グローバルでの電波利用の動向を鑑みながら、日本国内において、重要度はともかく電波の有効利用という面では民間に劣る「公共機関が利用する周波数」を、民間に“譲る”動きも出ているが、周波数の経済的価値を評価させる取り組みは、こうした流れを加速させる働きもあるとみられている。