【MWC Barcelona 2025 】

KDDI髙橋社長が「MWC」基調講演に登壇、日本の「通信×◯◯」最先端の姿を語る

 MWC Barcelona 2025の会期初日となる3月3日(現地時間)の基調講演に、KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏が登壇。同社のサテライトグロース戦略を海外に紹介するとともに、傘下に収めたローソンの事例や、キャリアをまたがって開発を進めているネットワークAPIの事例などを解説した。

MWCのメインイベントでもある基調講演の1つに登壇したKDDIの高橋氏

 このセッションは、「Beyond Connectivity:The Telco to Techco Transformation(コネクティビティを超えて:電話会社からテクノロジー企業への変化)」をテーマとしており、UAEのe&(etisalat and)やアフリカに拠点を構えるMTNのCEOが講演を行った。通信料収入だけに依存しないキャリアの戦略を披露することが共通のテーマで、中東やアフリカでのケースに加え、高橋氏が“日本パート”を担当した格好だ。

非通信領域でいかに収益を上げていくかというテーマの講演だったため、KDDIがその実績を上げていることを紹介した

 高橋氏は、5Gの通信やAIを中核に置きつつ、その関連分野ともの言える金融やDX、エネルギーといった事業に拡大していく同社のサテライトグロース戦略を紹介。次のチャレンジ領域として、宇宙やヘルスケア、スポーツエンターテイメントを上げる。その中心となる通信では、5G SAのエリアを日本全国に拡大したことを解説。「3万9000のSub 6をベースにして、5G SAを全国に広げ、顧客体験を向上させている」と話した。

サテライトグロース戦略を解説
Sub 6すべてに5G SAを導入し、全国区に拡大したことを話した

 その結果として、2月に発表されたOpensignal社の「Global Mobile Network Experience Awards 2025」で6部門中3冠を達成し、世界1位に輝いたことを報告。同調査では、ドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルも健闘し、日本全体が高い評価を受けていたが、KDDIはそこから頭1つ抜けた形で世界最高のネットワークとして選出された。

 講演では、災害時の対応として春からStarlinkのダイレクト通信を開始することにも言及。「空が見えるところは、どこでもつながることがゴール」と力説した。Starlinkはコンシューマー向けだけでなく、法人向けにも活用しており、工事中のトンネルや山間部をエリア化した事例を紹介。ロボットやドローンの通信に活用できることを語った。

Starlinkのダイレクト通信や、Starlinkの活用事例も挙げていた

 また、KDDIは23年にGSMAの「Open Gateway」構想に参画。25年には、世界各国のキャリアとエリクソンが合弁で設立したAPIベンチャーのAdunaに資本参加すること発表した。こうした取り組みを通じて、ネットワークの共通APIを提供することで「開発やサービスを加速させていく」方針だ。

ネットワークAPIの活用も推進する

 これらの事例に加え、高橋氏はローソンを傘下に収めた理由を解説。「1万4600ものコンビニが日本全国にあり、とても貴重なリアルの顧客とのタッチポイントになる」と語った。逆に、KDDIの通信やAIの技術を掛け合わせた「リアルテックコンビニ」を目指す構想も披露。

ローソンを傘下に収めた狙いの1つとして、タッチポイントを挙げた高橋氏

 デジタルサイネージでユーザーごとにおすすめの商品を紹介したり、資産運用、医療相談、公的サービス、さらにはスマホ関連のサポートなどを店舗で担っていく「リモートコンタクトセンター」をローソン内に設置していく計画を語った。商品補充や清掃、配達などにはロボットを活用し、「労働者不足を解決する」とした。

DXを推進し、サイネージやコンタクトセンターを導入していく計画を披露
ロボットの活用も視野に入れている

 MWCに出展したKDDIのブースも、コンビニを模したデザインになっており、こうしたソリューションを展示。高橋氏も、リアルテックコンビニを体験しに同社ブースを訪問してほしいと来場者に呼びかけている。これに続けて、「ただし、(ローソン紹介時に人気としていた)アイスやスイーツは提供できないので、食べたいときにはぜひ日本へ」と語り、会場の笑いを誘いながら講演を締めくくった。

コンビニ風の外観をモチーフにしたKDDIブース