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楽天モバイルがついに1000万回線を突破、三木谷会長「単なる通過点、次は衛星とAIで世界を変える」

 楽天モバイルは12月25日、携帯キャリアサービスの契約数が1000万回線を突破したと発表した。

 過去、携帯電話を中心としたモバイル通信事業には、自動車業界や鉄道業界などが参入。はたまた固定通信のイー・アクセスや、新規参入のアイピーモバイル、PHS事業のDDIポケット(その後のウィルコム)などが存在したものの、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社に集約された。

 久方ぶりの第4の携帯電話事業者となった楽天モバイルに対して、その契約数の内訳や、ARPU(1契約あたりの収入)、全国でのサービスエリアの拡充など、さまざまな指摘はある。それでも、1000万台を達成したことは、日本の通信史における大きなマイルストーンであることは間違いない。

 同日都内で開催された記念カンファレンスには、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇。会場に設置されたリアルタイムカウンターが1000万の大台を超える瞬間を共有し、事業開始からの道のりと今後の展望を語った。

会場で配布された“号外”

リアルタイムで1000万回線を突破

 イベントでは、ステージ上のスクリーンに契約数のリアルタイムカウンターが投影された。カウンターは「999万9931回線」からスタートし、三木谷氏のスピーチやゲストの藤森慎吾氏とのトーク中に数字が進行。画面が更新されて「1000万54回線」を表示して目標達成を確認すると、会場後方にいた入社1年目という楽天社員からの拍手が沸き起こった。

 達成を記念してステージ上でくす玉が割られたほか、三木谷氏がこの日のために保管していたという「必勝だるま」が登場。三木谷氏が自ら筆を入れて右目を開眼させ、事業の節目を祝った。

「常識を覆す」挑戦の6年間

 三木谷氏は、2018年のプロジェクト開始、そして2020年の本格サービスインから現在までを「長かったような短かったような道のり」と表現した。「携帯業界の常識をひっくり返す」をテーマに掲げ、基地局の設置や新規顧客の獲得、プラン開発など多岐にわたる課題に取り組んできた経緯を説明した。

 参入当初は、従来のMVNO事業の規模感から「1000万回線は無理だ」という声もあったという。三木谷氏は、1000万という数字を大きなマイルストーンとして設定していたとし、達成にあたってはKDDIとのローミング協力などが不可欠だったとして感謝を述べた。

囲み取材一問一答

 イベント後、三木谷氏は囲み取材に応じ、1000万契約の意義や、AST SpaceMobileによるスマートフォンとの衛星通信(スペースモバイル)との直接通信、AIによるネットワーク管理の自動化など、今後の黒字化と技術革新に向けた自信をのぞかせた。

三木谷氏
(撮影に応じながら)すごいね。今までで一番集まってるんじゃない?

――あらためて、1000万回線突破への受け止めを聞かせてほしい。

三木谷氏
 単なる数字と言えば数字なんですけど。やっぱり一つの大きなね、節目の数字ということで頑張ってきたんで、嬉しいです。はい。

――11月の決算の時点では950万契約だったと思う。ラストスパートがすごい。

三木谷氏
 そうですね。企業の大口契約などもあったので、ラッキーな部分もありました。

――ここまでの道のりは長かったか、それとも短かったか。

三木谷氏
 うーん……長いような、短いような。

 でも、やっぱり、まだ通過点だと思っています。これで慢心せず、よりサービスが良くなるように頑張っていきたいと思ってます。

――次の目標は?

三木谷氏
 ことさら目標というものは別に掲げていません。ただ、一人ひとりのお客さんに対する満足度をさらに上げていくですとか、ネットワークをさらに良くしていくですとか、やることはまだ山のようにあります。頑張っていきたいと思ってます。

――他社が値上げする中で、料金を据え置いていることが貢献したか

三木谷氏
 円安になってきて、携帯電話だけではなく、ほかの物価が上がっています。日本の経済は大変になっていると危惧しています。私どもは、できる範囲で頑張っていきたいです。

――ソフトバンクの宮川社長が「ローミングに頼った状況はアンフェア」と語った。基地局整備の今後の考え方は?

三木谷氏
 いろんな考え方があると思います。たとえば、以前から(携帯電話事業を)やっていらっしゃる方々は、場所(基地局用地)代金についても、基本的には基地局使用料というものもない中で作られている。

 我々は新参ですが、そこはしっかりお支払いしています。そういったプラス・マイナス、両方あるのではないかと思っています。

――10月に登場した「楽天最強 U-NEXT」の調子は?

三木谷氏
 いいですね。ご利用されてます?

――まだです。

三木谷氏
 お願いします(笑)。

――今後どういうサービスを打ち出したいか。

三木谷氏
 昨日(楽天が出資し、2026年に衛星とスマホの直接通信で利用予定の)AST SpaceMobileの打ち上げが成功しました。元々あった5機に加えて、新型の5機が上がりました。

 これからどんどん打ち上げられていきます。将来的には、やっぱり衛星から直接ブロードバンドという、非常に特色のある、差別化できるサービス(を提供できる)かなと思っています。

 自然災害が非常に多い日本においては、どんな状況になっても繋がることは、国にとっても、非常に大切で、重要なプロジェクトだと思っています。

 次の大きな目玉となると、やはり衛星から直接、携帯電話が繋がることかなと。これはプラチナバンドでやることになってますので、非常に大きな一歩になると思っています。

――今意識している課題は?

三木谷氏
 一つはですね、楽天モバイルのユーザーさんはやはりデータの使用量が非常に多い。そのあたりを対応していきたいです。

 都内の地下鉄や山手線は、だいぶ改善してきたと思っています。また、5Gの基地局の設置を急いでいくことにも取り組みます。

――周波数、もっと欲しいのでは?

三木谷氏
 (冗談めいた口調で、質問した記者に対して)くれます?(笑)

 (利用される)データ量に比べて、我々の周波数帯域は、このまま成長していけば、いろんな議論をさせていただく必要があるかなと思ってます。

――楽天グループ全体にとってもモバイルへの投資は重い負担だったと思う。山は越えたのか。

三木谷氏
 全国でのネットワークを10万局単位で建てていくっていう巨大なプロジェクトですから、投資金額も大きくなります。

 楽天モバイルからの、単純な売上・利益だけではなく、楽天エコシステムに与える影響は、本当に大きなものがありまして。

 逆に言うと、楽天グループの他のサービスが伸び続けている一つの大きな理由として、楽天モバイルがあるという風に思ってます。

 楽天モバイルのネットワークベースにした、楽天シンフォニー事業(仮想化通信ネットワークを実現するソフトウェア)の販売も好調になってきています。

 その背景には楽天モバイルが世界でも唯一、大規模なOpen RANで成功してるビジネスということがあって、注目されていることがあると思います。

――プレゼンテーションでKDDIへの感謝のコメントが何度かあった。

三木谷氏
 いや、本当に感謝してんですよ。マジで。

 稲盛さんに始まって、ネットワークをフェアにしていこうという経営哲学に基づいて、髙橋(誠)会長も、松田(浩路)社長も、判断いただけている。本当に感謝してます。

――1000万契約を突破し、次の黒字化に向けた取り組みはどうなるのか。

三木谷氏
 基本的にはEBITDAレベルでは、もう相当の利益が出ています。

 我々、いわゆるプレマーケティング・キャッシュフローというか、もし新規顧客を獲得しなかったら(獲得のためにコストを費やしていなければ)どれぐらいポジティブなんですかという視点では、大幅な黒字になってるわけです。

 ですから、今の赤字部分は新規顧客の獲得費用が、ほかの事業と違って資産化できず、大きな要素になっています。いわば成長スピードが早ければ早いほど、黒字化は遠のきます。でも価値は上がっているわけです。その辺のバランスをどうするかということかなと思います。

――具体的な目標、黒字化の向けた具体的な年数の目標は。

三木谷氏
 内部では掲げていますが、公表していない、ということです。

――最近はAIにも注力している。モバイル事業へ注力する熱意は変わりないのか。

三木谷氏
 AIが活躍すればするほど、ワイヤレスコネクティビティは重要になっていきます。

 スマホだけではなく、それこそ自動車もネットワークに繋がっていく必要がある。

 家電、スマートメーター、衛星からの通信など、全て通信できるようになっていく。今までのネットワークじゃないネットワークを楽天グループが作ってるわけです。

 オートノマス(自律)ネットワークという考え方があります。自動運転車でレベル4とかレベル5とか決まっているように。オートノマスネットワークにもレベルがあります。

 楽天のネットワークは、実はオートノマスネットワークレベルで言うと3.5まで来ていて、来年には4に達すると。より効率的なネットワークマネジメントができる、世界の最先端のモデルになっていきます。

 実はAIによって、我々はかなりネットワークマネジメントが進化しているところがあります。AIが、最も活躍できる分野の一つなのかなと思っています。