石野純也の「スマホとお金」

もはや「オンライン専用」ではない? ドコモが「ahamo」を強化するワケ

 オンライン専用の料金プランとしてスタートしたドコモのahamoですが、その役割を徐々に変えようとしていることがうかがえます。11月から開始している「ahamo乗り換え・新規契約フェア」が、それです。“フェア”とうたっているように、この取り組みはあくまでキャンペーン的な位置づけですが、終了日は未定。恒久化する可能性もあります。

 その前段として、ドコモは24年7月に「ahamo機種変更フェア」を開始しており、現在も続いています。

 元々、ahamoは手続きもオンラインでセルフ、機種変更はドコモオンラインショップを利用するかSIMフリー端末(オープンマーケットモデル)を自ら用意するという建てつけでしたが、それも徐々に変わってきていることがうかがえます。では、販路によって何が違うのでしょうか。その違いをひも解いていきます。

オンライン専用料金プランとしてスタートしたahamoだが、徐々に“オフライン”でできることの比重が高まっている

徐々に店頭手続きに対応したahamo

 オンライン専用料金プランをうたうahamoは、当初、本当にオンラインに特化した料金プランになっていました。ユーザーが契約できるのは、専用サイトから。端末も、専用サイトで契約時に申し込むか、自ら別の販路で購入してきたものを用意する必要がありました。

 通常の料金プランのように、店頭での手続きができず、ドコモショップに行った際にも端末単体購入をしなければならなかったほどです。

 ただ、オンラインだけというのはやはりハードルが高かったのか、徐々に店頭での手続きに対応していくようになりました。

 現在では、ドコモショップで「ahamo Webお申し込みサポート」が利用できるほか、11月からは、冒頭で挙げたahamo乗り換え・新規契約フェアでも新規にahamoを契約することが可能になっています。ここまでくると、通常の料金プランとあまり違いがなくなってきたと言えるかもしれません。

11月から、ahamo乗り換え・新規契約フェアを開催している。終了期間は未定。現在は一部のリアル店舗でも、料金プランの1つとして選択できるようになっている

 もっとも、それぞれの販路によって、かかるコストには違いもあります。まず、元々のコンセプトどおり、ahamoの専用サイトで契約した場合には、新規契約の事務手数料が一切かかりません。

 通常、ドコモの回線を店頭で契約すると4950円の事務手数料がかかるため、非常にリーズナブル。こうした点は、他キャリアのオンライン専用ブランドと同じです。

 一方、ahamo乗り換え・新規契約フェアでは、事務手数料が4950円かかります。これは、上記のように、「ドコモMAX」や「ドコモmini」などの通常の料金プランでドコモ回線を契約するのと同額。店頭でほかの料金プランと変わらない手続きをするなら、事務手数料も同じだけかかるという理屈です。

フェアで契約すると、契約の事務手数料として4950円がかかる。この金額は、通常の料金プランと同じだ

 ワンショットでかかる料金ではありますが、月額2970円のahamoに対し、4950円は少々割高感があるようにも思えます。

 ただ、店頭であれば、端末を一緒に購入してその場で持ち帰ることができたり、自らサイトでポチポチと情報を入力していったりする必要がなく、手軽になるのも事実。

 フラッとお店を訪れたユーザーをドコモに変えてもらう際にも、2970円という安価な料金は武器になるはず。ahamoを選びたいユーザーが、店頭で契約して、後から料金プラン変更する手間もかからなくなりました。

オンラインで契約すれば、料金はかからない。一方で、ahamoにしたいという強い目的があるユーザー以外に訴求しづらいのがドコモにとってのデメリットと言えそうだ

 ただし、ahamo乗り換え・新規契約フェアは対象となる店舗が限定されている点には注意が必要になります。具体的には、量販店、一般販売店、ドコモショップサテライト、商業施設やイベント会場で実施する出張販売に限られており、通常のドコモショップではこのフェアは実施していません。

量販店やイベントでそのままahamoを契約できることが武器に

 ドコモは、前田義晃氏が社長に就任した時から、量販店などでの店頭獲得を強化していましたが、ahamo乗り換え・新規契約フェアもその一環だとみられます。キャリアショップは基本的には、そのキャリアのユーザーが訪れる場所。他キャリアのユーザーがMNPのために、立ち寄ることは少ないと言われています。

 他キャリアのユーザーが行きかうような量販店やイベントで、そのままahamoを契約できることがドコモにとっての武器になるというわけです。

 確かに、ahamoの料金は他社のサブブランド並みか、それ以下。1回線から2970円で、セット割などの条件がないのは破格です。それを店頭で契約できるのは、横並びで比較したときの強みになることは間違いないでしょう。

24年11月の決算説明会で示されていた資料。量販店など、リアルな販路での販促を強化している。ahamoのフェアも、こうした施策の一環と見ていいだろう

 ただし、ドコモショップでahamoを契約しようとしても、門前払いになるわけではありません(当初は本当に門前払いでしたが……)。ahamoのメニューとして、ahamo Webお申し込みサポートがあるからです。こちらは、フェアとは違って、その名の通り、あくまでユーザーがオンラインで申し込むのを手助けするというものです。

 必要になる書類や操作方法などの手続きは教えてくれる一方で、操作するのはあくまでユーザー自身。本誌を愛読しているユーザーであれば、「だったら自分でやりますわ」と思うかもしれません(笑)。

 単にオンラインの操作をサポートするだけなので、物理SIMが必要な場合は郵送されてくるのを待つ必要もあります。目の前でSIMを焼けるのに……と思ってしまうかもしれません。

ドコモショップでの店頭サポートは、21年から提供されている。ただし、こちらは契約ではなく、あくまで契約のための操作をサポートするという位置づけになる。料金は3300円

 一方で、手数料はフェアの新規契約やMNPより安く抑えられており、3300円でサポートを受けることができます。これを安いと考えるのか、高いと考えるのかは人それぞれですが、ここまで払うのであれば、量販店に行って新規契約した方がいいと思う人もいるのではないでしょうか。

 比較的早い時期に始まったサポート施策なだけに、内容のアップデートが求められているような気がします。

24年から機種変もリアルに、オンライン専用とは言い切れないahamo

 では、契約後はどうすればいいのでしょうか。元々ahamoは、機種変更もオンラインでやるしかありませんでした。ドコモオンラインショップを使えば、機種変更時にかかる事務手数料も無料です。

 一方、当初はリアルなドコモショップや家電量販店での機種変更ができず、端末を単体購入する必要がありました。ドコモ端末を単体で買うか、メーカーがオープンマーケット版として販売している端末を入手する必要があったというわけです。

 これも、24年7月から現在まで続いているahamo機種変更フェアで、事情が変わってきています。こちらは、ドコモショップが対象。一部の量販店や一般販売店でも実施している場合があります。

 つまり、ドコモショップであれば通常の料金プランと同様、店頭手続きで機種変更ができるということ。あくまでフェア扱いではありますが、通常の料金プランと大きく変わらなくなってきていると言えるでしょう。

リアルな店舗で機種変更を行えるフェアも実施しており、現在も継続中だ。ただし、事務手数料が4950円かかる

 ただし、こちらも機種変更の手続きには4950円の事務手数料がかかります。手続きを店頭でするのであれば、他の料金プランと同じだけ手数料がかかるという理屈です。

 一方で、機種変更の場合、その場で端末が手に入って持ち帰ることができるというのは大きなメリットになります。オンラインで買って到着を待つ必要がないからです。

 特にスマホの調子が悪くなって、修理よりもそのまま機種変更したいというようなケースでは、このような買い方の方が気軽。実際に新しいスマホを店頭で触ってみて、その場で購入し、持ち帰れるのも店頭ならではです。

 一方で、ドコモショップの場合、端末価格がオンラインショップより高いこともあるなど、お得度まで含めると一長一短があります。なるべく安く機種代を抑えたいという人にはあまり向かない方法です。

ドコモオンラインショップなら、手数料不要で機種変更が可能

 このように、オンライン専用プランでスタートしたahamoですが、徐々にリアル店舗での接点を増やしており、今では他の料金プランとあまり変わらない形になってきました。

 他社のオンライン専用ブランドは、どちらかと言えばズバッとリアルな販路を捨てているため、ahamoとの大きな違いになっていると言えるかもしれません。

 背景には、ahamoが「ドコモのサブブランド的な料金」と認知されていることがありそうです。オンラインに特化した別体系の料金プランというより、UQ mobileやワイモバイルに対抗する料金プランになっているということです。

 実際、他社が対抗的にahamoにデータ容量や料金を合わせてきたことで、サブブランドのライバル色が強くなっているのも事実。他社は店頭対応ができるのに対し、ahamoができないのは条件的に不利になります。

ahamo発表時は、オンラインに特化し、シンプルだからこそ実現できた料金と言われていた。店舗契約を強化すると、ドコモにとっての儲けは少なくなりそうだ

 とは言え、30GBで2970円、かつ1回5分までの音声通話定額つきという低料金を実現できた理由の1つとして、オンラインに特化した割り切りがあったからと言われていました。コストを抑えた料金プランだったからこそ、実現できたというわけです。

 確かに店頭契約だと事務手数料はかかりますが、月額料金をここまで抑えたままで続けられるのかという疑問もわいてきます。ドコモがこのままの料金で踏ん張れるのかにも、注目しておきたいところです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya