インタビュー

新スマホメーカー「Orbic(オルビック)」はどんな企業? キーパーソンは「今年5製品出す」と目標語る

 6月1日、米国に拠点を置くOrbic(オルビック)が日本市場でスマートフォンやタブレットを提供すると発表した。

 日本法人となるJapan Orbicをリードするポジションには、ダニー・アダモポウロス氏が就く。同氏は、かつてモトローラで日本市場を担当しており、国内事情やユーザーのニーズをよく知る人物。取材陣には親しみやすい人柄でも知られている。

Orbicのスマートフォン「FUN+ 4G」

 本誌では今回、アダモポウロス氏と、同氏とモトローラで日本市場を担当していた島田日登美氏にインタビュー。製品ラインアップの背景にある考えなどを聞いた。

ダニー氏のイチオシはタブレット

――ダニーさんは、以前はモトローラの日本市場をリードされていました。あらためて日本へおかえりなさい。

アダモポウロス氏
 ありがとうございます。もう何年も日本へ“通勤”している状態です。シンガポールや中国、米国、オーストラリアなどに滞在しつつ、日本へ通っています。

――なるほど。では、さっそくですが、今回の新商品で、個人的にイチオシのものから教えてください。

アダモポウロス氏
 お気に入りはタブレット(Orbic TAB10R 4G、Orbic TAB8 4G)です。MILスペックに準拠し、非常に頑丈な作りです。

アダモポウロス氏がオススメするタブレット

 スタイラスを便利に使えるというのもいいですし、オプションのキックスタンドもとても便利でして、いくつか角度を変えられるようになっていて、見るだけではなく、作業するときにも便利なんです。

 スピーカーも、一般的には側面や下に用意されることもありますが今回はフロントスピーカーが2つあり、オーディオ体験も楽しめます。

――タブレットについては、法人市場で、開拓できる余地があるといったお話がありました。法人用途のほうが規模が大きいと見ているのでしょうか。

アダモポウロス氏
 もともとこの製品は、5G版を米国で提供していました。そのラインアップのなかで、子供向けに開発したものが今回の製品です。子供はどうしてもタブレットを壊すことがあります。カバンに入れておいて、そのカバンを落としたり投げたりしてしまう。それでも壊れないようにする、ということで作ったのです。

 米ベライゾンから教育部門で子供向けのタブレットが必要だと相談を受け、このように仕上げたのです。米国では、初めてミリ波対応したタブレット製品でもあるんです。

「Orbic TAB8 4G」

 米国以外では、まだ5Gがそこまで浸透していないということもあり、あわせて一定の価格帯が求められていることもあって、今回、日本では4G対応製品をリリースすることにしました。

 つまりは、さまざまなニーズにしっかりと対応していくということなんです。お客さまが求められる価格帯で、必要とされる要素を用意していく。

「Orbic TAB10R 4G」

 「Orbic TAB10R 4G」「Orbic TAB8 4G」については、教育関連やエンタープライズ企業環境の中でも利用できます。オーストラリアでは、政府案件、具体的には連邦政府の選挙体制のなかで用いられました。

 日本では、島田が販売パートナーの皆さまと話を進めていて、実際のお客さまとも一部、お話しています。

 市場には、実利用に必要なスペック以上の性能の製品が提供されていることがあります。たとえばトラックドライバーの方が必要な機能は、配送に関する情報を見る、訪問先でサインをしてもらうとか、自分のスケジュールを確認するとか、そういう程度でしょう。そうした「必要な機能」を手頃な価格で提供できると。

Be Realという言葉が示すユーザーへ寄り添う姿勢

――今回、コンセプトとして「Be Real」というワードが掲げられていましたね。必要最低限の機能に仕上げるというのは、スマートフォンでも同じでしょうか。

アダモポウロス氏
 「リアルな体験」「お客さまにとってリアルに重要なもの」を提供することが根底にあります。

 マーケティング用のキャッチフレーズではあるんですが、私たちはお客さまにとって「リアルなニーズ」に製品を提供していくことが重要だと思っています。

 あまりに高機能なものを誰もが買えるわけではありません。リアルな価値に対する意識を持って物を選ばれると思うので、そういった意味では「リアルである」ということは、「リアルなお客さまに対してリアルなニーズに応えていく」ということです。

 具体的には、バッテリー性能、ディスプレイの性能といったあたりになります。

――では、日本のユーザーは何を求めていると分析していますか?

島田氏
 今回の参入にあたり一生懸命考えたのですが、皆さんの生活のスタイルがすごく個性的になってきているなと。

 朝から晩まで一日中、スマートフォンを見ている人もいれば、たまにしか見ない人もいて。それでも、やっぱりスマートフォンは手放せません。

 コロナ禍では、お隣のおばあちゃんがワクチン接種のために、スマホがないと……といった話を聞いたこともありました。スマホに対する要求、使い方も変わってきて、広がってきた。

 「Be Real」という今回のキャッチフレーズは、私自身「端末」「通信」というものはもちろんですが、人との関わりのことを指しているような気がしていて、「わたしなら、使う」「僕はこうしたい」というニーズへ、丁寧に接したいなと。

 本社でさまざまな準備が進められていますので、お客さまにも楽しんでいただければと思っています。

FUN+ 4Gというスマホの位置づけ

――Orbicのなかで、FUN+ 4Gはどういう位置にあるスマートフォンなのでしょうか。

アダモポウロス氏
 Orbicのポートフォリオは幅広く、4Gだけではなく5G製品ももちろんありますが、「FUN+ 4G」は「FUN」シリーズの最上位モデルになります。「FUN」シリーズは米国のマスマーケット向けスマートフォンです。

 FUNシリーズの下には、ある事業者向けに「Q10」というスマートフォンが用意されています。

 このほか、Orbic Joy 4Gというスマートフォンもあります。これはベライゾン、ヴィジブルという携帯電話会社2社向けのプリペイド用スマートフォンです。

 オーストラリアや日本を含め、これらのポートフォリオから1機種だけ投入しようと考えました。そこで「FUN+ 4G」を選んだのです。

 8インチと10インチのタブレットについては、通信対応のものへのニーズがあります。米国では5G対応になっていますが、それ以外の国、たとえばカリブ諸国などから、より低コストなタブレットを求める声がありまして、4Gタブレットはありますよ、とご用意しています。

 プロダクトポートフォリオでは、ヘッドセット(イヤホン)もあり、今回、日本で提供します。タブレットでもスマートフォンでもノートパソコンでもお使いいただけるものです。

 第2世代のヘッドセットとして、マイクブーム付きのものも用意していますが、これは法人向けで、日本ではご用意していません。とはいえ、Orbicの製品群のなかでは、ほんの一部だけを今回ラインアップしたということになります。

 ただ、これはあくまでスタート地点です。これからもっと(日本向け製品が)増えていきます。

――5Gスマートフォンがなかったのはなぜでしょう。

アダモポウロス氏
 ハイエンドであるほど、価格面ではなく、ブランドの位置づけで選ばれる方が多いと思います。

 成功事例を今回も踏襲する考えなのですが、それって、市場へ参入したあと、通信事業者さんなどのなかで、プレゼンスをしっかり確立し、その国のチームできちんと運営できるようになり……こうしてブランド力が成立していくと思います。

 その段階になって、5G製品を持ってくることになると思います。

日本市場向けの製品づくり

――当面の目標はどういったものになりますか?

アダモポウロス氏
 まず考えているのは、日本市場への参入そのもの。そして最初の1年で、5つの製品をローンチさせ、販売チャネルを確立させる。そして次の世代までうまく持っていくよう準備することになります。

 一歩一歩進めていくということで、たとえばシェア10%を目標にする、といったことではないのです。

 シェアを目標にすると、そこにお金を費やすことになります。一部の中国系のブランドさんなどは、日本参入で大量の資金を投じています。それがなくなったら売れなくなってしまう可能性がある。

 もちろん日本市場へ取り組むにあたり、投資はしていきます。マーケティング活動を実施しても、それを反映した営業活動ができなければ意味がありませんから。

 また、日本では、リベアセンターやコールセンターも整備します。日本以外の国で、日本語を話せるスタッフを用意するということも選択肢としてはあります。人件費を抑えるならそういう事もありえる。

 でも、Orbicの製品を購入された方が、「あまりよくない」「サービスがいまいち」と感じたら、意味がない。満足していただける状態にするほうがいいと思っています。

 それで、次のモデルを投入するときにも選ばれるようになっていくのではないかと思います。

――その「お金の使い道」として、たとえばスマートフォンのローカライズはどう考えていますか? 防水防塵、はたまたおサイフケータイへの対応といったものです。そうした仕様は、Orbicが提供する価値のひとつに含まれるべきですか?

アダモポウロス氏
 すでに対応できているところはあります。競合他社はIP52のものもありますが、Orbicの製品はIP54(IP5Xは防塵、IPX4はあらゆる方向からの水の飛沫に耐える性能)です。

 通信キャリアさんから提示される要件には対応していくというのが、Orbicの基本的な考え方です。

 ただ、その際に「その機能はどれくらいの方が利用されるのですか?」と聞きます。それが全体の5%程度の人が利用する機能であっても、搭載したいとキャリアさんは求めることがあります。

 それって、逆に見れば95%の人が不要なものにお金を払っていることになります。

 一例として、FeliCa(おサイフケータイ)でしょう。その機能はとても重要であることはもちろん承知しています。鉄道の改札を通り、ショッピングにも利用できますよね。

 一方で、飲食店で使える決済機能としてNFCが最近広がっています。タクシーなどでもよく利用されていますよね。実は今、FeliCaよりもNFCの方がよく使われているという話もあります。

 すると、今後2~3年経つとNFCとFeliCaの関係がどうなるか、考えてみるのも面白いと思います。

 NFCは、端末メーカーからするとお金がかからないのです。FeliCa対応で、入り口に立ってドアを開けてもらうだけでも、数百万ドルのコストをかけないと、会ってもらえないということなんです。ある意味、日本の端末メーカーが消えかけている理由のひとつになっているのかもしれません。

――では、日本のユーザーのニーズはOrbicの製品づくりにどう反映されることになるのでしょうか。

島田氏
 たとえば、面白いアイデアが日本で出てきて、それを海外に持っていって「一緒にこれやらない?」と社内でどんどんしていく企業です。

島田氏

 やろうと思うけど数が揃わないんだ、なんてときに「ここにも持っていける」「こちらもいけるよ」という話は実際に出てくるんです。そういうアイデアを実現させる柔軟さ、体力がありますね。

 創業者自身が柔軟ということもありますし、そういうところはすごくフラットな組織です。日本発のアイディアを海外に出していけるチームなんです。

――Orbicの日本チームが担う役割って、販路を拡大するような、営業的な面だけではないんですね。

島田氏
 お客さまの話を聞きにいけ、とはすごく言われるんですよね。お客さんが「こういうことをしたい」と言われたとしたら、それに対して「できないと言わずにちゃんと持ってかえって、検討すると言おう」って。

 Orbicに入って、すごく楽しいんですよね。スタッフの年齢は幅広くて、敬語使っていいかわからないけど、とにかく喋ろうという雰囲気があって、風通しがいいです。

――島田さんの語るOrbicという企業のオープンな雰囲気って、すごくダニーさんの人柄を感じさせますね。

島田氏
 日本に行ったと思ったらオーストラリア、そして欧州、米国、インドと本当に移動ばかりで会えないんですよ。それくらい、各地のお客さんに向き合っているので、とても尊敬しています。

――本日はありがとうございました。