石川温の「スマホ業界 Watch」

まさかのJAL×ドコモのahamo マイラー必見の「JALモバイル powered by ahamo」の狙いとは?

 日本航空(JAL)とNTTドコモは6月25日に「JALモバイル powered by ahamo」を開始する。

JALがahamoを選んだ背景と海外利用の強み

 これまでJALはIIJと組んで「JALモバイル」という通信サービスを提供していたが、新たにMNOであるNTTドコモが持つ人気料金プランであるahamoとタッグを組むことになった。

 JALがahamoと組むことにより、従来のIIJmioをベースにしたプランがなくなるというわけではない。あくまで、ahamoが新たに追加になり、ユーザーは「IIJmio」か「ahamo」を選べるようになる。

 JALがNTTドコモとパートナーシップを結びたかったのは、やはりユーザーからの「海外でも使いたい」という声があったからだろう。これまでのJALモバイルはIIJmioというMVNOサービスをベースにしており、海外でのローミングによるデータ通信サービスは提供できていなかった。

 IIJmioで海外eSIMサービスを開始し、JALモバイルにも提供したが、2枚目としてeSIMを契約しなくてはならず、煩雑であったのは間違いない。しかし、ahamoであれば、海外ローミングは30GBまで利用可能だ。余計な設定は不要で、海外ですぐに使えるというのが魅力だったりする。

 JALの西田真吾マイレージ・ライフスタイル事業本部長は「MNOレベルのサービスを使いたいというユーザーの声があった」と大人なコメントをしていたが、裏を返せば「昼間に遅くなるMVNO品質ではないものが求められていた」ということなのだろう。

 現状、NTTドコモのネットワーク品質はお世辞にも褒められたものではないが、それでも世間的にはNTTドコモ網に対する根強い安心感があるのだろう。

新プランの全貌と乗り換えの注意点

 今回の記者発表会に参加して、正直、かなり驚いてしまった。発表会の案内には「JALとドコモの新たな取り組みに関する記者発表会」とだけ書いており、その時には「さすがにJALモバイルをドコモ回線でやるとは考えにくいし、マイレージの関係強化かな」程度に思っていた。

 しかし、会場に足を運んでびっくり。まさかJALモバイルをahamoでやるとは思わなかった。おそらく、最もびっくりしているのはIIJmio関係者なのではないか。

 IIJmioとすれば、新規契約時は小容量であっても、使っていくうちに大容量プランに切り替えてもらい、収益を稼ぐつもりだったはずだ。しかし、ここにahamoが入ってきたら、IIJmioの目論見は崩れてしまう。

 内容的にも、JALモバイル powered by ahamoはNTTドコモのahamoと一緒で、30GBで2970円、1回5分までの無料通話もついてくる。西田氏は「契約しないともったいない」と胸を張るが、確かに、ahamoを使いつつJALマイレージバンクの番号を持っているという人はぜひとも乗り換えるべきだろう。

 ただし、通常はJALモバイル powered by ahamoを契約すると、JAL Life Statusポイントが毎月1ポイント付与されるが、ahamoからの乗り換えでは付与されない。

 ピュアなahamoを契約する際、端末を一緒に購入すると割引が受けられたり、SIM単体でもdポイントが付与されたりする。そうした特典を受けてから、JALモバイル powered by ahamoに移行すると、残念ながら、MNP契約で得られるはずの5000マイルが受け取れないので注意が必要だ。

両社の顧客層を補完し合う戦略か

 今回の取り組み、実に両社にとってWin-Winの関係に思える。JALにとってみれば、ahamoによって若年層を獲得していける可能性がある。

 そもそも、ahamoは若年層に向けた「料金プラン」という位置付けであった。発表後、人気が出て、若年層に絞った感じもなく迷走しているようにも見えるが、それでも若年層が飛びつきやすい設計であることは間違いない。

 JALのマイレージバンクで好んでマイルを貯めている層は、出張などが多い40代以上の男性に偏っているなど、若年層の開拓が課題とされているのだ。若い世代にマイルを貯めてもらい、旅を満喫してもらうためにもahamoと組みたいと考えていたのだろう。

 NTTドコモとしては、ネットワーク品質問題もあり、顧客基盤の強化が至上命題だ。ネットワーク品質に嫌気が差し、解約していく人たちの分を補うため、販促費を積み増して他社から顧客を獲得し、収益が悪化している状態だ。

 そこで、JALのような40代以上の世代に強いブランドと組むことで、NTTドコモ自身が販促費をかけなくても、新たな顧客を獲得できると期待される。

 そもそも、JALモバイルはすでにIIJmioとの実績により、顧客獲得のうえで相当ポテンシャルのある商材だと立証されている。IIJmioのことは知らなくてもahamoを知っている人は圧倒的に多いとなれば、新規契約をかなり稼げることは間違いない。

通信から金融へ? 期待される経済圏の拡大

 JALとNTTドコモの関係性で面白いのが金融だ。実は、JALは住信SBIネット銀行と組んで「JAL NEOBANK」を提供している。住信SBIネット銀行の仕組みをベースにマイレージ会員向けに銀行サービスを行っているのだ。

 この8月に住信SBIネット銀行はドコモSMTBネット銀行に生まれ変わる。JALモバイル powered by ahamoを契約しつつ、ドコモSMTBネット銀行に口座を持てば、さらにマイルが貯まるなんてこともありえるだろう。

 また、現在JALは銀行しかやっていないが、NTTドコモ経済圏との関係を強化していれば、NTTドコモが持つマネックス証券との提携も期待できるかもしれない。

 ドコモSMTBネット銀行は三井住友信託銀行も経営参加しており、富裕層をターゲットにしようとしている。そういった意味でも、年齢層が高く、海外旅行などに頻繁に出かけるJALマイレージバンクの上級会員などが狙い撃ちにされることもありえそうだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。