石野純也の「スマホとお金」

mineo「マイピタ」を最大3倍増量! 新容量と1Mbps使い放題で他社を逆転できるか

 オプテージの運営するMVNOのmineoが、11月26日からデータ容量を大きく増量したほか、データ容量を使い切ったときなどの通信速度も改善しています。

 いずれのプランも、金額は据え置き。自動で移行されるため、ユーザーは特に手続きの必要なく、より多いデータ容量を使えるようになりました。

 競合のMVNOと比較すると、旧データ容量の料金は少々割高になっていた格好。容量の改定でその状態を一新したことで、mineoの競争力が以前よりも高まったような印象を受けます。

 では、改定後の料金は他社と比べてどのような水準にあるのでしょうか。いわゆる相場と比較しつつ、MVNOの中での新容量のおトク度を検証していきます。

mineoは、11月26日にマイピタのデータ容量を大幅に改定。12月10日からは、パケット放題 1Mbpsなどの新オプションを導入する

データ容量を大改定、増加率が高いのは3GB

 mineoの料金体系は、大きく2つに分けることができます。1つはMVNOやMNOで一般的なデータ容量別の「マイピタ」。もう1つが、データ容量の制限がない代わりに通信速度別に料金を区切った「マイそく」です。今回改定されたのは、前者のマイピタになります。

 マイピタのデータ容量は5段階に分かれていました。1GB、5GB、10GB、20GB、50GBの4つです。音声通話が可能な「デュアルタイプ」はそれぞれ、1298円、1518円、1958円、2178円、2948円に設定されています。この金額はそのままに、50GBコース以外のデータ容量がそれぞれ増量されました。

mineoのプレスリリースより。50GB以外の4コースのデータ容量が大きく増量した

 増え方は均等ではなく、1GBは3GBに、5GBは7GBに、10GBは15GB、20GBは30GBに増加しています。10GB、20GBは1.5倍に増量されたのに対し、5GBは1.4倍、1GBに至っては3倍もの増量が実現し、コース間のバランスがやや変化しています。

 特に低容量の部分については、1GBが3GBになり、旧5GBコースでデータ容量を余らせていたユーザーが移れるようになりました。

3倍になったという意味では、3GBコースがもっとも大きく中身が変わっている

 その意味では、旧1GBコースが4つの中でもっとも強化されたと言っていいかもしれません。逆に言えば、この容量がMVNOの中では比較的割高になっていたこともうかがえます。実際、競合でmineoとシェアの近いIIJmioでは、「ギガプラン」で2GBコースを850円、5GBコースを950円に設定しています。

 mineoより安い料金にも関わらず、データ容量が2倍もしくは5倍利用できたというわけです。

 また、IIJmioでは10GBも1400円に設定しています。IIJmioがMVNOの中で特段安いというわけではなく、同社の料金体系はあくまで相場に近く、より安価な料金プランを用意しているMVNOもあります。

IIJmioのギガプランは、2GBで850円。mineoの旧1GBコースが割高だったことが分かる

 また、大手キャリアもオンライン専用ブランドでは割安な料金を用意しています。例えばソフトバンクのLINEMOは、「LINEMOベストプラン」で3GB以下に抑えれば料金は990円。KDDI傘下のpovo2.0も、3GBトッピングを990円で提供しています。

 マイピタの低容量プランは、大手キャリアとも料金が逆転してしまっていたと言えるでしょう。

大手キャリアのオンライン専用ブランドも、3GBを990円で提供するのが“相場”になっている。画像はLINEMO

新設される使い放題 1Mbpsをどう捉えるかで評価が分かれる

 ただ、データ容量増量後でも、上記の比較対象にしたIIJmioやMNOのオンライン専用ブランドと比べると、やや金額的に高くなることがあります。

 データ容量増量後の3GBコースは1298円ですが、この容量は1000円を下回っている大手キャリアやMVNOが多いからです。実際、上記のLINEMOやpovoですら、3GBは990円で提供しています。しかも大手キャリアの場合、MVNOの接続に起因する速度低下などがありません。

データ容量は3GBに増えたが、それでも依然として他社の5GBプランより高い

 一方で、同時に発表された「パケット放題 1Mbps」まで加味すると、その見え方が変わってきます。mineoには元々「パケット放題Plus」というサービスがあり、旧10GBコース以上には無料で付帯していました。このオプションは、その名のとおり、データ容量を無制限に利用できるというもの。ただし、速度は1.5Mbpsに制限されます。

 今回の容量改定に合わせ、mineoはまず12月10日にこのパケット放題Plusの通信速度を1.5Mbpsから3Mbpsへと倍速化します。位置づけとしては「増速トライアル」になっていますが、3月中旬には3Mbpsを正式サービス化する予定。

 トライアルと言われると少々紛らわしいですが、キャンペーンとして一時的に速度を上げたわけではなく、先行的に3Mbpsにしていると捉えることができます。

高速データをオフにしている時の速度が高速化するパケット放題Plus。現在は1.5Mbpsだが、これを増速トライアルで3Mbpsに上げる。15GB以上は無料だ

 パケット放題Plusは増速トライアルを実施のうえ、15GBコース以上には無料でつきます。これに加え、3GBコースや7GBコースでは、新設されたパケット放題 1Mbpsが無料でつくようになります。

 こちらも開始は12月10日。データ容量を使い切ったあとや、「mineoスイッチ」をつかって高速データ通信をオフにした場合などでも、1Mbpsでデータ通信が使い放題になるというわけです。

新たにパケット放題 1Mbpsを新設し、3GBと7GBに無料でつける

 1MbpsはフルHDや720pなどの動画の再生には向きませんが、コード決済サービスやLINEなどのメッセージサービス、音楽ストリーミングであれば利用は可能。Webサイトの表示も画像が多いと引っかかりを感じることはあるものの、テキストなどは比較的ストレスないレベルで再生できます。

 遅いと感じることはあるものの、致命的に使えないほどではないレベル感と言えるでしょう。

サービスによっては利用が難しいものもあるが、かなりできることが広がる

 逆に、一般的なMVNOの場合、高速データ通信を使い切ると通信速度はより制限されます。例えば、比較対象にしたIIJmioのギガプランの場合、その速度は300Kbps。LINEMOの場合、3GBを超えると自動的に料金が2090円に上がってしまう上に、10GBを超えると通信速度が300Kbpsに制限されます。

 また、povo2.0ではトッピング非適用の場合の通信速度を128Kbpsとしており、かなり通信は厳しくなってきます。

 実際、128Kbpsだと短いテキストオンリーのメールの送受信や通知の受信などはできる一方で、Webサイトを開くのはかなり時間がかかります。試しに、ケータイ Watchのトップページにアクセスしてみたところ、タイムアウトしてしまい、サイトが表示されませんでした。

中容量以上も他社より安価、より使うユーザーがメインターゲットか

 パケット放題のように、1Mbpsあればそこそこ使うことが可能。さらに3GBや7GBといったコースでも有料オプションとして385円払えばパケット放題Plusに加入できるため、より快適にデータ通信を利用できます。

 先に挙げたように高速通信はmineoスイッチでオフにできるため、スマホを触っていない時にバックグラウンドでデータ通信するのを防いで、データ容量を節約するといった使い方も可能になります。

 3GBコースの1298円あれば、IIJmioだと5GBコースに入ってお釣りがくる一方で、使い切ったあとの通信速度制限は大きくなります。

 これに対し、mineoであれば3GBと言いつつ、ある程度我慢すればそれ以上のデータ容量を使える形です。MVNOの相場に比べるとやや高いように見えるぶん、使い切ったあと、ペナルティのような速度制限が加わるのではなく、それなりに使い続けられると言えるでしょう。高いぶん、快適というわけです。

 これに加えて、mineoは比較的、中大容量の料金を安くしている傾向もあります。上記のように、3GBや7GBコースではIIJmioの方が割安な反面、15GBは1958円と比較的リーズナブル。IIJmioのギガプランは同容量で1800円ですが、速度制限後が3Mbpsということを考えると、mineoのよさが際立ってきます。

小容量帯では比較的高めの価格をつけていたmineoだが、15GB以上では、他社と同程度か安いこともある

 さらに、30GBの2178円はIIJmioの35GBコースの2400円を金額で下回ります。50GBで容量と金額が完全に逆転。mineoは50GBを2948円、IIJmioは45GBを3300円で提供しており、mineoの方が安価になります。30GBはpovo2.0のトッピングでも2780円。低容量の価格は比較的高めな一方で、中容量以上になってくると安さが目立つようになります。

15GB以上のコースにはパケット放題Plusが無料でつく。3Mbpsに増速されれば、かなり競争力が高くなりそうだ

 比較的、小容量のユーザーが多いといわれるMVNOですが、mineoの料金体系を見ると、よりデータ通信をしっかり使うユーザーを狙いにきていることがうかがえます。

 とりあえず持っておくサブ回線ではなく、メイン回線をしっかり狙っているとも言えそうです。今回の容量改定やオプションの追加で、その姿勢がより色濃くなったような印象を受けました。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya