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モトローラ「moto g53y 5G」が2.2万円になった理由

左:モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長の松原丈太氏、右:ソフトバンク 常務執行役員の寺尾洋幸氏

 モトローラ・モビリティ・ジャパンは7日、Androidスマートフォンの新製品として「moto g53j 5G」を発表した。6月16日に発売され、直販サイトでの価格は3万4800円。また、ほぼ同一のスペックでメモリー容量が異なる「moto g53y 5G」が、ワイモバイルから29日に発売される。

 同日に開催された報道陣向けの発表会には、モトローラ・モビリティ・ジャパンから代表取締役社長の松原丈太氏、キャリアプロダクト部 テクニカルアカウントマネージャーの見潮充氏が登壇。ソフトバンクから常務執行役員の寺尾洋幸氏が登壇し、事業の概況や新製品について語った。

 本稿では、発表会後の質疑応答の内容もあわせて紹介する。

「moto g53j 5G」
「moto g53y 5G」

より多くの人に端末を届けるために

 松原氏は冒頭、モトローラ・モビリティ・ジャパンの事業の状況を紹介した。同社は、エントリーモデルの「moto e」シリーズからプレミアムモデルの「razr」シリーズまで、幅広いスマートフォン端末のポートフォリオを有する。

 2022年度の事業について、国内向けの端末出荷台数は前年比で121%。実際に顧客の手に渡った数字を示す“アクティベーション(Activation)”は前年比111%となった。

 松原氏は「モバイル業界は今、だいたい横ばいか、少し下落傾向にある。そのなかで我々は年率25~30%といった感じで成長してきた。昨年が一番厳しいと思ったが、なんとかこのような数字を達成できた」と胸を張る。

松原氏

 グローバルでも、たとえば北米ではメーカーシェア第3位、南米では第2位と、確かな存在感を示すモトローラ。今後は日本を含む“アジアパシフィック”や、欧州・中東・アフリカでのビジネスにも注力していくという。

 日本国内で重要視する4点として松原氏が挙げたのは、最新技術を提供する「テクノロジー」、防水防塵やFeliCa対応などの「日本仕様」、優れたコストパフォーマンスを実現する「価格力」、そしてカスタマーケアなどの「品質管理」。

 今回の「moto g53j 5G」「moto g53y 5G」の発表は、モトローラの日本市場における歩みにおいて“フェーズ4”と位置づけられる。過去、プレミアム端末「razr 5G」のリリースなどによって認知度を高めてきたが、今回はより多くの人へ端末が届くことを目指す。

ワイモバイルとのタッグで「moto g53y 5G」も展開

 続いてソフトバンクの寺尾氏は、ワイモバイルの事業について紹介した。ワイモバイルでは、「シンプルS/M/L」という名前の通り、利用者にとってわかりやすい料金プランを提供してきた。

寺尾氏

 寺尾氏は、「ここ数年、顧客満足度にも注目してきた」と語る。2年ほど前、社内に専門組織を設置し、毎月50万件もの顧客の声を分析。トータルで3000件以上の改善につなげたという。

 契約数について「具体的な数字は言えないが、昨年度、大台に乗ることができた」と寺尾氏。「ひとつ世代が変わったというところまで来た」と自信を見せる。

 今回「moto g53y 5G」でワイモバイルとタッグを組むモトローラに関して、寺尾氏は「携帯電話市場の開拓者」と表現する。1990年、当時の上司が同氏に「携帯メーカーといえばモトローラ」と最初に教えたというエピソードが披露された。

 寺尾氏は、先述のようなモトローラの“DNA”に加え、昨今の端末価格の高騰も、今回の「moto g53y 5G」の採用に至った一因とする。半導体不足や為替の影響により、「満足してもらえる品質と価格の両立が難しくなってきた」(寺尾氏)。

 そのような状況で、モトローラが重視する「価格力」とワイモバイルの狙いが一致した格好だ。「moto g53j 5G」からメモリー容量を落とした「moto g53y 5G」は、2万1996円という価格で提供される。

モトローラの見潮氏は、「moto g53j 5G」「moto g53y 5G」のスペックなどを紹介した

質疑応答

――「moto g53j 5G」と「moto g53y 5G」の差分について教えてほしい。「moto g53j 5G」はカラーが2色でメモリーが8GBである一方、「moto g53y 5G」はカラーが3色でメモリーが4GBとなっている。それ以外に違いはあるのか。対応周波数は同じなのか。

見潮氏
 対応周波数は同じです。

 カラーやメモリー以外の違いとしては、アプリ「Glance」(グランス)が挙げられます。ロックスクリーン上にいろいろなコンテンツが配信されるというものですが、これはワイモバイルの「moto g53y 5G」にだけ搭載される機能です。

――今回の製品について、どのような人に使ってもらいたいか。

松原氏
 以前出した「razr 5G」とは異なり、広くあまねく、気軽に5Gを体験していただけるような端末になればと思っています。

 今回の端末は、5G(対応端末)の中で、バランスのとれたスペックとデザインを達成しながら、価格はできる限り抑えたモデルとして発表しました。

 (すでに発売された)「moto g52j 5G」は、今回の端末より少し上のモデルであり、価格もそれ相応です。私たちの中では、そういったかたちで分けて考えています。

――円安の影響は受けているのか。

松原氏
 円安の状況は、かなりの影響を受けています。(影響を)受けていないメーカーはないと思いますが……。

 その中でもモトローラとしては、コストパフォーマンスや調達力など、(ほかと)差をつけられる部分を持っているかなと思っています。

 ユーザー目線では状況の変化が待たれると思いつつ、メーカーとしての良さが出せる環境にあるのかなと考えます。

――(5Gの)周波数でn79に対応していない。コスト的な問題があったのか。

松原氏
 n79は、グローバルでも非常に特殊な周波数帯です。ただ、SIMフリー市場を見たときに、ニーズがあることもわかっています。

 これまで(モトローラ)はグローバル主体でしたが、ハードウェアをデザインする以前の段階で、日本チームのフィードバックも入れられるようになってきました。より多くの人に喜んでもらえる見通しが立ってきたら、n79も検討していきたいと考えています。

――オープンマーケット版(moto g53j 5G)とワイモバイル版(moto g53y 5G)がほぼ同時に出る格好だが。

松原氏
 グローバルでは少し前に出た製品で、ソフトバンクさんとの開発が入り、タイミングがずれました。できるだけ両方同時に発売できるほうがいいかなと思っていて、パートナーの皆さんと話した結果、こういったかたちになりました。

――ワイモバイルだけという選択はなかったのか。

松原氏
 ワイモバイルさんだけ、という話は今回ありませんでした。多くの人に使ってもらうことで、日本としてのスケールも出せます。ワイモバイルさんも、SIMフリー市場のみなさんも喜んでもらえる端末になったかなと思っています。

――ワイモバイル(moto g53y 5G)の価格が、今の(携帯端末の値段の)規制に合致している用に思える。これはワイモバイルからリクエストがあり、それに合わせて調整したのか。

松原氏
 ワイモバイルさんの昔からの要望として、「一定の価格をクリアしてほしい」というのはありました。その裏には「より多くの人に使ってほしい」ということがあり、大前提となっていました。

 その前提を理解しつつ、我々のポートフォリオの中からいくつかの端末が候補として上がり、それに対してどういった開発を入れられるか検討した結果、今回の端末になった感じです。

――OSアップデートはどのくらいを予定しているのか。

見潮氏
 2回、計画しています。

――以前のモトローラは“素のAndroid”というアピールが結構あったように思う。それについての考えを聞かせてほしい。

松原氏
 そういった点はまだモトローラのアピールポイントだと思っていますし、特にBtoBのエリアでは、企業の方から評価いただいています。

 今日はアピールしたいところがたくさんあったので(笑)、あえてそこはハイライトしませんでした。

 ただ、シンプルにクリーンなOSのプラットフォームを使い続けるというのは、根底の私たちのポリシーになります。