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KDDIが「Aduna」へ出資する狙いは“ハイパースケーラー”と“国内企業”のサービス利用
2025年2月21日 13:43
KDDIは2月7日に国内外のキャリア間での共通API「ネットワークAPI」の推進を進める合弁会社「Aduna」へ出資することに合意したと発表した。KDDIをはじめ携帯各社が“5Gのユースケース”の展開を進めるなか、ネットワークAPIが果たす役目はどういったところだろうか?
5Gを活用したビジネスを推進、一方で課題も
携帯各社では、5Gの大容量、低遅延という特徴や、ネットワークスライシングなどの機能を活かしたビジネス開発を進めている。たとえば、5Gで映像を送ったり遠隔操作したりする放送DXや、自動車の自動運転、ロボットやドローンによる配送などは日本でも展開されつつある。
一方、国内外ではさまざまな通信キャリアがあり、通信をするためにはそれぞれのキャリアと対応しなければならない。キャリアでは通信をするためのAPIを提供してはいるものの、サービス開発者はキャリアごとに異なるAPIを使う必要がある。通信に限らず、キャリアが提供する認証サービスなどもそれぞれ異なるAPIの実装が必要となり、積極展開への障壁となっていた。
API標準化により、国内外に展開できるように
KDDIは2023年2月にGSMA Open Gateway構想に参画し、APIの標準化へ取り組みを進めてきた。本人確認や品質保証などの共通APIを策定できており、技術コンソーシアム「Linux Foundation」やオープンソースプロジェクト「CAMARA」による仕様規定の標準化を経て、KDDIやドイツテレコムなど国内外のキャリアで共通のAPIが利用できるようになる。
今回KDDIが新たに参画するAdunaは、キャリア間での連携を加速させる枠組みで、エリクソンを筆頭にAT&TやT-Mobile、ボーダフォンなどが参画している。
出資の狙いを、KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 Beyond5G戦略室長の松ヶ谷篤史氏は「APIのグローバル展開への貢献」と「国内パートナーの海外展開支援」があると話す。
APIが標準化したとしても、実際にキャリアが共通APIが利用できる体制を構築しなければそのキャリアでは利用できない。グローバルでキャリア同士が連携することで、世界で共通APIが広く活用できる環境を構築することを目指す。これにより、Google CloudなどいわゆるハイパースケーラーやCPaaS事業者が共通APIを使ったサービス展開ができるようになり、キャリアにとっても有利にビジネスを進められる。
また、KDDIと取引があるサービス事業者にとっても、共通APIを使うことでこれまで国内だったものを海外での展開がより容易になる。サービス事業者は、共通APIを使うことでそれぞれのキャリアの仕様を意識せずに大きくビジネス展開できるようになる。
共通APIの活用例
共通APIを使用することで、キャリアそれぞれが持つ同様のサービスを、1つのAPIで利用できるようになる。
たとえば、すでに商用化されている例として、不正防止のためのサービス「KYC API」の標準化を松ヶ谷氏は取り上げる。これは、auの契約者情報とパートナー企業の個人情報を照会することで、オンライン上で本人確認が完結するもので、自治体でのオンライン本人確認などで活用されている。
5Gの積極活用においても、共通API活用への取り組みが進められている。モバイルネットワーク内で一般の通信よりも優先して通信する「QoD API」が期待されているとし、KDDI内でも技術的な課題を解決するための実証を進めていく。
松ヶ谷氏は、このほかにもさまざまなユースケースがあり、今後同社からも発信していくとした。