石野純也の「スマホとお金」
「irumo」と「ドコモmini」はどちらがお得? 上がる料金と増えた割引
2025年5月1日 00:00
NTTドコモが、6月5日に新料金プラン「ドコモMAX」「ドコモmini」を導入します。名称通り、前者はデータ容量無制限まである上位プラン。逆にドコモminiは、低容量で価格を抑えた料金プランになります。既存のユーザーには、前者がeximo後継、後者がirumo後継と言えば分かりやすいでしょう。新料金の導入に伴い、eximoとirumoは新規受付を6月4日に終了します。
「DAZN for docomo」が無料になったり、国際ローミングが30GBに無料になったりと、特典が分かりやすいドコモMAXに対し、ドコモminiはデータ容量と割引の重みづけが大きな違い。現行の料金プランであるirumoとの比較もしやすくなっています。6月4日まではirumoも申し込めるため、今、ドコモ回線を契約したい/している人は、どちらがいいのかを比較したうえで契約できます。そこで、今回はirumoとドコモminiのお得度を検証してみました。
0.5GBと6GBの選択肢がなくなり、二択の料金体系に
データ容量が0.5GB、3GB、6GB、9GBと4段階に分かれていたirumo。0.5GBはやや特殊な位置づけで、ドコモが吸収したOCN モバイル ONEからの移行先としてや、停波が迫る3Gケータイからの移行先として用意されていました。サイトやアプリなどでも0.5GBは別枠で紹介されています。これを除くと、3GB、6GB、9GBと3本立て。マーケティングの王道とも言える松竹梅の選択肢で、他社のサブブランドにも近い料金体系になっています。
これに対し、ドコモminiはデータ容量の選択肢をバッサリと整理して、4GBと10GBの二択になりました。irumoの3GBと同程度の使い方をする人を狙っているのが4GB、同じく9GBに近いターゲットなのが10GB。それぞれ、irumo比では1GBずつ、データ容量が増えています。ドコモの代表取締役副社長、齋藤武氏は「お客様のデータ利用状況を見ると右肩上がりで増えている」と述べていましたが、ドコモminiのデータ容量はそれにこたえた格好です。
逆に、データ容量では6GBがなくなっているため、このぐらいの容量が適切だった人にとって、ドコモminiは選びづらくなっていると言えます。また、500円で0.5GBの特別な容量設定もなくなってしまいました。0.5GBプランは、他のデータ容量と異なり、割引などを一切つける必要なく、月額料金が550円になります。通信速度は3Mbpsに制限され、かつ5Gも利用できませんが、音声通話中心であれば料金を安価に抑えることができます。
880円の「5分通話無料オプション」をつけても1430円、1980円の「かけ放題オプション」をつけても2530円で、ある意味フィーチャーフォン型の端末とは相性のいい料金プラン。データ容量こそ少ない料金プランですが、そのシンプルさはahamoに近いものがあります。あまりにも安いため、MNPの“弾”にされてしまうといった課題はあったようですが、この容量がなくなってしまうのは、少々残念です。
OCN モバイル ONEやケータイからの移行先に限定する形でもいいので、残してほしかったと感じています。携帯電話の料金には制約もありますが、マイグレーション(移行)専用の料金プランを設定することは認められているからです。6月4日までは契約も可能なため、こうした使い方をするユーザーは、今のうちにirumoの0.5GBを契約しておくようにしましょう。
上がる料金、増えた割引――irumoより割高な料金設定
では、irumoの3GBを選ぶような人はそのままドコモminiの4GBを選べばいいかというと、必ずしもそうではありません。これは、irumoの9GBとドコモのminiの10GBにも当てはまります。1GB、データ容量が増えているぶん、“素の料金”も上がってしまっているからです。ahamoのように、料金据え置きでデータ容量が増えているわけではない点には、注意が必要です。
irumoの3GBは、各種割引適用前の状態で2167円。9GBは3377円です。これに対し、ドコモminiの4GBは2750円、10GBは3850円です。4GBは583円、10GBは473円の値上げになっています。1GBの単価としては、べらぼうに高いわけではないものの、単純にデータ容量だけが増量されているわけではなく、同時に値上げも実施されています。
割引適用前で使っている人で、データ使用量がirumoの容量に収まっている人は、あえてドコモminiを選ぶ理由はないと言えます。irumoは、6月4日以降もすでに契約していれば利用は可能。そのため、既存のユーザーは無理に料金プランを変更する必要はありません。これから使おうと思っている人は、6月4日までに駆け込み契約することをお勧めします。
ただし、この値上げを相殺するための割引も増えているため、“条件さえ整えば”ドコモminiも安く使うことはできます。irumoの3GB以上は、「dカードお支払割」「ドコモ光/home 5G セット割」の2つが適用されていましたが、ドコモminiではこの2つに加えて「ドコモでんきセット割」が新設されています。電気は、どの家庭でも基本的に加入しているため、これをドコモでんきに移すだけでOK。燃料費等調整額の上限がないため、高くついてしまうリスクはあるものの割引としては適用されやすいと言えそうです。
新たにドコモでんきに加入すれば、先に挙げた金額差は4GBが473円、10GBは363円になり、その差は縮まります。また、既存の割引もドコモminiでは増額されています。ドコモ光/home 5G セット割はその1つ。irumoのときは1100円の割引でしたが、ドコモminiでは1210円と割引額が110円増えています。ここまで加味すると、4GBの差額は363円、10GBは253円になります。とは言え、依然としてドコモminiの方が料金は高いまま。安さ重視であれば、irumoを選んだ方がよさそうです。
クレカの有無が料金を左右、他社より複雑度アップか
この状況が逆転するのが、dカードお支払割を適用した場合。ドコモminiでは、「dカードPLATINUM」や「dカードGOLD」「dカードGOLD U」で料金を支払ったときの割引が550円に設定されています。irumoのdカードお支払割は187円だったので、大きな割引の増額と言えるでしょう。ノーマルの「dカード」だと割引額は220円に縮小しますが、それでもirumoより多め。しかも、サービス開始時は終了日未定のキャンペーンとして、dカードPLATINUMやGOLDと同額の550円が割り引かれます。
ここまで挙げてきた3つの割引をすべて適用すると、ドコモminiの4GBは880円で、irumoの3GBと金額が横並びになります。また、10GBに関しては1980円になり、irumoの9GBで各種割引を適用した際の2090円よりも価格が下がります。dカード(現時点ではノーマルカードでOK)、ドコモ光かhome 5G、さらにドコモでんきを用意できるのであれば、無理にirumoにとどまる必要はないと言えるでしょう。
とは言え、dカードGOLD以上は年会費もかかりますし、ドコモでんきもさまざまな事情で契約できないこともあるでしょう。その意味では、irumoより最低利用料が適用される際の条件が厳しくなったと言えます。特に割引全体の中でクレジットカードの比率が高い点が、気になりました。キャンペーン中はまだいいのですが、あえてクレジットカード、それも年会費のかかるGOLD以上を作ってまでこの料金で使いたいかというと、そこには疑問符もつきます。
同様のクレジットカード割引は、ドコモだけでなく、au/UQ mobileやソフトバンク/ワイモバイルにも導入されていますが、いずれも別のクレジットカードの決済にかかる手数料程度の料金を自社ブランドのカードで割り引く仕組みでした。対するドコモminiのdカードお支払割は、その枠組みを超え、光回線や家族契約に近い割引になっていることがうかがえます。
実際、低容量を主力にしたサブブランドには、ここまで割引条件を多くしたところはありません。UQ mobileは固定回線「もしくは」電気サービスとクレジットカードで4GB、1078円になりますし、クレジットカードの割引も187円だけ。同様にワイモバイルも、固定回線「もしくは」2回線目以降の家族用回線とクレジットカードで4GB、1078円になります。こちらも、クレジットカードの割引は187円です。
このように比較すると、ドコモminiは割引適用後の料金こそ安いものの、その導入ハードルが高めと言えるかもしれません。サブブランドの低容量は、競争が激しいだけに、ドコモminiでどこまで戦えるのかは未知数です。少なくとも、irumoの方がデータ容量は少なかったものの、提示されていた最低料金になる人は多く、他社から乗り換えやすい料金プランでした。この点がMNPなどにどう影響するのかも、注目しておきたいポイントと言えるでしょう。