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KDDIの「ConnectIN」、“通信サービスが内包された”端末という新たなビジネスモデルを展開

左から、Dynabook常務執行役員国内PC事業本部長の渋谷正彦氏、KDDI 常務執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長の那谷雅敏氏、VAIO 取締役執行役員 開発本部長の林薫氏

 KDDIは21日、メーカーの端末やサービスと通信サービスを一体化して提供できる「ConnectIN」(コネクティン)の提供を開始した。ビジネスソリューション「WAKONX」(ワコンクロス)のNetwork Layerでの取り組みの一環で提供され、メーカーは「端末+通信サービス」のパッケージで法人ユーザーに提供でき、エンドユーザーはパッケージを購入するだけで一定期間データ通信ができる端末を購入できる。

サービスの流れ

 通常、ノートパソコンを外出先(有線LANやWi-Fi環境がない場所)で使用する場合、スマートフォンなどでテザリングするかモデム内蔵パソコンでは通信契約しSIMをノートパソコンに差し込むか、eSIMを適用することで、データ通信が利用できる。「ConnectIN」では、モデム内蔵のノートパソコンにあらかじめ通信契約が含まれたモデルが提供され、そのモデムを購入すれば一定期間通信契約をすることなく、KDDIのネットワークエリアであれば特段の手続き無く通信が利用できる。

KDDI→メーカー

 KDDIは、メーカーに対して通信回線の手配や管理、運用、データベース構築、システム開発を提供する。モデムは、KDDIの動作確認が完了したものなど汎用のものを搭載し、購入後に通信ができるようにするためのシステム全体をKDDIが担う形。なお、KDDIでは、メーカーに提供する一連のシステムについて「製品に通信機能を内蔵させるためのシステム」として複数の特許を取得しているという。

 メーカーは、KDDIが開発、運営するシステムを載せたモデム内蔵ノートパソコンを出荷する。販売台数に応じて対価を支払うレベニューシェアの仕組みが取り入れられているため、メーカーは初期投資が不要で、KDDIは継続的に収入を得られる。

メーカー→エンドユーザー

 メーカーは、KDDIのシステムを載せたノートパソコンを“通信契約が含まれた”ノートパソコンとしてユーザーに提供できる。ユーザーは、ノートパソコンを購入すると、特段の手続き無く一定期間データ通信が利用できる。

 パッケージされる通信できる期間は、メーカーやモデルによって異なる。期間満了後、データ通信はできなくなるが、ユーザーがあらためてKDDIを含めた通信事業者と契約することで、通常のモデム内蔵パソコンとして利用できる。ユーザー側は、端末の購入と通信契約の管理がこれまで必要だったが、「ConnectIN」採用モデルを使用することで、端末の管理だけとなり業務効率化が図れる。

 この際の通信契約は、KDDIとメーカー間の契約となる。ユーザーはKDDIと直接接点を持たずに通信を利用できる。メーカーがユーザーに通信を提供する形になるため、メーカーは「一般的には電気通信事業者としての届け出が必要」だとしている。

さまざまなデバイスが繋がる時代に

KDDI 常務執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長の那谷雅敏氏

 「ConnectIN」では、メーカーが初期投資なくさまざまなデバイスに“通信”の付加価値を提供できるようになる。サービスイン時点で提供されているのは、法人向けノートパソコンのみだが、KDDI 常務執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長の那谷雅敏氏は、車椅子などこれまで通信がなかったものにも提供していきたいとコメント。さまざまなIoTデバイスを取り込んでいくことで、災害が多い日本において安心安全な暮らしを提供するという社会全体への貢献に結びつく形で「WAKONX」全体との相乗効果も狙っていくという。

新しいビジネスモデルとアピール

 なお、パソコンに対する通信回線の組み込みについては、日本HPと2023年11月から先行して協業が実施されていた。同社では、5年間のデータ通信利用権付きモデル「HP eSIM Connect」を提供している。那谷氏は「非常に手応えがあったという認識だ」としており、今回の法人向けノートパソコンという枠組みでもシェア率の拡大に向けて取り組みを進めていく構えだ。

 21日時点では、日本HPのほか、ダイワボウ情報システムとDynabook、パナソニック コネクト、VAIO、レノボ・ジャパンからConnectIN対応モデルが提供される。

DynabookのConnectIN搭載モデル。au回線に接続されている

 VAIO 取締役執行役員 開発本部長の林薫氏は、コロナ禍を契機にビジネスパソコンの出荷台数が増えており、モデム内蔵モデルが30%を超えているとコメント。市場としても、通信に対する高い需要があることがうかがえた。

VAIO 取締役執行役員 開発本部長の林薫氏
法人向けではモデム内蔵モデルが30%を超えている

 KDDI 那谷氏は、今後についてConnectIN採用の電子黒板や、オンライン専用ブランド「povo」を活用したコンシューマー向けの展開、KDDIグループ「ソラコム」を活用した海外展開など、具体的な考えを示唆。“法人向けのノートパソコン”だけに留まらない展開を期待させた。