インタビュー

mineoの「マイピタ」最大3倍増量とパケット放題3Mbpsトライアルの戦略的意図を聞く――トラフィック増大と新規顧客獲得への最適解

 オプテージが提供するモバイルサービス「mineo(マイネオ)」は、データ容量プラン「マイピタ」の基本容量を大幅に増量するとともに、使い放題オプションを強化した。

 日々増加し続けるユーザーのデータ使用量に対応し、激化するモバイル市場での競争力を高めることを目的としている。

 mineoが目指す「ちょうどいい」の実現に向けた料金設計の思想などについてオプテージ モバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部長で、mineoをリードする松田守弘氏、そしてコンシューマモバイル戦略チームマネージャーの岩佐頼佳氏に聞いた。

左から松田守弘氏と岩佐頼佳氏

「マイピタ」容量増量と使い放題オプション無償提供の狙い

――今回の料金改定は、特に1GBコースが3GBになるなど、容量が最大3倍になるコースもあり、単純に考えると「めちゃめちゃ値下げ」に見えます。この大規模な改定は、競争環境の中でどのような戦略的な狙いがあるのでしょうか?

松田氏
 今回、月額料金はそのままに、例えば1GBを3GBに、10GBを15GBに、20GBを30GBに容量アップいたします。

 改定の理由は、やはり、お客さまが通信回線を選ばれる際、データ容量で比べられるんです。つまり比較時の主要な指標になっているわけです。

 そこで、競争優位性を確保し、特に新しくmineoを検討される方への訴求力を高める狙いがあります。

改定後の料金表

――料金はそのままで容量が3倍(例えば1GB→3GB)になるというのは、ギガ単価で見ると1/3になるということですよね。なぜ、この低容量帯で特に大きな増量率にしたのでしょうか。

松田氏
 はい、確かに「1GBから3GBが一番増量率が多い」です。

 容量を「1.5倍」で揃えない理由としては、お客さまの使い方を想定しつつ、コストとの兼ね合い、あとは市場へのインパクトみたいなところも含めて検討して、「ここならいけるかな」っていうところを狙いに行ったと。

――主に新しくmineoを検討される方をターゲットとしているとのことですが、既存ユーザーは、現在の容量で満足されているのでしょうか。

松田氏
 すでにmineoをお使いいただいている方には、確かに契約中の料金プランで満足されていることが多いかなと見ています。ただ、それでも増量ですから、さらに喜んでいただけるかなと。

 一方、新しくmineoを検討される方は、繰り返しになりますが、他事業者さんの容量と比べて高いのか安いのかと考える機会があります。そのとき候補にしっかり乗るよう、つまり競争力を高めるための増量というわけです。

松田氏

mineo独自の料金思想:「使い放題の世界観」と容量プランの役割

――具体的なパケット放題の強化内容として、「パケット放題 1Mbps」の新設と、「パケット放題 Plus」の1.5Mbpsから3Mbpsへの増速トライアルがあります。

岩佐氏
 新オプションとして、最大通信速度1Mbpsの「パケット放題 1Mbps」を12月10日から、3GBと7GBコースに無償提供いたします。

 また、15GB以上のコースに無償提供している「パケット放題 Plus」について、通常1.5Mbpsだった速度を3Mbpsに引き上げるトライアルを実施しています。

 増速は、2026年3月中旬に「パケット放題 3Mbps」に名称変更し、正式サービスとしてリリースされる予定です

 トライアル後のユーザーさんの声は非常に良好で、「本当に快適になった」「これで十分」という声がすごく多いです。

 快適だと評価してくださるユーザーの割合は、1.5Mbpsの時と比べると、「3倍ぐらいユーザーさんがいいです、いいですって言ってくれる人数が増えてます」。

 私自身も使って思いましたが、もう動画見るのも全然苦にならないぐらいかなっていう感じはします。これは、ユーザーにとって必要十分なだけの使い放題サービスを提供していきたいという思いの現れです。

松田氏
 mineoのパケット放題は、無条件での使い放題というわけではありません。ただ、使いたいときに高速になる、その一方で普段は安くできる。

 こうした使い方、ちょっと“変則的な使い放題”をもっと広めたいですし、今回はこの組み合わせがぴったりというお客さまもいらっしゃいます。

――なるほど。ユーザーが「その時々によってこう使い方を変えながら、目的に沿って変えて使っていただく」ということを意識している。

岩佐氏
 その通りです。その使い方として考えた時に、え、使い放題もあり、でも容量を使う場合もあり、というバランスを考えた時に、そのバランス感としてこのテーマであればいけるんじゃないかという風な考え方になっています。

岩佐氏

パスケットの特異性と法的側面:資金決済法と「貯める楽しみ」

――パケットを無期限に貯蔵できる「パスケット」について、今回キャンペーンが実施されます。「パスケット」月額利用料と同じ110円が、6カ月間、割り引かれると。

松田氏
 お客さまのなかに貯めること自体を楽しんでいただいている方もいて……お会いしたことがある方の中には、1TB貯めた、という人もいてびっくりしたこともあります。

――貯金する感覚に近い気もしますね。

松田氏

競争環境とユーザー体験の深化

――既存のMVNOだけでなく、サブブランドやオンライン専用ブランドが台頭する中、mineoが競争相手として強く意識しているのはどのような事業者ですか。

松田氏
 mineoを検討されるお客様は、容量と価格を比較されます。MVNO業界だけでなく、サブブランドやオンライン専用ブランドを強く意識しています。

岩佐氏
 アンケート結果で見ても、楽天モバイルさん、IIJさん、日本通信さんといったMVNOに加え、ahamoさんやpovoさんといったオンライン専用ブランドと比較検討されている方が多い傾向にあります。

岩佐氏

――今年は、大手キャリアの料金改定が相次ぎました。影響はありましたか?

松田氏
 いえ、影響はなかったですね……やはりお客さまの層が異なるのかなと。

松田氏

eSIM専用「iPhone 17」の登場

――iPhone 17シリーズはeSIM専用となりました。mineoでもeSIMの申込みは増えましたか?

松田氏
 増えました。もともとeSIMを促進したいと思っていましたが、本当に増えましたね。

 同時期に、eSIMの手数料を下げるキャンペーンを実施していましたが、これは別に狙っていたわけではないんです。

――その分、トラブルというか、ユーザーからの問い合わせは増えたのでしょうか?

松田氏
 お電話いただくことは確かに増えています。eSIMが初めてという方も多く、設定に関しての質問などが増えました。

 マニュアルや案内の説明を工夫したり、オンラインでの申し込み導線で手順を一つ減らすなどの改善を随時行っています。

松田氏

――iPhoneだけではなく、ほかのスマートフォンについても教えてください。

松田氏
 市場全体として、スマートフォンの価格全体が上昇傾向にありますよね。その結果、mineoでは、以前は多かった安価な端末と組み合わせて購入する件数自体は、縮小しています。

 しかし、回線はそのままに端末を買い替えるニーズは一定数あります。割安な端末から高性能な機種まで、幅広いラインアップをしっかり揃えていく方針です。

 現在ご利用中の方全体で見ると、5割弱がiPhoneを利用しており、そのニーズは非常に強いと感じています。

 mineoユーザーは国内メーカー(シャープなど)を選ばれる方が多い傾向がありますが、海外メーカー(シャオミなど)についても特徴のある端末を取り揃えており、高性能機種も想定より売れています。

将来技術への考え

――最新技術の動向についてmineoとしての見解を教えてください。たとえばAIはどうでしょうか?

松田氏
 AIについては、サポートサービスのAIチャットや運用面での活用を検討していますが、本格的な導入には至っていません。mineoのコミュニティサイトにおいて、変な投稿の監視といった局所的な利用ができないかといった検討は行っています。引き続き、いろいろと考えていきます。

――今年はスマホと衛星の直接通信にも注目が集まりました。

松田氏
 面白い取り組みだと思っていて、将来的に何かできないか、注視しています。

――では5G SA(スタンドアローン)はどうでしょう?

松田氏
 現時点で「これがないと」という具体的なユースケースはまだ見出せていないのですが、その一方でいずれは取り組まなければならないという感覚を持っていますね。

――先日、KDDIがMVNO向けにRCS(リッチコミュニケーションサービス)を解放すると発表しました。

松田氏
 お客さまからの要望も現時点では多くないため、様子を見ている段階です。

――なるほど、ありがとうございました。