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mineoはなぜ巨額投資で「フルMVNO」を目指すのか? 音声・SMSも自社管理するメリットとは

オプテージ取締役常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏とモバイル事業戦略部長の松田守弘氏

 MVNOサービス「mineo」を提供するオプテージは27日、音声に対応したフルMVNO事業への参入と、MVNOビジネスの支援事業「MVNO Operation Kit」の提供を発表した。フルMVNOへの参入は2027年度下期、支援事業は2026年度下期に展開する。

 さまざまな事業者やブランドから展開されている携帯電話サービス。オプテージが今回参入するという「フルMVNO」というのは、一体どのようなもので、同社やユーザーにどのようなメリットがあるのだろうか? また、近頃参入が続いている「MVNOの支援事業」に参入する狙いはどこにあるのだろうか? 27日に開催された発表会の内容を中心にお伝えする。

フルMVNOのメリット

 携帯電話サービスを利用する際、通信キャリア(MNO)または“格安SIM”とも言われる「MVNO」と契約するのが一般的だ。「MNO」は、自社で通信設備を保有し運営している事業者で、日本ではNTTドコモとKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが挙げられる。一方、オプテージなど「MVNO」はMNOが保有する通信網や設備を借り受け、通信サービスを提供している。

 この「MVNO」は「仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator)」と言われ、文字通りキャリアの設備を借り、その設備を経由してサービスを提供する。一般的には、インターネットに接続するための設備などは保有する一方、SIMの発行や管理、音声やSMSの交換機、加入者管理装置などはMNOのものを借りて提供する。このため、たとえば新規契約した際の電話番号は、利用する回線のキャリアが保有する電話番号が割り振られ、アンテナピクトにもそのキャリアの名称が表示される。

 オプテージが今回参入する「フルMVNO」では、同社が自ら保有する設備を増強する。同社では、SIMの提供機能や音声、SMS交換機、加入者管理装置などを自社保有し、基地局以外を自社管理にするという。

 これら「通信の中核機能」を自社で管理できるようになることで、SIMや電話番号を自社で管理でき、より柔軟なサービスを展開できるようになる。たとえば、同社の「mineo」では、データ通信で独自性の高いサービスを提供しているが、フルMVNOの取り組みにより音声やSMSでもより自由度の高いサービスが提供できるようになる。

 モバイル事業推進本部モバイル事業戦略部長の松田守弘氏は、フルMVNOへの参入により、「かけ放題メニュー」など通話サービスの柔軟な設計や提供するSIMの多様化、海外ローミングサービスの提供などサービス面でのメリットと、企業や自治体などとの共創が拡大できると説明する。

フルMVNOに参入する理由

オプテージ取締役常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏

 現状でもMVNOサービスを安定して提供できているのに、なぜフルMVNOに参入するのか? オプテージ取締役常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏によると、これまでも独自サービスで回線数を伸ばしてきたが、モバイル通信が調べ物などをする「ツール的役割」から、想いを自由に伝え叶える「パートナー的役割」に変化したことで、ユーザーそれぞれに合わせた“より最適なプラン”が求められるようになったと指摘。昨年12月に提供を開始した「パケット放題 1Mbps」などは“1つの答え”としたものの、現状のMVNOでは音声やデータ通信の設計自由度が低く、新サービスの開発に制約があると指摘する。

 また、法人向けサービスにおいても、近年はあらゆる事業領域でモバイル通信が組み込まれる社会基盤に発展し、よりビジネスを拡張させた企業が急増してきている。その一方で、現状のサービス基盤には限界があり、利用できるシーンが限られ、業務利用のボトルネックになっていると松本氏は話す。

 これらユーザーが期待するサービス、求められるユーザーニーズに応えるべく、ネットワーク基盤の強化として、音声通信を含むフルMVNOサービス基盤を構築するという。

 現状、フルMVNOを行っている事業者は、国内で数社あるものの、いずれもデータ通信のみのフルMVNOであり、同社がau回線で音声も含めたフルMVNOとなれば、国内初の事例になる。フルMVNOについては、2027年度下期にまずはau回線で音声通信を含むフルMVNO事業に参入。将来的には国内初の“マルチキャリア”での音声フルMVNO事業者を目指す。

 フルMVNOとするための投資額については「会社としてもかなり大きな金額になる」と説明。現状でもさまざまなコストが上昇してきており、かなりの負担になるとする一方、設備を自社で保有することで「接続料金そのものが下がる」と指摘。プラン料金が上がるのでは? という声には「コストはそのままにサービスの幅を広げていきたい」と答えた。

 音声を含めたフルMVNOにこだわる理由を松本氏は「音声があるからこそメインのスマホになる。音声やデータの枠組みを超えたサービスなども検討し、多くの機能を備えたフルMVNOを目指した」と話す。

 今回の発表からサービス開始まで約2年の期間が空く理由について松田氏は「KDDIに申し入れをしたばかりでこれから設備の構築が始まる段階。そこからネットワークの接続試験などを実施していく。音声の接続試験は非常に大きなものになるので、約2年間という期間は必要」とコメント。

 音声を含めたフルMVNOについては、同社の光通信サービス「eo光」で音声通話のノウハウはあるものの、移動体では技術的仕様を含めたさまざまな仕様の違いがあり、内容の精査や検討に時間がかかると指摘する。同業他社を含めてフルMVNOへの参入が“0社”という現状を「これらの困難をなかなか超えられないのではないか」と分析。逆に、オプテージがこれらの困難を乗り切り、フルMVNOに参入できた場合、競合他社にとっても「もう少し(参入への)ハードルが下がるのでは」とした。

モバイル事業戦略部長の松田守弘氏

 接続する回線の種類については「まずは4Gと5G NSAから」と回答。5G SAについては「将来的には絶対必要になる」とし、今後対応を目指すとした。また、現状キャリアによってプランが異なっている(D/A/Sプラン)が、最終的には回線が自動で切り替わる「ワンプラン」になっていくのではないかという。

 楽天モバイル回線を使ったサービスの展開について松田氏は「今の段階で言えることはないが、ユーザーニーズや楽天回線を活用できるサービスが今後出てきた場合は、検討していく」とコメントする。

MVNO Operation Kit

 発表会では、フルMVNOとあわせて共創型モバイルビジネス支援事業「MVNO Operation Kit」の提供が発表された。

 松田氏はMVNO事業者は増加傾向にあると指摘。2024年度末時点で1991社となり、2022年から2024年の2年間で259社増加している。松田氏は「モバイル事業に可能性を感じている企業は増えているものの、事業の実現にはシステムや運用、投資、専門知識など高いハードルがある」とし、これらのハードルを共に乗り越え“伴走”してサポートするのが「MVNO Operation Kit」だと話す。

 具体的には、MVNO事業を行ううえで必要な機能やバックオフィス機能を提供することで、新たにMVNO事業を始めようとしている企業(テナント)をサポートする。専門知識が必要な運用やシステムをオプテージが担うことで、初期投資を少なくできるほか、法的対応もスムーズに行えるため、参入障壁が低くなる。

 たとえば、自社ブランドを冠した通信サービスを展開する場合、テナント企業はブランドとサービス内容などとオプテージのアセットを組み合わせるだけでスムーズに展開できる。また、ユーザー数が限られるニッチな層に向けたサービスの展開でも、初期投資を少なくできるため、展開しやすくなる。

 あわせて、デバイスやサービスなどオプテージ以外の事業者(パートナー)が持つ商材を通信と組み合わせてサービス展開することも考えているという。たとえば、パートナー企業が持つデバイスやクラウド機能と、オプテージの通信アセットを組み合わせ、販売パートナーとなるテナント企業が「通信を含めた商品」としてサービスを展開できるようになる。

 「MVNO Operation Kit」では、豊富な通信メニューとさまざまな商材を用意しており、テナント企業のアセットと組み合わせることで、多種多様で自由な組み合わせが作れる。加えて、運用に必要なシステムをオプテージが担うことで、初期投資や運用コストを抑えながら短期間でサービスインできるという。たとえば、モバイル事業参入にあたり、サービス設計の自由度が高い「フルカスタマイズ型」のものを導入する場合、その初期投資は数千万円レベルの投資が必要になるという。「MVNO Operation Kit」では、資本が少ない企業でも初期投資を抑えて自由度の高いサービスを提供できるようになる。

 松本氏は、現状の137万回線とmineoの売上高である280億円の規模について、フルMVNOや「MVNO Operation Kit」を含めて、売上高を2倍に近いスケールに持っていきたいと目標を語った。