石野純也の「スマホとお金」
mineoとIIJmioが中大容量の新料金プランを発表、違いや特徴をとことん解説
2025年2月13日 00:00
オプテージのmineo、IIJのIIJmioと、MVNOの“ツートップ”が相次いで新料金プランを発表しました。両社の改定内容の共通点になっていたのが、中大容量プラン。mineoは「マイピタ」の50GBコースを新設、IIJmioはギガプランの20GB以上をそれぞれ容量アップするとともに、一部プランでは料金を値下げすることになります。
2024年には、NTTドコモの「ahamo」が30GB化したのを皮切りに、KDDIのUQ mobileやpovo2.0がこれに追随。ソフトバンクもLINEMOの「LINEMOベストプランV」を再改定する形で、30GBの料金をahamoに合わせてきました。また、12月にはワイモバイルも「シンプル2 M」の30GB化を行い、中容量での競争が激化しています。では、MVNOの2台巨頭はどのような新プランで対抗するのでしょうか。その中身を見ていきます。
大手キャリアより大盛りなデータ容量、ターゲットは若年層か
料金プラン改定発表の先陣を切ったのは、mineoでした。同社の現行プランは容量別の「マイピタ」と、通信速度別の「マイそく」の2つに分かれています。バリエーションが増えたのは、前者のマイピタ。現行のマイピタは、1GB、5GB、10GB、20GBコースの4段階。3月13日からは、ここに50GBコースが追加されます。料金は、2948円です。
金額を見て、「はっはぁーん」と思った方もいそうですが、料金的にはahamoをはじめとする 大手キャリアの30GBプランに近い水準。ほぼほぼ同じ金額で、データ容量が20GB多い というのが特徴と言っていいでしょう。大手キャリアの中容量プランでデータ容量が足りないユーザーや、ahamo大盛りや無制限プランでデータ使用量が少ないユーザーがターゲットになっているとみられます。
オプテージの調査によると、中でも20代のユーザーは3人に1人が31GB以上の料金プランを選択しているといいます。21GBから30GBを足すと、その割合は50%を超えています。
また、同社のモバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部長 松田守弘氏によると、mineoユーザーのデータ使用量も年々増加しているとのこと。20GBでプランで足りなくなった人のアップセルを図るための料金プランと捉えることもできそうです。
ただ、1つ下の20GBコースから、料金が一気に770円上がってしまいます。10GBコースと20GBコースの差が220円しかなかったことを考えると、大きなステップアップのようにも見えます。一方で、おもしろいのは、 このコースのみ、オプションサービスが3つも無料 でついており、これをどう評価するかで料金プランの価値が変わってくるかもしれません。
筆者にとっては、データ容量の大きさそのものより、むしろ オプション無料の方がインパクトが大きかった ほどです。無料になるのは、「パケット放題Plus」(385円)、「パスケット」(110円)、「夜間フリー」(990円)の3つ。合計すると、1485円ぶんにもなります。これらを駆使していけば、50GBプランと言いつつ、実質的な無制限プランに近い形で利用することも可能になります。
パケット放題Plusや夜間フリーを使いこなせば実質無制限? それぞれの特徴は
1つ目のパケット放題Plusは、速度制限時の通信速度が1.5Mbpsに向上するサービス。決して速いわけではありませんが、軽めのWebサイト閲覧やSNS利用、音楽再生などには十分な速度のため、容量を使い切ってしまったあとでも快適に利用できます。
また、mineoの場合、自ら速度制限をかけ、容量の消費を防ぐことが可能。バックグラウンドで通信するようなシーンでは、1.5Mbpsに制限をかけておけば、データ容量を節約できます。なお、パケット放題Plusは10GBコースや20GBコースにも無料でついています。どちらかと言えば節約効果が高そうなのはデータ容量が少ないコース向けのように思えますが、もっとも高い50GBコースが有料なのは不親切。それもあって、同オプションの無料付帯を踏襲したように見えます。
2つ目のパスケットは、余ったデータ容量を無期限に繰り越せるサービス。こちらは月額料金が110円のオプションとして提供されていますが、50GBコースでは無料になります。
最後の夜間フリーは、その名のとおり、夜中のデータ通信がノーカウントになるオプション。MVNOとして帯域が余りがちな夜中を使い放題にすることで、トラフィックのバランスを取りつつユーザーに利便性を提供している形になります。
この夜間フリーがあるため、50GBコースで容量を消費するのは、朝の7時30分過ぎ~夜の22時29分までの間だけということになります。自宅にWi-Fiがなく、スマホのモバイル回線で夜中に動画を見るといったケースで活躍するサービスと言えるでしょう。
一人暮らしの場合、家に帰ったあと、テザリングで夜に大容量のデータをダウンロードするのにも役立ちそう 。50GBを残りの時間で消費すればいいため、ライフスタイルによってはほぼ無制限に近い感覚で使える50GBプランというわけです。
ただ、自分がどの時間帯にデータ通信しているのかは、意外と分かりづらいのが難点。月ごとの集計ができないiPhone(iOS)はもちろん、データ使用量のカウント機能が充実しているAndroidも、OS標準では時間帯ごとの使用量を見ることができません。サードパーティのアプリを入れるなどして、まずは自分がデータ通信をどの時間帯にどの程度使っているのかを把握するのが重要。mineo側からも、こうした点はもっとアピールしていく必要がありそうです。
IIJmioは容量アップと値下げの組み合わせ、個人ユーザーには35GBプランがお得か
mineoに対抗するかのように中・大容量プランのデータ容量増量や値下げを発表したのが、IIJmioです。同社の中・大容量プランは20GB以上が10GB刻みになっており、50GBまで用意されています。
この 20GB以上のデータ容量が、3月1日からそれぞれ5GBずつ、増量 されます。また、 新35GBプランに関しては、データ容量の増量だけでなく、音声、音声eSIMのカテゴリーで300円の値下げ も実施されます。
ただ、40GBプラン、50GBプランはそれぞれ45GB、55GBに容量がアップするものの、料金は3300円、3900円で据え置きのまま。どちらもmineoが新たに投入する50GBプランと比べると割高でデータ容量も少なくなっています。mineoの無料オプションまで加味すると、十分対抗できていないようにも見えます。これは、 IIJmioが中・大容量プランを“シェア前提”で設計 しているからです。
例えば、2回線で1人あたり30GB必要なときには、新55GBプランと値下げになる5GBプランを足せば、計60GB、4650円になり、 1人あたり30GB、2325円 まで下がります。
また、3人家族が1人約20GB必要なときには、だれか1人が新45GBプランを契約し、残りが5GB、10GBをそれぞれ契約すると、料金は60GBで5350円に。 1人あたりのデータ容量と金額は、20GB、1783円 まで下がります。
逆に、30GBプランは2400円の35GBプランになることで、ahamoをはじめとしたキャリアの中容量プランより570円安く、データ容量が5GB多いという形で特徴が際立ちました。
また、新25GBプランも2000円のまま据え置きになっているため、容量改定前のahamoなどで少し容量が足りなかったユーザーの受け皿になりえます。
mineoの20GBコースと比べても178円安く、データ容量は5GB多いため、対MVNOという観点でも容量アップで競争力が増すことになりそうです。
同じ中・大容量プランの容量アップや値下げに見えますが、 どちらかと言えば、IIJmioの45GBや55GBプランは、複数回線での安さ に重きを置いている印象。単身契約向けに強化されたのは、25GBプランや35GBプランと言えるでしょう。これに対し、mineoの50GBコースは単身でのデータ容量の多さや、コストパフォーマンスの高さを打ち出し、大手キャリアと直接対決しているような姿勢が見えます。
同じ50GB前後の料金プランでも、その目的や狙っているユーザーは異なっているというわけです。どちらの料金プランが支持されるかは未知数ですが、MVNOが中・大容量プランに注力し始めたことも事実。料金を抑えたいユーザーは、大手キャリアのサブブランドやオンライン専用ブランドではない、もう1つの選択肢として検討してみる価値はありそうです。