インタビュー

Android 17が目指す「プロアクティブなAI」――グーグル幹部に聞く未来の姿

 グーグル(Google)が展開する「Android」は今、大きな転換点を迎えている。アプリの管理を担う単なる「オペレーティングシステム」から、ユーザーの意図を汲み取って先回りする「インテリジェントシステム」への進化だ。直近で発表されたGalaxy S26シリーズやPixel 10シリーズでは、すでにその片鱗として「プロアクティブなAI」の姿が示されている。

 グーグルのAndroid Platform & Pixel Software のバイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャーであるシーン・チャウ(Seang Chau)氏が日本メディアのインタビューに応えた。

チャウ氏

 1年ぶりのインタビューとなる今回、チャウ氏は、Androidの現在地と将来像のほか、ChromeOSとの統合、AirDropとの互換性まで幅広いトピックに答えた。

Android 17における変化

――1年ぶりのインタビューとなります。

チャウ氏
 ありがとうございます。まず、私たちがAndroidについてどのように考えているか、いくつか確認しておきたいと思います。昨年話したことや、Androidが現在向かっている方向についてです。

 最初にAndroid 17に向けて、考え方の変化についてです。

 先週のGalaxy Unpackedでその一部をご覧いただいたと思います。あれは、私たちがAndroidをどこへ向かわせたいかという、かなり良い予測というか、プレビューのようなものだったと思います。

 いわばユーザーがスマートフォンでより多くのことができるようになる、ということです。

 AIは単なるチャットボットではなく、アプリを開いて話しかけると返事をしてくれるといったものではありません。

 それは、より『プロアクティブ(先回りする)』スタンスへの移行です。

 もし、私たちがユーザーの役に立てると検知できれば、『ねえ、あなたがやっていることは私が手伝えることのようです。どうお手伝いしましょうか?』と提案するわけです。

Androidは「OSからインテリジェントシステム」へ

チャウ氏
 いわば、Androidは、単なるオペレーティングシステムから、インテリジェントシステムへ移行するわけです。オペレーティングシステムは、アプリの起動・終了、タスク切り替えなど、アプリのライフサイクルを管理するような存在です。

 しかし、人工知能とエージェントの世界では、エージェントをよりうまく管理し、プロアクティブな能力の実現を目指します。ユーザーの意図を理解し、ユーザーが何をしているかを理解できるオペレーティングシステムが必要です。

 そして、ユーザーがGeminiであれ、他の何かであれ、どんなエージェントを使うことを選んだとしても確実に機能するようにするのです。たとえば、サムスンは、Galaxy S26の発表会で、Perplexityとの統合も発表しました。

 ユーザーがどのエージェントを選ぼうとも、オペレーティングシステムレベルで、ユーザーがしていることに基づいて、ユーザーに対するプロアクティブな支援を実現させるようにします。

Androidにやってきた提案型のAIエージェント

チャウ氏
 過去1年で多くの取り組みがありました。

 Pixel 10では、「マジックサジェスト」(英名:Magic Cue」をお見せしましたね。

 「何か役立つものがあるよ、情報を提供しようか?」というものです。

 Galaxy S26シリーズでは、「Now Nudge(ナウナッジ)」というAI機能が追加されていますが、これもプロアクティブなものです。

 もしかしたらAIエージェントと呼ばれるかもしれませんが、私たちは単に「物事を片付ける(Getting Things Done)」と呼んでいます。どうすれば人々がもっと早く物事を片付けられ、本当にやるべきことに集中できるか、ということです。

 たとえば、ユーザーの現在地と、カレンダーに入っている次の目的地を見て、もしかしたら配車が必要かもしれないと予測した場合、「どこかへ行くための車が必要なようですね。配車を予約しましょうか?」とポップアップを出せますよね。

 ライドシェアや食料品の買い物、料理の注文などについては、英語と韓国語でテストを行い、高い成功率を得られることが確認できています。

 ですから、Galaxy S26とPixel 10シリーズのベータ版プロダクトとして、これらのことができるようになります。

 こうした処理は、Androidスマートフォンのバックグラウンドで実行されます。仮想ディスプレイを作成し、エージェントが――グーグルの場合はGeminiです――ユーザーの代わりにこれらのタスクを完了させます。

 AIがプロアクティブにユーザーの仕事を手伝ってくれるようになることで、どれほど役立つようになるかがおわかりになるのではないでしょうか。

 つまり、「プロアクティブな支援」へと移行しているのです。サムスンのGalaxyシリーズの場合は、「Now Brief」「Now Nudges」といった機能があります。

 ユーザーが「あ、これ助けてもらえるんだった」と思い出すことを求めるのではなく、必要な情報を必要な時にプロアクティブな方法でどうやって提示するか。AI自身がユーザーを手助けできるという状態が、今後ますます見られるようになるでしょう。

「かこって検索」が示すもの

チャウ氏
 1年前のインタビューで、私は「人々はもうこれ以上AIについて聞きたがっていない」といったことを述べました。

 それでも、私たちは、より役立つ機能を開発し続けてきました。人々はバズワードとしての『AI』について聞きたいわけではなく、「どう役立つか」「何をしてくれるのか」を知りたがっているからです。

 たとえば「かこって検索」には、数多くのAIの仕組みが活用されています。とはいえ、人々がしたいことは「これは何?」「どこで買える?」と知りたいわけです。

 「かこって検索」は、今では多くの人に利用されるようになり、非常に人気のある機能です。

 物事をより早く片付けるのに本当に役立つものだと理解していただければ、「AI」と呼ぶ必要はありませんよね。「AI」は、ユーザーよりも投資家向けの言葉だと思います。

AirDropとの互換性

――iPhoneのAirDropとPixelシリーズの一部でのクイックシェアで、ファイルのやり取りができるようになりました。今後、どう拡大していきますか。

チャウ氏
 他のスマホメーカーやチップセットプロバイダーと協力しています。

各メーカーについて発表できることはありませんが、本当にまもなく、より多くのデバイスでAirDropとクイックシェアでやり取りできるようになると発表されるようになるでしょう

――クアルコムがこの件についての意向を示しています。

チャウ氏
 はい、私たちのソフトウェアだけで実現しているものではないから、ですね。もし私たちのソフトウェアだけであれば、はるかに早く拡大できたのですが、残念ながらそうではないということです。

――アップル(Apple)とは協力しないのですか?

チャウ氏
 私たちとしては、Appleと協力することに積極的です。たとえばRCSや、「不明なトラッカー」のアラートでは、彼らと協力しました。

 一方、今回のAirDropの互換性については、彼らと協力できませんでした。しかし、連絡先のみでのファイル交換といった機能を実現するために、彼らと協力できれば非常に嬉しいですね。

 ただ、現時点では(AirDropとクイックシェアのファイル共有については)私たちの独自の実装です。

――近日、ほかのメーカーからAirDropとクイックシェアのファイル転送について発表があるだろうということでしたが、そこにシャープやソニーも含まれますか?

チャウ氏
 すみません。私はその点はわからないのです。

Geminiがアプリを自動操作

――アプリ操作の自動化についても教えてください。対応アプリの数をどう増やしますか。現時点ではUberやショッピングアプリなど一部のみです。

チャウ氏
 はい、私たちは現在、より幅広いアプリでテストを進めています。ユーザーに向け、高品質な体験と予測可能性を提供したい。

 ベータ版の機能とはいえ、うまく機能しなかったり、確実に機能しなかったりすれば、人々は製品に対する信頼を失ってしまうでしょう。そのため、より多くのアプリに対応し、より多くの利用へと拡大する前に、きちんと動作するのか確認したい。

 もうひとつ、やらなければならないことは、開発者と協力することです。そして、ユーザーがどう使っているか、もっと多くのフィードバックを得ることです。

 何でも自動化するようなことにならないようにします。高品質で、信頼性が高く、予測可能性を高められる方法で進めていきます。

――では、アプリ開発側は何をすべきですか。

チャウ氏
 現在、Geminiと連携するには3つの異なる方法があります。

 私たちがいくつかのアプリケーションベンダーと協力したように、バックエンドの統合があります。

 そうすれば、何かを要求している間、ずっとGeminiアプリだけの表示にできます。Geminiの中に留まったまま、バックグラウンドで処理するわけです。スマートホームなどでのアシスタントレベルの統合のようなものですね。

 あるいは、App Functions(アプリ機能)のようなものがあります。これについては、現在複数の開発者と協力しています。たとえば、アラームを設定するための時計アプリ、メモアプリ、カレンダーアプリなどですね。
 実現すれば、デバイスがそれらのアプリを呼び出せるようになります。Geminiが直接それらを呼び出せるようになると。

 もし開発者が何もしたくない/しない場合、仮想ディスプレイ上でAIが直接アプリケーションを動かせるような自動化を行います。

ChromeOSとAndroidの統合

――なぜグーグルは、ChromeOSとAndroidの統合を進めるのか、あらためて教えてください。

チャウ氏
 ChromeOSのスタックのかなりの部分をAndroidのテクノロジースタックに移行させています。これにより、多くの面で効率化され、動きがずっと速くなると思います。

 たとえばBluetoothスタックは、現在両方のOSで共有されています。複数のOSにまたがって構築することはますます非効率になりましたから。

 同じテクノロジースタック上に構築することで、新機能の互換性を高めるだけでなく、異なるフォームファクター間での互換性も高められます。

 Androidでは、「トランク・ステーブル」(Trunk Stable)と呼ばれる開発プロセスが導入されています(編集部注:新たに開発される機能などにフラグを付けて、土台となる部分に含めたり外したりして安定した開発を実現する仕組み)。

 ChromeOSを含め、すべてを単一のトランク・ステーブルに移行させることで、クロスデバイスの互換性が大幅に向上します。

 スマートグラスとスマートフォン、スマートグラスと自動車、スマートグラスとテレビ、スマートフォンとテレビ、スマートフォンと自動車などといったクロスデバイスのユースケースを考えてみると、同じオペレーティングシステムで動作し、同じAPIや機能が利用できるとなれば、互換性の実現は本当に簡単になりますよね。

――ChromeOSとAndroidが統合されたものは、いつごろ登場しますか。

チャウ氏
 今回はまだお話できることはありません。でも、近いうちに共有できる情報があるでしょう

メモリーとAIの関係

――メモリーの価格が上昇しています。一方で、スマートフォン上でのAIモデルの動作には大容量のメモリーが必要です。AIの普及拡大に向けた解決策はありますか。AIのメモリー使用量を減らすのか、スマホ価格の上昇を受け入れるのか。

チャウ氏
 スマートフォン、タブレット、ノートパソコンのいずれも、オンデバイスで大規模言語モデル(LLM)をサポートするには、メモリーを増やす必要があります。

 メモリー不足の状況下では、確かにより少ないメモリーでLLMをサポートできることがより重要になっていると思います。

 しかし、私たちの経験ではトレードオフがあります。利用可能なメモリーの量と、レイテンシー(遅延)、およびモデルの品質の間のトレードオフです。

 必要に応じてロードとアンロードを繰り返すことで、大規模言語モデルをより少ないメモリーで実行することは可能です。しかし、そこにはいくつかのトレードオフがあります。

 AIモデルのサイズに応じた品質のトレードオフと、デバイスで利用可能なメモリー(RAM)の量に応じたパフォーマンスやレイテンシーのトレードオフという2つがあります。各スマホメーカーは、そのトレードオフのバランスをどうにかして見つけ出す必要があるのだと思います。

 オペレーティングシステムの観点からは、デバイスで使用されるモデルのサイズが何であれ、可能な限り最適化されていることを確認したいと考えています。

――ありがとうございました。