インタビュー

「スマホ値引き規制は仕方ない」「Android Oneは目的達成」――ソフトバンク寺尾氏が語ったこと

 「スマホの値引き規制は仕方がないところもある」「Android Oneはある意味で目的を果たした」――こう語るのは、7日に開催された、モトローラの新機種発表会に姿を見せたソフトバンク 常務執行役員の寺尾洋幸氏だ。

 ワイモバイルをリードする寺尾氏は、事業の概況などを発表会で紹介した。同氏は発表会後、報道陣の質疑に応じた。本稿ではその内容をインタビュー形式で紹介する。

寺尾氏

ワイモバイルについて

――ワイモバイルでは2年間の間に小さな改善を続け、顧客満足度が向上しているということをアピールしていたが。

寺尾氏
 いつまでもガツガツ取っている(営業している)だけでは皆さんに認めていただけないだろうなと思っています。

 たとえば住所を入力するときの“半角・全角問題”のような細かい問題も、ひとつずつ見つけて直している。ダイナミックな変化ではありませんが、小さなもの(改善)を積み上げてきました。

 20年のゴミがたまって修正できないものとか(笑)、仕様的に時間がかかるものもありますが、直せるものはこの2年間でどんどん直してきました。

――最近では「MNPワンストップ」が導入された。

寺尾氏
 あれ(MNPワンストップ)はまだオンラインだけで、相手方のシステムが対応しているかどうかの問題もあります。

 混乱を招きかねないので、ワイモバイルやLINEMOの第一推奨としては、MNP番号の取得をお願いしています。

――MNPワンストップの初動は。

寺尾氏
 大きな意味では数字は変わりませんでした。今までもMNP番号は、比較的すぐに取れたので。ワイモバイルでいうと、ほとんどの人……6割~7割がオンラインでMNP番号を取得されている。

 皆さんが想像するほど、MNP番号の取得は(利用者にとっての)“壁”になっていないはずです。

――料金プランに関する考えを教えてほしい。

寺尾氏
 料金は常に考えます。今日は何も決めていません。

 世の中ではデータの利用量も増えているので、ニーズに応えて少し考えなきゃいけないかなというのはありますが、まだ皆さんにお伝えできるような段階ではありません。

――ワイモバイルの直近の状況は。他社のオンライン専用ブランドに比べて、競合先としてあまり名前を聞かない印象もある。

寺尾氏
 春の数字はすごく順調でした。

 たとえばahamoさんやpovoさんは少し軸の違うところにいるので……我々から見るとUQ(mobile)さんがすごく売れていたと感じますし、たとえばオンラインブランドだけだと各社さんは厳しいのかなと思います。

“スマホの値引き規制”について

――スマートフォン端末の値引き規制について、変わりそうな動きがある。

寺尾氏
 まあ、いろいろとご指導を受けるようなことをやっていたということです。

 既存のお客さんと新規のお客さんの差をつけすぎても良くないという点で言えば、規制になってしまっても仕方がないと思いますし、我々も真摯に受け止めなければいけないのかなと思います。

 政策にどうこう言える立場にないので、良い悪いのコメントはしませんが、我々を支えてくださった既存のお客さんにもきちんと還元する姿勢を忘れないでおきたいと思います。

――既存顧客にも規制がかかっている状況ではある。

寺尾氏
 まあまあ……(笑)。

 僕ら、いろいろと困ったことが起こるんです。3Gの停波やPHSの終了など、システムがなくなるからお客さんをなんとかしてあげたい。

 ただ、なんとかしようとすると、「それは違反だ」と言われてしまう。

 たとえば端末を交換させていただきたいとなると、それは違反なんです。PHS終了のとき、通信手段がなくなるわけじゃないですか。

 我々の都合なので、「お客さんにちゃんと交換端末をお渡しする」というのはある意味当たり前のことなのに、ダメと言われて困ったことがありました。

 ちゃんとしたルール化とか、お客さんにご迷惑をかけないようなしくみは作らなきゃいけないだろうなと思っています。

 今3Gが終わろうとしていますが、どんどん(通信の)世代が変わっていくので、その受け渡しはちゃんとできるようにやっていきたい。

 既存のお客さんに対して値下げをするしないとかそういうのはあるかもしれませんが、もはや(通信は)ライフラインになってしまっていますから、デバイスの話についても、制度的なサポートはやっていただかなければいけないかなとは思っています。

国内スマホメーカーの動向など

――端末メーカーの動きについてどう見ているか。

寺尾氏
 スマートフォンがコモディティ化(一般化)されてきたことは、時代の流れとして仕方ない部分があるかと思います。

 FCNTさんだったり、京セラさんだったり、日本メーカーさんのことは残念だし、我々としてはできるだけサポートしたかったなというのはあります。ただ、世の中のいろいろな事情もあります。調達ラインの多様化は絶対必要だなと感じています。

 ワイモバイルブランドでは、京セラさん、シャープさんなどのラインアップに加えて、今回モトローラさんも加わるかたちになりました。

――選択肢が増えたという意味ではポジティブなのか。

寺尾氏
 モトローラさんの製品は、「この値段感のなかでクオリティが高い」という印象です。そういう意味では選択肢が増えました。

――海外のメーカーとの提携も視野に入れるのか。

寺尾氏
 我々は常にオープンですので、いろいろなメーカーさんと話をしています。

 規模的なことや、日本市場に合わせて提供いただくことは重要です。

 海外ベンダーであればどこでもいいというわけではなく、お客さんにちゃんとしたものを提供するというのは大切だと思っています。

――これまでワイモバイルでは「Android One」の流れもあった。

寺尾氏
 ずっと前に「Android One」を始めさせていただいて、その当時は各メーカーさんのインターフェイスがバラバラで、クセがあるものを搭載するがゆえに、(端末の動作が)重たかったというのがあります。

 当時は、メーカーさんがOSアップデートをしてくれないということもありました。

 「Android One」の良い点は、2世代はOSサポートをするというところ。OSアップデートをしっかりしないと、長く使っていただけません。

 実際、今になってみると、メーカーさんも1~2世代くらいはOSアップデートに付き合っていただけているので、ある意味目的は果たしているのかなと思います。