法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Nothing Phone (3a) Lite」、個性と機能で楽しめるデザインコンシャスな一台
2026年2月6日 00:00
クリア仕上げのボディや光るGlyphインターフェイスなどで注目を集める英Nothing Technologyからリーズナブルな価格帯の「Nothing Phone (3a) Lite」が発売された。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
没個性化が進んだスマートフォンのデザイン
スマートフォンが本格的に普及しはじめて、十数年が経過する。現在、国内で販売されているスマートフォンを見てみると、「Galaxy Z」シリーズなどのフォルダブルスマートフォンを除けば、ほとんどの端末がスレート状(板状)のデザインを採用し、背面に複数のカメラ、フラットなディスプレイなど、外観は画一化されつつある。もちろん、ユーザーのニーズを踏まえていった結果、デザインや構成が集約された面もあるが、あまり個性が感じられなくなったのは事実だろう。
そんな中、ここ数年、デザインや機能面で個性を発揮しているのが英Nothing Technologyのスマートフォン「Nothing Phone」シリーズだ。Nothing Technologyは中国のOnePlusの創業者の一人であるカール・ペイ氏らが2020年に創業した若いメーカーで、2022年から日本市場に参入し、スマートフォンをはじめ、イヤホンやヘッドホン、サブブランド「CMF」ブランドでのスマートウォッチなどを展開している。
国内市場参入当初は情報の発信などでゴタゴタがあり、メディア関係者から不評を買ったが、かつてソニーモバイル(現在のソニー)や楽天モバイルなどでプロダクトに携わってきた黒住吉郎氏が2024年にNothing Japanのマネージングディレクターに就任したことで、国内市場のニーズを踏まえたラインアップやプロモーションが展開され、徐々にユーザーの支持を拡大している。
「Nothing Phone」シリーズが特徴的なのは、背面のシースルーデザイン(トランスペアレント仕上げ)やLEDによる光る演出「Glyphインターフェイス」、シンプルで統一されたユーザーインターフェイスの「Nothing OS」や「Nothing Launcher」など、デザインコンシャスなスマートフォンとして仕上げられていることが挙げられる。「Nothing Phone」シリーズを使っていると、「何ですか、それ?」と話しかけられることがあるくらい、しっかりとした個性を持つ。
今回取り上げるモデルは、1月15日に発売されたばかりの「Nothing Phone (3a) Lite」になる。現在のNothing Technologyのスマートフォンには、フラッグシップの「Nothing Phone (3)」、ミッドレンジの「Nothing Phone (3a)」があり、サブブランドの「CMF」に「CMF Phone 2 Pro」「CMF Phone 1」がラインアップされており、今回の「Nothing Phone (3a) Lite」はNothing Technology初のエントリー向けモデルに位置付けられる。
ちなみに、ミッドレンジの「Nothing Phone (3a)」については、昨年12月にバリエーションとして、全世界1000台限定の「Nothing Phone (3a) Community Edition」も販売された。
「Nothing Phone (3a) Lite」はNothing公式サイトやAmazonなどのECサイトでオープン市場向けSIMフリー版が販売されるほか、楽天モバイルでも取り扱われる。SIMフリー版が4万2800円で販売されるのに対し、楽天モバイル版はまったく同じ仕様ながら、3万2890円と、1万円近く安い価格で販売される。
楽天モバイルは昨年来、Nothing Technologyの製品を国内の携帯電話会社として、独占的に販売しており、価格面でも積極的に販売する姿勢を示しているわけだ。
印象的な背面のシースルーデザイン
ボディは「Nothing Phone (3a)」とほぼ同じサイズで、幅78mm、厚さ8.3mmのスリムな仕上がり。
「Nothing Phone」シリーズではおなじみのシースルーデザインは受け継がれており、背面のガラスの内側はパーツを固定するネジやプレートなどが見えるデザインとなっている。
カラーはオープン市場向けがBlackとWhiteの2色展開で、楽天モバイルは2色に加え、Redを選ぶこともできる。パッケージにはケースが付属するが、背面デザインを活かすため、クリアタイプのものが採用されている。
耐環境性能はIPX4防滴、IP5X防塵となっている。IPX4は防水というより、水の飛沫に対する耐性なので、雨の中での利用は可能だが、水没などは想定されていない。
ただ、IP規格とは別に、NothingのWebサイトでは「水深25cmの水に20分間沈めての液体侵入試験」「背面のバッテリーパネルへの500g鉄球の落下テスト」「600Nの力を加えての折り曲げ強度テスト」「25万回のボタン押下テスト」をクリアした動画を公開しており、一般的な利用でも十分な耐久性を備えていることがうかがえる。ちなみに、本体落下などでの破損が不安なときは、同梱のケースの利用がおすすめだ。
バッテリーは5000mAhの大容量バッテリーを搭載するが、シリコンカーボンバッテリーではなく、通常のリチウムイオンバッテリーが採用されている。充電は最大33Wの急速充電に対応し、約20分で50%まで、約1時間のフル充電が可能となっている。
最大5Wのリバースワイヤード充電にも対応しており、USB Type-CポートにUSBケーブルを接続して、他の機器を充電できる。USBケーブルでの有線充電は、USBケーブル接続時に給電する端末側で表示される[USBの設定]画面で、[接続デバイスの充電]を有効にすると、接続先の機器が充電される。最大5Wだが、ワイヤレスイヤホンの充電ケースなどだけでなく、スマートフォンも充電できる。
約6.77インチフレキシブルAMOLED搭載
ディスプレイは1084×2392ドット表示が可能なフルHD+対応の6.77インチフレキシブルAMOLED(有機EL)を搭載し、ガラスはPanda Glassを採用する。ディスプレイには出荷時に実使用が可能な保護フィルムが貼られているが、シースルーデザインの背面側は何も貼られていない。
ディスプレイの仕様としてはコントラスト比が100万対1、輝度はピーク時が3000ニト、屋外輝度が1300ニト、通常輝度が800ニト、リフレッシュレートは最大120Hzの可変、タッチサンプリングレートは1000Hzとなっている。リフレッシュレートは最大120Hz可変の「ダイナミック」のほかに、120Hz固定の「高」、60Hz固定で電力消費を抑える「標準」を選ぶことができる。この価格帯のスマートフォンのディスプレイとしては、かなりハイスペックと言えそうだ。
生体認証はディスプレイの内側に内蔵された光学式指紋センサーによる指紋認証、インカメラを利用した顔認証に対応する。顔認証は[設定]アプリの[セキュリティとプライバシー]-[デバイスのロック解除]-[顔認証]-[顔によるロック解除]の画面内で、[マスク装着状態でロック解除]を有効にすると、マスク装着時の顔認証によるロック解除が可能になる。花粉症などで、マスク装着が欠かせないユーザーにとっても有用だ。
これまで発売されてきた「Nothing Phone」シリーズでは、背面に埋め込まれた複数のLEDで構成する「Glyphインターフェイス」が注目されたが、今回の「Nothing Phone (3a) Lite」ではコスト的な制約もあってか、背面の下部付近にLEDを1つのみ埋め込んだ「Glyphライト」が採用されている。
「Nothing Phone (1)」などの派手さから考えると、やや寂しい感もあるが、それでもLEDが点灯するパターンが10種類も用意されており、特定の人からの着信に固有の点灯パターンを割り当てて、判別することができる。
こうした取り組みは「Nothing Phone」シリーズが従来から掲げてきた「スマートフォンとの適切な距離感」という考えに基づいたもので、通知があったときも必要以上に画面を参照しなくて済む。ちなみに、「Glyphライト」はカメラでタイマー撮影時のカウントダウンにも利用される。
Android 15ベースの「Nothing OS 3.5」を搭載
プラットフォームはAndroid 15ベースの「Nothing OS 3.5」を搭載する。日本語入力はAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」が採用される。「Nothing OS」はシャオミの「HyperOS」などと同じように、Androidプラットフォームをベースにしながら、ホームアプリやユーザーインターフェイスをカスタマイズし、独自のユーザビリティやデザインを実現している。
出荷時は「Nothing OS 3.5」がプリインストールされているが、1月28日から順次、Android 16をベースにした「Nothing OS 4.0」へのアップデートが開始されている。サポート期間については、Androidプラットフォームの更新(OSバージョンアップ)が3年間、セキュリティパッチの提供が6年間、予定されている。
「Nothing OS」で特徴的なのは、ホーム画面がドットパターンとモノトーンを基調としたデザインでまとめられている点だ。しかもホーム画面に表示されるアプリのアイコンやウィジェットは、Nothingが提供するものだけでなく、Googleの[マップ]や[Gmail]なども同じようにデザインされており、世界観が統一されている。
アプリ一覧画面は視認性を考慮してか、各アプリの標準デザインで表示され、Nothing製アプリはモノクロと赤を基調としたデザインにまとめられているが、[設定]アプリで[カスタマイズ]-[アイコンパック]を選び、[Nothing]を選択した状態で[ホーム画面のみに適用]をオフにすれば、アプリ一覧もホーム画面と同じように、すべてのアイコンがモノトーンを基調としたデザインに変更される。
使いはじめは視認性を考慮し、[ホーム画面のみに適用]をオンの状態で使いつつ、使い方に慣れてきて、統一された世界観が気に入ったのであれば、設定を切り替えるといいだろう。ちなみに、[設定]アプリの[カスタマイズ]ではホーム画面の色調やレイアウトなどもカスタマイズできるほか、ホーム画面の各アイコンのラベル(キャプション)の表示もON/OFFを切り替えることができる。
「Nothing Phone」シリーズは「Nothing OS」をはじめとしたユーザーインターフェイスだけでなく、オリジナルアプリや機能もユニークだ。たとえば、昨年来、「Nothing Phone」シリーズの各モデルに搭載されている「Essential Space」は、気になることや関心のあるコンテンツ、何か思いついたことやアイデアなどを本体側面の「Essential Key」を押して、スクリーンショットや音声メモとして保存しておくことで、それらの情報を自動的に整理し、それぞれのユーザーに合った提案や要約、アクションプランなどを作成できる。
筆者も「Nothing Phone (3)」から利用しはじめていて、どういう使い方が適しているのかをまだ模索している状況だが、保存した写真などに関連する情報が自動的に得られるのはなかなか面白そうだ。
MediaTek製Dimensity 7300 Proを搭載
チップセットはTSMCの4nmプロセスルールで製造されたMediaTek製Dimensity 7300 Proを採用する。ひとつ上位モデルの「Nothing Phone (3a)」に採用されていた米Qualcomm製Snapdragon 7s Gen 3に比べ、やや性能は抑えられているものの、Dimensity 7300シリーズの中ではGPU性能を強化したものがDimensity 7300 Proとしてラインアップされており、ゲームや動画なども楽しめるミッドレンジとして十分な性能を持つ。
メモリーとストレージについては8GB RAMと128GB ROMを搭載し、最大2TBまでのmicroSDメモリーカードを装着できる。RAMについては[設定]アプリの[特別機能]-[RAM拡張]で、2GB/4GB/8GBを拡張できる。
昨年後半から、モバイル業界やPC業界ではメモリーやストレージに利用する半導体の逼迫が報道されており、今年はスマートフォンやパソコンの価格高騰が危惧されているが、そんな中、エントリー向けモデルという位置付けながら、AIの利用に欠かせないRAMを8GBも搭載し、3~4万円程度という価格を実現したのはかなりインパクトのある価格設定と言えるだろう。もしかすると、半年後には同等のスペックのモデルがこの価格では購入できないかもしれない。
モバイルネットワークは5G NR/4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応し、5GはSub6のみに対応する。NTTドコモが5Gネットワークの一部で利用している「n79」には対応していないため、NTTドコモ及びNTTドコモ網を利用するMVNO各社では少し注意が必要だ。
他の製品のレビューでも触れたが、NTTドコモは5GのSub6で利用する周波数として、「n78」(3.7GHz帯)でエリアを展開する一方、最近のネットワーク品質改善の流れで「n79」(4.5GHz帯)のエリアも拡大しており、今後、「n79」対応端末と非対応端末で、使用感に差が出てくる可能性もある。
SIMはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応する。グローバル向けモデルはnanoSIMのみに対応し、国内向けモデルのみがeSIMに対応する。AndroidプラットフォームのeSIM転送については、何も明示されていない。
Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz)、Bluetooth 5.4に対応する。衛星による位置情報測位は米GPS、露GLONASS、中国BDS(BeiDou)、欧州Galileo、日本QZSS(みちびき)に対応するが、いずれもシングルチャンネルのみになる。
非接触ICはグローバル版で標準のNFC(Type A/B)に加え、従来の「Nothing Phone (3a)」や「Nothing Phone (3)」に引き続き、FeliCaを搭載し、おサイフケータイの各サービスにも対応する。
モバイルSuicaの対応機種一覧は最新版が2025年12月1日付けのため、まだ掲載されていないが、従来の「Nothing Phone (3a)」などが対応機種に掲載されているので、問題なく利用できるだろう。マイナンバーカードのAndroidスマホ用電子証明書については、すでに対応機種一覧に掲載されている。
5000万画素イメージセンサーをメインにしたトリプルカメラを搭載
背面カメラはこの価格帯の商品としては異例とも言えるトリプルカメラを搭載する。メインは1/1.57インチ5000万画素イメージセンサー/F1.88の広角カメラ(24mm)で、電子手ぶれ補正に対応。超広角カメラ(15mm)は1/4インチ800万画素イメージセンサー/F2.2で、119.5度のワイド撮影に対応する。3つめは200万画素/F2.4のマクロカメラで、約4cmの接写が利用できる。
ディスプレイ上部のパンチホール内には、1/3インチ1600万画素イメージセンサー/F2.45のフロントカメラを内蔵する。背面カメラのレイアウトはユニークで、一般的な直列的な並びではなく、非対称的な斜め位置に3つのカメラを配する。こうしたレイアウトは「Nothing Phone (3)」に続くデザインであり、背面デザインのアクセントにもなっている。画像処理は独自の「TrueLens Engine 4」を搭載する。
撮影モードは「夜間」「ポートレート」「写真」「動画」が標準で用意され、「もっと」を選ぶと、「スローモーション」や「タイムラプス」、「マクロ」などの撮影モードを選べる。
撮影した写真は独自の[ギャラリー]アプリで確認でき、表示した写真を共有メニューから前述の「Essential Space」に登録することもできる。Googleフォトと連携する[フォト]アプリもインストールされており、撮影した写真や動画をバックアップすることも可能だ。
「Nothing Phone」シリーズのカメラで特徴的なのは、[プリセット]と呼ばれる機能で、フィルターやカメラの設定などをまとめたものになる。標準では「Original」「Soft Focus」「B&W Film」「Wide Angle」「Lenticular」が用意されており、ユーザー自身がプリセットを作成したり、他の設定をインポートすることもできる。
多くのAndroidスマートフォンでもマニュアル設定が可能で、カメラに詳しいユーザーであれば、細かく設定を調整して撮影できるが、[プリセット]は撮影モードや焦点距離、ポートレートの効果などがまとめられたもので、カメラの知識がなくても少し凝った写真を撮影することができる。しかもそれぞれの設定内容についても各「プリセット」のメニュー内で詳しく説明されている点も高く評価できる。
個性と機能で楽しめるデザインコンシャスな一台
デザインや機能が平均化してきたことで、今ひとつ面白みに欠けるという指摘も少なくない最近のスマートフォン。そんなモバイル市場において、他製品にはないデザインや機能で差別化を図っているのが「Nothing Phone」シリーズであり、そのエントリーモデルに位置付けられるのが今回紹介した「Nothing Phone (3a) Lite」だ。
これまでの「Nothing Phone」シリーズの各機種で表現されてきた外観やGlyphインターフェイスなどの個性に加え、「Essential Space」などの独自のAI機能も継承し、デザイン性に優れた製品に仕上げられており、エントリーモデルとは思えないほどのバリューを持つ。
価格もNothing公式サイトで約4万円、楽天モバイルでは約3万円に抑えられており、チップセットやメモリーなどの仕様に加え、おサイフケータイへの対応など、日本市場へのコミットを考え合わせると、かなりお得感の高い一台だ。
今のところ、実機を手にできる場所が限られているが、楽天モバイルが取り扱っているため、楽天モバイルショップの店頭で試すことが可能だ。ここ1~2年、本誌でもNothingの製品が数多く取り上げられ、興味を持ちながら、なかなか手を出せなかったというユーザーの「Nothingデビュー」にもおすすめしたいモデルと言えるだろう。






























