インタビュー

ドコモが描く6Gの世界、AIとロボットが主役になる「Network for AI」の本質とは

 ドコモは、MWC26 Barcelonaに6G時代を見据えたセンサレスロボットや、手書き、音声などでAIと協働する「コンポーザー」、自律型ロボットの「DENDEN」などを出展した。いずれも25年5月に発表されたもので、6Gのコンセプトや世界観、ユースケースを表すためのものだ。これらは、ドコモが主導する「6G Harmonized Intelligence」の一環として制作された。

 こうしたプロジェクトの知見を、ドコモは6Gの標準化作業にどう生かしていくのか。6Gテック部の無線標準化担当・NTN技術担当で担当部長を務める永田聡氏が、グループインタビューにこたえた。

MWCに出展して6Gに関する展示の狙いを語った永田部長

6G以降はAIとロボットのためのネットワークに

――最初に、今回出展したもののテーマや狙いを教えてください。

永田氏
 5Gまでが人間のために作ったネットワークだとすると、6G以降はAIとロボットのためのネットワークという仮説を持っています。MWCでも「AIセントリック」や「AIネイティブ」といったワードが出てきていますが、AIがネイティブになるとはどういうことかを考え、ネットワークの基盤を作ろうとしています。

 これは通信にとどまらず、業界を超えた複合的なものです。たとえばテーブルでも椅子でも、人間のために作られたものは長方形で4本の足がありますが、(ロボットが使う)テーブルや椅子はそのままでいいのか。階段もあの形でいいのか。これらはすべて、人間が使うために最適化されたものです。

 ロボットやAIが当たり前になると、全体的なデザインを複数の業界で変えていく必要があります。

 自動車や医療がAI的な考え方になると、そこに合わせていないものは作っても使われないネットワークになってしまう。「Network for AI」とは、ロボットが最大限に性能を発揮できるものです。

 たとえば、ディスプレイの解像度も人間だと4Kや8Kあれば十分ですが、ロボット業界に聞くと16Kや32Kでも足りないものをAIに食わせたい。AIの観点だと、さらに高精細な映像が必要になるということです。となると、5Gでは(容量が)足りなくなります。

ユカイ工学と共同開発した自律共生ロボットのDENDEN。6Gでは、こうしたロボットやAIに向けたネットワークを志向していくという

――遅延についても、AIやロボットを前提にすると変わってくるのでしょうか。

永田氏
 人間が感知できる遅延は、数字だと緩いものです。ロボットだと1つは絶対的な遅延があり、もう1つに遅延の揺らぎもあります。特に産業用ロボットだと揺らぎの部分が大事になってきます。揺らぎや分散が大事になってくるので、それを含めたデザインにすることが大事です。

 もう1つは宇宙に関係することですが、カバレッジの話もあります。日本のような国でも、半分ぐらいはつながらないエリアですが、それは人が住んでいる場所が半分ぐらいだから。そういうところも変えていく必要があります。

 サステナビリティもあり、5Gまでは電力やCO2をいったん作ってから減らそうという流れでしたが、6Gでは研究開発の段階から徹底的な省電力にしていく考えがあります。

――上りが重要になるという話もありますね。

永田氏
 ここはぜひ一緒に考え、情報発信したい部分です。生成AIを使い始めてどれだけ変わったのか。実際にはAIによって10倍上がるという人もいれば、100倍、1000倍という人もいて、その辺の数字がまちまちになっています。よく見ると、条件がそろってなかったりもする。これは業界として、あまりよろしくないと思っています。

 また、通信業界だけでは予想ができません。ここはOpenAIなり、グーグルなりのAI関連業界とも意見交換しながら、悲観的、楽観的な仮説を作り、通信業界として取りまとめをしたうえでAI業界にこれはどうかと聞くことが重要です。そうでないと、お弁当を100個頼んで10人しかいなかったり、間違って10人しかいないのに5万個発注してしまったということも起こりうると思います。

3つの最新ロボットとペン型デバイス

――今回は、デバイスを展示しています。

永田氏
 センサレスロボット、ペン型デバイス、自律共生ロボットの3つがあります。

センサレスロボットは、外部センサーを超低遅延で高速なネットワークとつなぐという取り組み。MWCでは、ドコモダケ型ロボットが展示されていた

 5Gは最初に大風呂敷を広げていたところはありますが、4Gと5Gはどちらもスマートフォンだったということを考えると、デバイスやUI、UXも(通信とは)違う時間軸で進化しています。

 展示したデバイスの1つは落合陽一さんのものですが、落合さんと議論している中でも、「フリック入力はいつまで続けるの」、「タイピングはいつまでしているの」という話がありました。

 今回はペン型のデバイスとして展示していますが、テーブルの上に書くだけでAIが認識するようになれば、もしかしたらディスプレイすらいらなくなるかもしれないですよね。

ペン型のデバイスは落合陽一氏と開発したもの。AIが先回りして情報を提案する

――商用化は2029年、2030年という話がありますが、そうしたものを規格に盛り込んでいけるのでしょうか。

永田氏
 2030年はあっという間です。あと4年しかないですからね。ただ、通信のジェネレーションの時間軸とAIの時間軸とNTNの時間軸が全部違う。2030年という軸で見た時に、AIがどの程度でNTNがどの程度でということを、全部組み合わせなければなりません。ここは腕の見せどころになります。AIで言えば、早めに導入できるものはどんどん入れてしまう流れもあります。

――2029年だとするとさらに時間がありません。

永田氏
 5Gのときもそうでしたが、標準化をアクセラレートするということで前倒しをしていました。そもそも、2029年に6Gを持ってくる意味は何なのかを考えなければなりません。国際標準で言えば、ドコモは1つの取りまとめ役になっていますが、何を要素技術とするかです。

 もっと言うと、標準にはデジュールスタンダードとデファクトスタンダードがあります。後者のデファクトスタンダードは一強が作ったものをばらまき、強制的にスタンダードにしてしまうもので、(衛星通信という文脈では)Starlinkもある意味そういうものです。

 一方の3GPPはみんなで作ってやっていくもの。宇宙もAIもクラウドも関係しているので、デジュールとデファクトを組み合わせる難しさもあります。標準以外の実装部分をどう作るかにも、腕の見せどころがあります。